この決断のきっかけのひとつにも、歳をとったというのがあります。重い教材の荷物を携えて名古屋~豊橋間を

往復するのに相当の疲れを感じるようになったのです。10年一昔と言いますが、若いうちはそうでもなかったこ

とが、とてもこたえます。「ああ、これが歳をとるということなのだなあ」と実感しました。

 でも、歳をとるということは困ったことばかりではありませんで、勿論いいこともあるんです。これはあくまで

も我が家の場合なのですが、定年退職した夫が家事をいろいろ分担してくれるようになりました。それで私の自由

時間が充実するようになったのです。

 夫は単身赴任の多い生活だったので、今までできなかった分をしてくれているのかな、と初めは思っていたので

す。でも、彼はマネージャーという肩書きをつけ、仕事と称してせっせと家事を行います。

 「俺は男だけどかなりの割合で女性の性格を持っている。家事は楽しい」なんて言いながら・・・

 それで豊かになった時間をスケッチに当てるようになった結果、自分で言うのも何ですが、少しだけ腕が上達し

たかもしれません。

 これは教室で生徒さんにいつも言っていることで、「 絵の上達を目指すなら、スケッチを怠らないように 」と

いうことなのですが、これは歳を取る取らないに限らず、あてはまるようです。

 後何年こんなふうにして生活を共にすることができるでしょうか。 ♪いと静けき港に着き 我は今安らう♪ 

そんな賛美歌がありましたけれど、今はそんな境地です。無理をせず、描きたい絵を描き続けていけたらいいです

ね。これからもずっと。名古屋教室は終了しましたが、豊橋教室はこれからも続きますので宜しくお願い致します。

 このコーナーは、私マネジャーの独り言を紹介していますが、今回はアトリエ作者が珍しく寄稿してきたので、

その意をくんでその文章を掲載致します。


              


 古希を迎えました。それに伴って幾つかの生活転換を試みています。先ず髪を染めるのを止めました。40代の

頃から月に一度くらいの割合でカラーリングのために美容院に行っていたのですが、カットだけにしました。

 初めはお洒落心で始めたカラーリングでしたが、白髪が増えるにつれて染める間隔がどんどん縮まり、回数が増

えていって、それがいつの間にかストレスになっていたのです。

 それで、歳をとれば当たり前のことなんだから、となるがままの自分と向き合うことにしました。いっそのこと

古希をグレイヘアーで迎えましょう、と思いつき2年ほど前から準備を始めました。結果、予定通り目的を達成す

ることができたのでした。

 もうひとつ70代を迎えるにあたって決断したことがあります。それは13年間務めた名古屋のNHK文化セン

ター水彩画講師の卒業です。こちらは9月いっぱいで辞めました。最後まで熱心に水彩画と取り組んでくれた生徒

さん達とお別れするのは、想像以上に辛いものがありました。でも、これからもお互いに努力を続ける限り、また

何らかの形で関わり合えるという思いが、悲しみを和らげてくれました。

そ よ 風 に 乗 っ て   (マネージャーの独り言)
                                     
    吉沢 武久

第 17 回   古 希 を 迎 え て   (2019年 10月 1日)