22006年4月
土ホタル(その1) 以前私がラミントン国立公園(目次参照)で見た土蛍(グローワーム)の研究を1年間することになりやした。 ![]() (http://lamington.nrsm.uq.edu.au/MainMenu.html) 「う〜ん恐るべきかは自然の魔術」と初めて見た時に私が歌ったその土蛍が光っている様子(写真上)。 彼らの住処は洞窟であることもあり、ニュージーランドでは有名な観光名所となっている。オーストラリアでも観光化はされてはいるが、ニュージーランドほど大規模な数ではないので、まだまだ知名度の低い生き物である。 ところで宮崎監督の映画「天空の城ラピュタ」に出てくる「飛行石の光る洞窟」はこの土ホタルの洞窟がモデルになったともいわれている。彼はオーストラリア好きらしく、風の谷のナウシカの「風の谷」、となりのトトロの「トトロの木」、魔女の宅急便の「パン屋」や紅の豚の「隠れ家」などのモデルらしき場所も実はこの国に存在する。もちろん、日本人が運び込んだ「ウワサ」なのでどれも定かではない。以前タスマニアに住んでいた頃「パン屋」へ行ったことがあったが、当店員に真相を聞いてみると「日本人観光客がそう言ったから」といいながらイソイソと魔女の宅急便のポスターを指差していた。 (http://maguires.com/glow_worms/
(http://www.abc.net.au/science/slab/glowworm/default.htm) さてこの美しい星空も近づいてみればあまり気持ちの良くはない、ウニョウニョしたヒカリキノコバエ(写真右上)という、おおよそハエには見えない蚊のような幼虫の「お尻」が光っていることがわかる(写真左上)。光る虫と言えばホタル。だからこんな名前が付いたらしいが、その実体は求愛行動によって光る甘いロマンチック・ホタルのようなものではなく、 光に向かって飛んでくる小虫達をネバネバした甘いワナ(「釣り糸」と呼ばれる)にかけ
ウニャウニャしながらワニャワニャと食いむさぼる
・・・・というようなホラー・ホタルである。 そんなホラー幼虫を捕まえに、私の住む町ブリスベンから車で2時間ほど南下した場所、スプリングブローク国立公園へ行ってきました。 メンバーはワシ、同じコースのノッポ女学生と教頭のような顔をした教授の3人。 教授:「・・怖いといえば中国でな、夜、俺たちは雨が激しいから案内人と一緒に車の中にいたんだ。窓は曇るし、まったく外が見えない・・・ふと人の気配を外に感じたと思ったら、なんと突然髪の長い女がフロントガラスに顔面をガンガン打ち付けてきたんだ!!」 ノッポ&ワシ:「ギャアアアア!!」 最初は生徒、教授らしく真面目な話をしていたハズだったのだが暗い夜にホラー土蛍を捕りにいくものだから自然と会話もホラーになってしまう。 ちなみにこの話は「その時ビックリした案内人が思わずワイパーでその女を拭き落とそうとした」という笑いオチに終わる。 さて日も沈み、土蛍のいる「秘密の場所」へと連れていかれる。観光資源として大切な生き物なので、研究などの許可の下りたグループの人間にだけ国立公園のレンジャーが住処を教えてくれるのだ。これぞ研究する者の特権。私は頭にライトを装着し鼻息を荒くした。 しかし夜に山奥を歩くこともそうそうない。私は小さい頃近場にあった1000メートル級の山へ登っていたりした半野生児なので山道は平気であるが、夜だと別の恐怖がある。半野生児とはいえ、この国では「チビ」であるがゆえに短足を懸命に動かしても自然に列の最後になってしまった私はこの時、なぜ教授が怖い話をしていたか悟る。 「ハッ!!今後ろに何か気配がっっ!!!!」 夜、山奥でテントを張ってキャンプなどすると夜中にテントのまわりを誰かが歩き回る足音がした・・というような話はよく聞く。大自然の中で起こる音とは、普段の自分達には聞き慣れないものなので、その音を「自分の知っている、想像できる音」におきかえることでこういうホラーめいたことになってしまうらしい、が そんなん言われても怖いもんは怖い。真実よりも恐ろしきかは人間の想像力。 ノッポ:「あっ」 ワシ:「わあああああ!!何?!」 教授:「青ザリガニだな」 http://lamington.nrsm.uq.edu.au/MainMenu.html さすが亜熱帯性区域。鮮やかな青ザリガニ inトロピカル。 ふと思ったがこの人達に日本の赤ザリガニ in ドブを見せたら「う〜んエキゾチック」となるんだろうか。 夏の夜などに聞こえる甲高い虫の鳴く声と共に水の流れる音がしてくるとその場所は近いとわかる。土蛍は大量の湿気を必要とするため、洞窟の中や熱帯雨林の川のそばに住んでいるのだ。しばらく道を下っていくと暗闇の中で滝の流れ落ちる音と共に青白い光が見え出した。 教授:「最近雨が多かったからラッキーだったな。すごい数だ。」 道が川へと下りきると、滝の流れ落ちるその周辺の岸一面、大量の土蛍がパノラマで光っていたのだ。 ノッポ&ワシ「うわーーーすげーーーーー!!!」 う〜ん恐るべきかはまたまた自然のマジック。世の中にゃあすんごい生き物もいるもんだ、ああこのまま時が止まればいいのになぁ、とウットリと見とれる生徒の背後でこの教頭、 教授:「さっ、じゃあさっそく捕獲にとりかかってくれ。それぞれ20匹だ。競争するか?」 土ホタル(その2)に続きます。 |