「この子達は、この身に変えても、僕が守る!」

その決意に満ちた悟郎の言葉に反応したかのように、悟郎の体を金色の光が包む。

その光を見た四聖獣の4人は、表情を険しくした。

「その光・・・・睦悟郎、我々の力、やはり貴様の体内に・・・・・」





幻影の天使たち

第14話




金色の風



ゴウがそう言うと、金色の光はその姿を消した

「えっ・・・・?力って・・・?」

「すっとぼけたってダメだっつーの」

身に覚えの無い事を言われて、悟郎は戸惑いの声をあげる。

「そ、そんなこと言われても・・・・・・」

「仕方有りませんね・・・・僕の美学には反しますが・・・・・」

言うと、レイは体中のバネをフルに使い、一気に飛び上がった。

それに続いて、ガイとシンの二人も一気に飛び出す。

一瞬のことに、悟郎の目には三人が消えたように写った。

「き・・・・消えた・・・・」

悟郎は、三人の姿を見つけようとあたりを見回す、と、その時、ミカの声が上がった。

「ご主人様っ!上よっ」

その声に導かれ、悟郎が上を向くと、すでに戦闘体制に移っているレイの姿が有った。

「その体を引き裂いてでも返してもらいましょうか!」

そう言うとレイは、己の両足を鳥のカギヅメへと変化させる。そしてそのまま自由落下に身を任せ、一直線に悟郎に向かい落下する。

「うわあぁあぁっ、くっ」

咄嗟に回避行動を取ろうした悟郎だったが、足を取られ、倒れこんでしまった。

守護天使たちの悲痛な声があがる。

レイのカギヅメが悟郎の体を引き裂く!

