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 二ヶ月前。
「店長、この日休みもらいたいんですけど」
 俺は、カレンダーの六月第二日曜日を指差しながら、頼んだ。
「あれ、お前も? 参ったな、この前 外山 とやま ちゃんからもその日休ませてくれって ……一緒に出かけんのか?」
あんず も? いや、俺は、姉貴の結婚式で」
「そうか、姉さんの。それじゃ、仕方ないな」
「大丈夫っすか?」
 心配顔で尋ねると、店長は快く休みを承諾してくれた。店長はまだ若い。三十二、三らしい。 オープン当初からバイトしている俺とは、結構ウマが合っている。
 俺の彼女、外山 杏とやま あんずが、ここへバイトに入るようになったのは、つい五日前。 杏が高校生になってから。付き合いが始まったきっかけは、杏からのデートの誘いを俺がなんなくOKしたから。 そのデートを昨日、無事に済ませてきた。
 レジに買い物かごが置かれる。
「いらっしゃいませ」
 慣れた手つきで商品を扱う。 一人が終わると続いてもう一人。近所の高校生らしい。何度か、見かけたことがある。 おつりを渡すと、いつものように「ありがとうございました」と声をかける。二人に続く客はいない。
「あの〜〜」
 その二人組は、ひじでお互いをつつきながら、声をかけてきた。
「はい?」
「えっと……付き合っている人とか、いるんですか?」
 二人はしきりに照れている。俺はちょっと考え込んでから、ゆっくり答えた。
「あぁ、まぁ」
 曖昧に答えてしまった。まだ、浅いからな。
「あ、そ、そうですよね。いないほうがおかしいですよね」
 いや、そうでもないけど。この前まで完璧にフリーだったし。曖昧な笑みを浮かべる俺。
「ご、ごめんなさい。でもまた来ます」
 二人は交代に早口で喋りながら、後ずさりをすると、くるっと足並みをそろえて、バタバタと店から出て行った。
 日曜の午後二時を少し回ったところ。杏の姿はない。今日は友達と買い物に行くんだって言っていた。 バイト始めたばっかで、連休取っちゃうのも、かわいいから許される? その考えちょっと甘いよな。

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