アトリエ作者が白髪を染めるのをやめる、と宣言してほぼ1年が過ぎた。何歳の頃から染めていたのか、定かでは
ないが、少なくとも20年ぐらいは続いていただろう。月に1度は美容院に行っていたのは知っていたが、その目的
の一つに白髪染めがあったとは知らなかった。染めるのをやめる理由は、幾つかあるらしい。その一つは、来年古希
を迎えるので、もう白髪を隠さなくてもいいのでは、という思いに至ったとのこと。そろそろ年相応の髪になろうと
決めたようだ。作者の日頃の口癖は「可愛いおばーちゃんになる」である。すでに3人の孫を持つ身で、十分におば
ーちゃんではある。(可愛いかどうかは別として)
白髪染めをやめてからは、外出時は必ず帽子を被り、まだらの髪を隠していた。1年ほど経った現在は、その帽子
も必要なく、男性で言えば見事なロマンスグレイである。男性にはこのロマンスグレイというしゃれた言葉があるが
女性にはないのかと思っていた。作者との会話でも「男性はロマンスグレイと言うけど、女性は何て言うの?」
「さあー知らないわ」などと話していた。ところが9月14日付けの朝日新聞にフリーアナウンサーの近藤サトさん
が、同様に白髪染めをやめたことの心境を語る記事が掲載された。
その記事を読んだ作者は、我が意を得たりとばかり「私の思っていることを全て言ってくれている」と自分の選択
に間違いはなかった、と納得したようだ。更に9月20日付けの天声人語でも染めるのをやめて、白髪を受け入れる
動きが広がっているということを取り上げた。その中でロマンスグレイに対して、女性のそれをグレイヘアと呼ぶの
を初めて知った。世の中の動きに遅れていたようで、グレイヘアのことは大分前から話題になり、書籍も数多く出版
されているとのこと。多くの女性の間では、ちょっとしたブームにもなっているらしい。
さて作者自身、グレイヘアに変身したことに対して、少しは気になっているようだ。月に4度、水彩画教室で生徒
さんの前に立つわけだが、その反応もいろいろで、全ての人が良し、と思っていないことも感じている。久しぶりに
会う知り合いの方達でも、驚かれてしまう人もいれば、「素敵!」と言ってくれる人もいるらしい。
会社の寮生活をしていて滅多に帰ってこない32才の長男からは「俺は黒髪の方がいいな」と言われたとのこと。
行きつけの美容院の美容師さんからは、「ご主人は何と言ってるの」と聞かれたとか、「あなたはどう思ってるの」
とか言われる。ロマンスグレイにはまだまだほど遠く、昭和生まれのシャイな男に野暮な質問はするな。そんなこと
面と向かって正直に答えられるわけ、ないだろう。
そ よ 風 に 乗 っ て (マネージャーの独り言)
吉沢 武久
グレイヘアの作者 アトリエにて9月撮影