と、その時――

――ドゴォオン

何かを砕くような音と共に、レイの両足は、地面へと深く突き刺さっていた。

「なっ・・・・・・!」

そこには、悟郎の姿はなかった。

「なにっ!?」

レイは咄嗟に振り向く、そこには、赤き翼を身にまとった悟郎が宙を舞っていた。

「うわぁぁっ、な、なんなんだ?」

悟郎は突然の事に戸惑い、驚いた。

しかし、四聖獣はそれすらも許さず、間髪入れずに攻撃を仕掛けてくる。

「レイの朱雀の翼か・・・ちっ」

シンは舌打ちをすると、右手をで空を薙ぐ。すると、指先から六角形の刃が悟郎に向かって飛んでいった。

悟郎は体制を立て直し、その刃を避けようとした、が、間に合わない。

彼は咄嗟に両手で顔をかばった。すると、そこから黒い盾が現れ、シンが放った刃を全て弾いた。

弾かれた刃が周囲に落ちる。

悟郎は、いつまでも来ない衝撃に、うっすらと目を明ける。そして、先程感じた妙な感覚に目を瞬かせる。

「い、今のは・・・・・」

「私の玄武の甲羅を・・・!?」

2人は、お互い今起こった事に驚愕していた、そこへ、第3の声が割り込んでくる。

「次はオレの番だぜ〜〜」

彼はそう言いながら、右手の爪を鋭く尖らせ、悟郎の胴体深くへと突き刺した。

――ッッキィ〜ン・・・・・・

乾いた金属音が響く。

そして、その次の瞬間には、ガイが尖らせたその爪が見事に砕け散っていた。

「がっ@#3$ゑ%■○☆四●密#$串苦&%&墮$円〆♪∈δ八周Θδ~苦*率●~*っ%3.14っ&っ!!!!」

声にならない悲鳴を上げながら号泣するガイ。

悟郎は、赤い羽根を羽ばたかせながら自らの体を見る。

すると、そこには体をすっぽりと包み込むように鎧が出現していた。

その様子を見ていた守護天使たちは・・・・

「ご、ご主人様・・・・・・」

「ご主人様にあんな力があったなんて・・・・・・」

自分たちが相手にならなかった四聖獣を相手に、攻撃はしていないものの、その攻撃を全て防いでいる事に守護天使たちは驚いた。

悟郎に一通りの攻撃を済ませた後、3人は地上に降りる。

つい先程爪を砕かれたガイも降りる。

「くぅっ、いちちちち、ふ〜、ふ〜」

ガイは砕かれた爪に息を吹きかけ、痛みを和らげようとしていた。

そこへ、同胞である玄武のシンから呆れたような声が掛けられる。

「情けないですね、ガイ、己の力であるはずの白虎の鎧に自らの爪を砕かれるとは・・・・」



金色の光を身にまとい、赤い翼を羽ばたかせながら、悟郎も地に舞い降りた。

地に降りた時、赤き翼はスッ、とその姿を消した。

疲労感からか、悟郎はすぐに立ち上がる事ができなかった。

「ご主人たま・・・・・ご主人たま〜」

ルルがそう言って悟郎に駆け寄る、すると、他の皆も一斉に悟郎に駆け寄った。

「ご主人様、お怪我はありませんか?」

ランが心配そうにそう聞くと、悟郎はにっこりと微笑む。

「うん、大丈夫みたい」




その様子を見ながらゴウは、1人考えを巡らせていた。

(獣神具・・・・それは本来我等が四聖獣、神の持つべき力・・・・・・それを、ただの人間に使いこなせるわけが・・・・・!!)

