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 ”ずっと一緒にいたいとかさ、失いたくないとかさ、本気で考える?  単に好きとかじゃなくて、どうしようもないくらいに惚れてる?”
 抜けない小さな刺は、少しずつ増大していくみたい。元気になんてなれそうもない。
 大体、付き合うってどういうこと? 第一、俺の生活が杏中心に回ってるなんてことは、ありえない。 友達や勉強、バイトしてでも手に入れたい単車のこと。それから、夢。 ひょっとしたら杏のことは、一番後回しかも知れない。
 惰性で付き合ってる俺たちに、未来なんかあるのか? 例えば、杏は俺をどれくらい好きなんだろ?
 ……自分の気持ち棚に上げて、求めるのもなんだなぁ。




 熱気が体に絡みつく。額に汗がにじむ。夏休みもバイトに明け暮れる毎日。 外の暑さもここにくれば、救われる。
 すっかり外山家の人になった姉貴が、時々顔を出す。 杏との付き合いがバレた時には、ちょっと迷惑かけたみたいだ。 それがあるから、顔をあわせると常に「杏ちゃんとはうまくいってるの?」と聞かれる。 テキトーに答えようものなら、後頭部に愛の(?)平手打ちが飛んでくる。
 でも、ずっと会ってない。自然消滅期待してたりしたら、姉貴に叱られるかな?  こんなこと考えてる俺は子どもみたいだ。
 ドキッ! 冷房の効いた店内で、俺の体温少しだけ上がった。ヘンなの。ただ、美咲が来ただけじゃん。
「あれ? 外山ちゃん、珍しいねこの時間」
 店長の声に我に返る。杏も一緒だった。これってちょっと、おかしいよな。それに今の店長の言葉も。 そういや、田舎にあるこのコンビニは、杏にとって一番便利な店のはずなのに、 俺がいるときには、来ないよな?  ひょっとして避けてた?  夏休み入って、一週間。バイト休んでないしな。でも電話はかかってくる。 沈黙が増えたような気はするけど。
「友君、バイト終わったら、カラオケ連れてってよ」
「え?」
 杏のわがまま久しぶり。
「私だけじゃなくて美咲ちゃんも一緒に」
「え? いいよ。久しぶりだって言ってたし、ふたりで行ってきなよ」
 美咲が、慌てて杏の腕をつかむ。
「いや、いいよ。みさ……倉田も一緒に」
 美咲を苗字で呼ぶことにまだ慣れない俺は、杏の手前、嫌な汗をかいてしまった。
「なんなら、美咲ちゃんの彼氏も一緒に」
「あぁ、そりゃムリ。孝史はカラオケ超苦手分野だから」
 俺が先に答えてしまう。 美咲のためなら来ないでもないかと思ったものの、次の言葉は、俺の口の外へ出ることなく消えていった。
 二人は、俺がバイト終わるまでテキトーに時間をつぶすといって、おやつを買って出ていった。 美咲がここに来たのは初めてだ。家も遠いし、学校からも離れてるし、機会がなかったんだろう。
 今日は杏の家にでも遊びに来ているのか? そんなにしょっちゅう会ってる従姉妹っていう印象は、なかったけど。

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