始 ま り の 野 バ ラ (2000年5月作)

   私は茨城県のほぼ中央に位置する石岡市で生まれました。戦時中に疎開した父は地方公務員でしたが、実家の周りは皆

 農家で豊かな里山の田園地帯で育ち、高校卒業まで過ごしました。必然的に遊び相手は自然界。虫捕り、山菜採り、釣り

 川遊び等暗くなるまで家には帰りませんでした。兄弟は姉が二人で時々ママゴトにつき合わされて、野の花を摘むことも

 ありました。でもそこは男の子、花には全く興味がありませんでした。それでも幼い頃に触れ合ったそうした野の花は、

 心の片隅に残っていたのでしょう。次の一文は、還暦を迎えて新聞投稿したものの採用されなかったものです。

                  「 花に笑われながら 」

  還暦を迎えた大の男が「趣味は生け花です」などと口にすることに少しのためらいがあり、家族以外には公表して

  いない。生まれ育った故郷は、緑豊かな関東平野の片田舎。野の花や虫たちに囲まれて多感な子供時代を過ごした。

  都会に出て就職し結婚、仕事に追われる余裕のない日々の中で、花を生けてみようと思い立ったきっかけは、少年

  時代に触れ合った野の花からの誘いだったのかも知れない。師につくことなく自己流で自由に生けている。山百合

  あざみ、曼珠沙華、ススキ・・野に咲く姿が一番美しく綺麗であり、凛とした品格がある。それに勝るように生け

  ることはとうていできないが、器の中にその優美さを再現すべく花と対峙する。心身を集中して生けた後の疲労感

  は、むしろ心地良い。素晴らしい!と自分でも感じる作品になることは滅多にないが、それなりに満足している。

  妻や娘は批評の言葉を発することもなく、ただ微笑を浮かべるだけ。一番笑っているのは、不本意に生けられた花

  たちかも知れない。笑われながらも、花から合格点をもらえる日が来ることを楽しみにしている。

そ よ 風 に 乗 っ て   (マネージャーの独り言)
                                          
吉沢 武久

第 12 回   野 の 花 の 可 憐 さ  (2019年 5月 1日)
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  一時、真剣に華道を勉強しようとした時期がありましたが、今は休止しています。でも、花への思いは変わりません。

 そしてそよ風のアトリエに関与するようになってからは、昔は気にもとめていなかった野の花の可憐さに気づかされま

 した。アトリエ作者が描いた野バラを見たのが、その始まりでした。子供の頃にはすぐそばにあっても、何とも思わな

 かった野の花たち。例えば、ドクダミ、カラスノエンドウ、アザミ、ツユクサ、野ブドウ・・・それらをモデルにして

 描く作者。出来上がった作品からその素朴な花姿に驚かされます。

  今年も野バラが咲く季節となりました。次回にその作品が紹介できるかは不明ですが・・・