いくら考えていても、答えは出ない・・・・・ゴウはその苛立ちに、思わず顔をしかめた。

そして、左手を掲げ、雄々しく声を上げた。

すると、自らの作り出した結界が歪み、稲妻が走り出す。

そして次には、ゴウの体から光があふれ出した。

シン、レイ、ガイの3人は、ゴウのその行動に、

「あ、兄者・・・・」

「人間相手にその力を使うのですか!?」

と、彼の行動に驚きを隠せなかった。

結界内に光と轟音が轟く、その様子をただ見ているだけだった悟郎は、ふとみんなの顔を見た。

みんな、それぞれに不安げにゴウの行動を見つめていた。

そして悟郎は顔をあげた、彼の顔には自分のするべき事が理解っているようなそんな決意の表情が読み取れた。

「ムツミィーーーっっっ!!!」

ゴウは叫ぶと、掲げていた左手を勢い良く振り下ろした。

そんな彼の行動に反応してか、頭上の結界の中心部から稲妻が疾る。

その稲妻は、一直線に悟郎達、守護天使たちを狙っていた。

悟郎は立ち上がり、守護天使たちを背後にかばうと、両手を前に突き出した。

稲妻が悟郎に迫る。

すると、突き出した両手の先から、先程シンの刃を弾き返した盾が現れる。

その盾は、見事にゴウの放った稲妻を受け止めた。

しかし、受け止められたにもかかわらず、ゴウは薄ら笑いを浮かべていた。

「くっ・・・・・・」

衝撃の所為か、悟郎は苦悶の表情を浮かべる。

思わず守護天使たちは駆け寄ろうとした、しかし。

「来ちゃだめだっ」

という、悟郎の制止の声に止まらざるを得なかった。

しかし、この攻撃は盾だけで押さえられるものではなく、徐々に悟郎は押されていた。

「くっ・・・・後・・・・・・少し・・・・・・・・」

もうダメ・・・、誰もがそう思った時、悟郎は咄嗟に両手を握り締め、縦に重ねた。

すると、再び眩い光がほとばしり、盾が消え、その手に一本の剣が現れた。

剣に稲妻が集約する。

稲妻は剣を取り巻き、集う。

剣はその攻撃に耐えていた、が、次の瞬間には稲妻自体を四方八方に弾いた。

弾かれた衝撃が周囲を破壊する。しかし、悟郎本人と、彼が守った守護天使たちには傷1つなかった。

そして、剣が消えると、それにともない悟郎も足を曲げ、膝を立てた。

悟郎は、とてつもない疲労感に襲われた。

地面には、先程の衝撃で稲妻が走った跡が残っている。

ゴウはそれを見て、驚愕する。

「バカなっ・・・・・奴には、この俺の青龍の牙までをも使いこなせる力があると言うのか・・・・? 睦悟郎・・・・・・貴様一体・・・・・・」

悟郎は、顔を上げると、周囲を見回した。

ガイ、レイ、シンの3人も驚きを通り越し、恐れまで生まれ始めていた。

と、そこへ、守護天使のミカが声を張り上げ、四聖獣を罵った。

「ちょっとアンタ達! 理解ったでしょう! アンタ達なんかより、ご主人様のほうがズ〜〜〜〜っと強いんだからっ」

ガイの腕が震える。

しかし、それを気にすることなく、ミカは続けた。

「さっさと諦めて、ユキ達を返して、とっととどっか行っちゃいなさいよ〜〜〜っ」

「ざ〜〜〜っけんなよっ!そいつが俺様たちより強いだとぉっ!?」

ガイのその口調に、悟郎がハッとした表情でガイを見る。

ガイは、なおも続けた。

「元はといえば、そいつが俺たちの力を盗みやがったお陰でっ!!」

『盗んだ』その言葉に、悟郎は困惑の表情を浮かべた。

「盗んだ・・・・・・?僕が・・・・?」

すると、悟郎が四聖獣の元へ歩み寄る。

「ご、ご主人様・・・・・」

不安げに守護天使たちが見つめる中、淡々と悟郎は四聖獣に歩み寄る。

ガイは、咄嗟に威嚇する。

フー、と毛を逆立て・・・るような事はしなかったが。

「な、なんだっ、やろうってのかっ?」

しかし、ガイの予想に反して、悟郎は意外なことを言った。

「教えてくれないか?」

その予想外の言葉に、ガイ、シン、レイの3人は、思わず拍子抜けし、姿勢を崩す。

『え?』

「さっきの力は、君たちの物なのか?それを僕が盗んだって・・・・・」

「てっめぇ〜、すっとぼけやがって・・・・・」

悟郎の態度に怒り浸透したようなガイが、今にも飛び掛ろうとする、そこへシンの腕が入り、ガイを制する。

そして、静かにシンが語る。

「正しくは、前世でのあなたが、です」

「前世の・・・・僕?」

今度はレイが話し始める。

「獣神具はぼく達、四聖獣の力の源、それを君に奪われたせいで・・・・・」

「俺たちは、何百年もの間、暗い闇の中に封印されちまったんだ・・・・」

沈痛な面持ちで3人はうつむく。

悟郎は、辛そうな3人を見つめ、その後、アーチの上に居るゴウを見た。

少しだけ考えるような仕種をし、にっこりと笑顔で。

「・・・じゃぁ返すよ」

悟郎は四聖獣たちにそう言った。

突然の悟郎の発言に、再び3人は目を丸くして驚く。

「えっ?」

「なっ?」

「返すって・・・うをぃっ・・・・・・」

ガイは呆れ口調でそう言う。

「っ・・・・・・なっ、ダメダメ、ダメよっ、ご主人様っ、渡しちゃダメ」

悟郎は、ミカの方を向き、首を横に振り、

「いいんだ・・・・」

「いい・・・・って、そんなぁ・・・・」

「良くないれすよぉ・・・・」

ミカや、ミドリ、守護天使たちの声に少しも触発される事無く悟郎は四聖獣を見据える。

その悟郎の態度に、ゴウは困惑を押さえきれずに言った。

「なんなんだ・・・・・・・何故だ、貴様は、そう簡単に力を捨てられる、その力があれば、この世を支配する事だってできるのだぞ!」

