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女子高生「愛美」(あいみ)の巻き


「愛美」は17歳の、今時風のギャルに憧れる
「ギャルの成り損ない」である。

(私には、
ギャルとコギャルの区別がつかない。ああ、歳である。)

雑誌「カワイイ」で、流行をチェック。アユがカラオケのレパートリー。



その日の愛美は、女友達と2人で6時間カラオケをしていた。

アユに成り切る愛美は、歌う自分の姿をアユと同一化して

完全にアッチの世界へ行ってしまってる。



愛美はトイレに行った。オレンジジュースの飲みすぎである。

トイレの個室に入ったのが、事の始まりであった。

愛美の目の前に、置き去りの腕時計を発見。

カルバン クラインであった。




暫しの間、愛美は「悪の自分」と討論する。

(もらっちゃえ!いつも腹時計じゃない!)

愛美が魅かれたのは、時計ではなく、
ブランドである。

ここは、秘密の個室。
誰にも分からない。

愛美は我が物顔で、シルバーに光る左腕で個室を出た。


悪の自分に負けたのである。


カラオケの部屋に戻り、愛美は友人に相談。

するとオカルト好きの友人は、

「高価な物ほど、持ち主の
魂が入りやすいと真顔で言い、

目で訴えたが、愛美には
シルバーの輝きの良さに心奪われ

魂は抜けていた。


落とし主の気持ちも知らず、愛美はブランド物を手に入てて喜んでいる。

愛美のコンビニバイトでは、遊びに消えてしまい、彼氏にねだらないと

プレゼントしてもらえない様な、
ブランド品の存在一つで、

心は満たされてしまったのだ。



次の日、愛美の母が腕時計について話をして来た。

友達の前では見栄を張って「彼氏が買ってくれた」と言ってみたが、

母には本当の事を言わなくてはならない。

愛美の行動は、いつでも全て読まれているのだから。



愛美の母が言う。

「不気味だから返してきなさい」

おいおい、「盗むな!」が先だろう。

愛美の姉も続いて言う。

「ワザと盗ませて、待ち伏せされたらどうするの!」

それよりもトイレの個室にカメラがあったらモロバレである。
(モロ見え?)



こうして
家族会議により、腕時計は郵送する事に決定。

「拾いました。」と知能指数の低い字で書き、時計を箱に入れた。

差出人の名前は、愛美の
母の提案により「山田花子」と記入。

そして郵送。



愛美は言った。「カルバン クラインより、グッチだよね〜。」

魅かれたのは、
時計ではなくブランドである。

そんな愛美は、今日も腹時計で過ごすのであった。





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