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ボクらの恋愛事情:第二章
〜信じるということ〜
 朝、いつものように学校に行くと、なにやらニヤニヤした友人達が、ボクの周りを取り囲んだ。なに?
「お子ちゃまだと思ってたのに、うまくヤッてんじゃん」
「年上好みだったとはな。いつも関心ない振りしてさ〜このぉ〜」
 顔面蒼白とは、このときのボクを言うんじゃないだろうか? 友人達が、口々に織りなす言葉の数々を、ボクは蒼ざめた顔で聞いていたに違いない。
「黙ってることないのに。俺ら友達だろ?」
 ボクの肩に手を回して、ポンポンと叩いてくる。やめてくれ。友達って何だ。ただ、一緒にいて、わいわい騒いで、誰かの噂話や悪口を次々並べ立てる。 そんな関係が友達だって?
 詰め寄る友人達の中に、圭の姿はない。けれど、由香ちゃんの存在を知ってるのは圭だけ。ボクは、自分の愚かさを呪った。
 あっさり人を信じるって事は、裏切られたときのことも想定しておかなくちゃならないってこと。 念を押しておけば、喋らなかったのだろうか? それとも喋って、こいつらにもまた念を押す。知ってて、ボクには何も言わずに、陰で笑う。 そんなシーンが、頭の中でぐるぐる回っていた。
 だからボクは、肩に回った手を払いのけると、圭の姿を探した。 教室を出たすぐの廊下で、圭を見つけたボクは、何も言わずに圭の胸に掴みかかっていた。
「ヨク!」
 そんなボクを、止めに入って来たのは、意外な人物。
「離せよっ」
 ボクは頭に血が上っていた。圭に掴みかかったボクの腕を、しっかり握って離さない慎を、見据える。圭は、呆気にとられた顔で、ボクを黙って見ていた。
「なんかあったのか?」
 圭が、何もなかったようにそう言うから、ボクはますます頭に血が上る。押さえ込まれた腕を動かそうとしたら、慎が眼鏡の奥の冷静な瞳で睨んでいた。
「お前、バカか? この状況でまだ気付かないのか?」
 教室の中では、さっきの友人達が、ひそひそと話をしているのが見えた。廊下の生徒はボクが見回すと、視線を合わせないように教室に入った。
「牧田が喋ったんじゃなくて、他の誰かに、見られてたってことだろ?」
 慎の言葉が、頭に直接響いていた。ボクは、大事なものをひとつ……まだ失わずにいられるのだろうか?
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