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研修帰りの電車、混み混み


行き交う人の群れを、肩を切りながら小走りにヒールを鳴らす。

木の葉の色の変わり目を感じる時間もなく、人工的に立ち並んだ

ビルディングに囲まれる、この街を通り抜ける。

駅へ向かう私の心は急いでいる。


走り込んで電車の吊りに捕まり、今日の終わりを窓に映る夜景で

感じている。

仕事帰りの人々に囲まれ、電車は、「匿名のOLの一人」と化した私を運ぶ。


電車の扉が次の駅で開き、私の前に現れた男性。

太めで、怪しいメガネを掛けているのは、まだいいが

自分の体より大きな荷物と!汗が染み込んだ白のTシャツが!

・・・・・・・・許せない。・・・・・・・

触れてしまった右手を、さっさと洗いたい。

私は研修ファイルで身を守り、汗Tシャツ男の後ろに

気持ちだけ距離を置いて引き下がる。

私の背中は、見知らぬ一般ピープルの男性に触れていたが、

汗Tシャツ男より爽やかだ。


私は、この空間で秋の静けさよりも、夏の忘れ物の暑苦しさ

感じながら電車に揺られている。








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