そ よ 風 に 乗 っ て (マネージャーの独り言)
吉沢 武久
さて、作者とのすれ違いの話はここまでで、コスモスの話に戻るとする。私は理系、数学大好きな人間だが、文章
を書くのも嫌いではない。近頃はやめてしまっているが、新聞や雑誌に投稿をしていた。10回に1回ぐらいは採用
されていた。当然没になる方が多いのであるが、このコーナーを任されたので、過去不採用になった文章を時々紹介
していこうかと思っている。コスモスのことに関した文章もあるので、以下に記すことにする。
「 真冬の秋桜 」
昨年9月に60歳の定年退職を迎えました。在職中は子育てを含め、家事全般を妻に任せきりで
家のことにはほとんど手を出しませんでした。しかし、退職後はできる範囲で積極的に参加しよう
と心掛けています。その一つにベランダで同居する30種類余りの花たちへの水やりがあります。
夫婦共に花が好きで、休日には近くの花屋さんで季節の花を買い求め、楽しんでいます。定年を
前にして昨秋購入したのは、背丈が50センチ程の秋桜の鉢植えで、赤、白、ピンクの3色が植え
られていました。猛暑が和らぎ、秋風の中で爽やかな花をいくつも咲かせてくれました。さすがに
冬に入ると、その生命にも終わりが近づき、処分しようとした時、茶色く枯れた葉の中に、小さな
莟が3、4個あることに気がつきました。
もう充分に役目を終えた花なのに、懸命にまだ咲こうとしているそのけなげさが伝わってきて、
愛おしさが増しました。「 寒さに負けるな、枯れるなよ 」と語りかけつつ水やりを続けました。
そうして年が改まり、この地方では珍しい雪が舞う真冬の日でした。小さなピンクの花が3個
開いたのです。「 よく頑張ったね。えらいよ」我が子のように思えた秋桜、寒空の下、嬉しそう
な表情を見せたのでした。(2011年1月 朝日新聞 男のひといき への投稿原稿)
10月1日に作者義姉が急逝した。笑顔が素敵で、この季節に咲くコスモスをイメージさせる人だった。作者の
ショックと落胆は、そばにいて痛いほど感じた。救われたのは、部屋中に大好きなコスモスが、あふれていたこと
だった。そのコスモスを一心不乱に描いていた。よって今月は、悲しみの中で描かれたコスモス特集号となった。
同時に花をこよなく愛していた義姉の元に届けとばかり、コスモスで飾ることにした。
私の独り言もコスモスに関することを記することにする。その前にアトリエ編集長としての苦労話を一つ。作者
が描き完成した作品を写真に撮るわけだが、ここで問題があることが多い。作品の上下左右がはっきりしないので
ある。今回横長の作品をはじめに載せてあるが、どう見ても縦長の作品にしか見えない。逆に11月の部屋6番目
の作品「 復 活 」は横長の作品であろう。ところが、作者が言うには、実物を見て描いているので、これが正解
だというのである。確かに農園のコスモスは、2度も来た台風で倒れてしまったが、生命力の強い奴は、横倒しに
なってもそこからまた復活して上を向いて花をつけるのである。はいそうですね、分かりましたおっしゃる通りの
方向で編集致します、となるのである。次の2枚だって、私には納得いかない方向である。(横向きの絵と思う)