そ よ 風 に 乗 っ て   (マネージャーの独り言)
                                        
吉沢 武久

第 2 回   ス ポ ッ ト ・ ア サ  (2018年7月1日)

  「そよ風のアトリエ」を作成するに当たって参考としたものがスポット・アサである。朝日新聞読者に向けて毎月

 1回発行される数ページの情報誌である。このスポット・アサのトップページでアトリエ作者は絵とエッセイを2年

 程、担当していた。「そよ風のアトリエ」が始まる7年前、1995年4月から連載が始まっている。原画はカラー

 であるが、誌面には白黒で印刷されていたため、その絵の表現力は半減というところか。上の絵は1996年6月号

 のものであるが、エッセイを読むとその2年前に描いたとある。よって今から24年も前の作品である。

   【 この絵は、2年前の梅雨の季節に描いたものです。きっかけは、その頃20才だった長女がとても

     眩しく感じられるようになって、近い将来この子はウエディングドレスをまとって私たちのもとを

     離れるだろうと予測していたからです。慶びの日が来たら幸せを託してこの絵を贈ることにしよう、

     そんなことを考えていました。

     予想は半分あたり、半分はずれました。娘は長いこと抱いていた夢を実現させるために巣立ったか

     らです。昨年の今頃、スチュワーデスの試験を受けるために上京したいと相談されたときは戸惑い

     ました。ご存じ、世の中は就職の超氷河期時代。なにもこんな時にわざわざ狭き門に挑まなくても、

     と口まで出かかった言葉を呑み込みました。「若いうちは、いろいろなことにチャレンジしなくっ

     ちゃ!」と励ましました。だって私を見つめる瞳からは、何か新しいことを始めようとする者だけ

     が持つ高揚がひしひしと伝わってきて、そう言わずにはいられなくなってしまったのです。

     ありがたいことに受験した航空会社は娘を必要としてくれました。こうして22年の歳月を共にし

     た愛娘は親元を離れ、1枚の絵が残されました。梅雨が明けて夏空に虹が架かる頃、憧れの制服に

     身を包んで彼女は初フライトに飛び立ちます。 】

   スポット・アサを読んで作者の水彩画教室に見えた方もいらっしゃる。このことでホームページにも絵とエッセイ

 を掲載するのが「そよ風のアトリエ」の基本スタンスとなったのである。理系の私より文学的素養がある作者に絵

 と共にエッセイも担当してもらうのがベストと思うが、詩や散文を一時趣味にしていた者として、その発表の場を

 与えてもらえたことに感謝しよう。

  絵の持つ力は大きい。そしてまた文章も然りである。エッセイのコーナーを任された以上、今までのように作者

 に絵の完成を急ぐよう求めるだけでなく、自分もまた緊張感が必要となった。編集長もつらいよ、である。

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