最後には声を荒げて言うが、その声にもきょとんとした表情で悟郎は答える。

「支配・・・?いやぁ、そんなの僕には似合わないし・・・・・」

「・・・・人間は、己の欲望のままに争いと略奪を繰り返す種族ではなかったのか! だからこそ、貴様は獣神具を盗んだのではなかったのか!」

悟郎はうつむき、返す言葉を捜す。

「なんだか・・・・わからないことだらけだけど・・・これだけは言えるよ」

そして、ゴウを真正面から睨み返し。

「僕にとっては、そんなものより、この子達のほうがずっとずっと、大切なんだって事がね!」

その言葉を聞き、守護天使たちは涙ぐむ。

「だから、返す代わりに、この子達には手を出さないって、約束して欲しいんだ!」

ゴウと悟郎は数秒の間にらみ合う。

そして、ゴウが口を開く。

「そんなものだと? ふっ・・・・・・・良いだろう。神の名に置いて誓おう、彼女たちに手を出さない・・・・・・と・・・・・」

「それと・・・・・」

「待ちなさい」

悟郎が続けて何かを言おうとした時、レイが次の言葉を察したように言う。

悟郎は言葉を遮られ、困惑する。

「え・・・・?」

ガイも悟郎の次の言葉を察し、溜め息交じりの言葉で言う。

「獣神具を返すことについての約束は、あいつ等に手を出さないことだけだ」

と言って、ガイはランたち守護天使を示す。

「物事は、常に平等に進めるべきです」

シンも二人に便乗して言った。

「ど、どういうことだい?」

すると、ゴウも同じく悟郎が言葉を言う前に言葉を発した。

「我らの妃は解放することはできん、彼女たちは我々の子孫を残すために必要な存在なのだからな・・・・・」

そんな、と悟郎が落胆の表情を浮かべる。

「だが、1つだけ条件がある」

ガイが言うと、悟郎は表情を明るくした。

「条件?それをすれば、4人を解放してくれるのかい?」

「えぇ、誓いましょう、神の名において」

シンのその言葉に、悟郎は思考をめぐらせた。



四聖獣たちは、明らかに何かを望んでいる・・・・・・

妃候補を解放してまでも欲しい何かが・・・・・・・

そう考えていると、ふと、ある言葉を思い出した。

【人間への復讐はお前を倒すことで幕を開けるのだ!】

(そうか、彼等は僕の命が・・・・・)

そう思った時でさえ、悟郎には迷いがなかった。

(みんなを守るためなら・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

そして、その事を声に出して言った。

「・・・・わかった・・・それが君たちの望みなら、僕の命を君たちにあげるよ」

その悟郎の言葉に、守護天使たちは絶句する。

その反対に、四聖獣たちは明らかに口元を歪め笑みを浮かべる。

「ふ・・・物判りがいいな・・・いいだろう」

そう言うと、ゴウは指をパチン、と鳴らす。それと同時に、ガイ、シン、レイの3人も自分の指を鳴らした。

すると、先程まで精気のなかった四人の守護天使たちに瞳に輝きがもどった。

「あら・・・・?私達は・・・?」

「私は・・・・・・何をしてたんでしょう・・・・・」

「ここは・・・・・・?」

「タマミは今まで何をやってたんでしょう・・・・?」

意識を戻した四人の守護天使は、ふと見慣れない所に居るのに戸惑い、お互いの顔を見合わせた。

そして、ふと自分たちがいつもと違う姿をしているのに気付いた。

姿に気づいた後、四人は瞳を閉じる。そして衣服へと精神を集中させる。





守護天使たちの服は、自由に着替えることができる。

細かいところまで考える必要はなく、己の頭の中で『これだ』と思う服に瞬時に着替える事ができるのである。

そして彼女等は彼女たちの最も着慣れている服、いわゆるメイド服へと転身した。





「いつものねーたんたちらぉ」

瞳の輝きを取り戻した四人を見て、ルルは喜びの声を上げる。

「元に戻ったんだねっ」

感極まり無く、守護天使たちはお互いの再会を喜び合おうと、駆け寄った。

ツバサは、困惑した表情で朱雀のレイを見ていた。

しかし、すぐに頭を降って迷いを振り切り、みんなの元に駆け寄った。

守護天使たちは、何年もの間会っていなかった家族のように、再会を喜び合っていた。

彼女等の心の絆がどんなにも深いかが判る。

その様子を見ていた悟郎が、

「良かった・・・・・」

と、安堵の声を漏らした。

四人は、その声を聞き漏らさなかった。

すぐさまその声の主を見つけると、一斉に駆け寄った。

それに続いて、残りの守護天使たちも悟郎の下に駆け寄る。

そして、再び喜びを噛み締めるように、皆は満面の笑みを浮かべていた。

四聖獣たちも、その様子をしばし見ていた。

すると、その様子に気づいた悟郎が、ツバサの肩を、ポンと軽く叩くと立ち上がった。

それに気づいたゴウが、

「どうした?もうしばらく別れを惜しんでもいいんだぞ?」

と、口元に笑みを浮かべ言った。

それを聞いたユキ、ツバサ、タマミ、アユミの4人が驚愕する

『別れを・・・・・惜しむ・・・?』

悟郎は、首を振って。

「・・・・・・別れが辛くなるから・・・・・・・」

悟郎は蚊の鳴くような声でそう言った。

ツバサがランに問いただす。

「ねぇ、ランっ、別れって、惜しむってどう言う事!?」

ツバサの問いに、ランはすぐに答える事はできなかった。

顔をうつむいたまま、黙っている。

その様子に、ツバサは思わず声を張り上げ、ランの肩を揺さぶった。

「ねぇっ、ランっ、どう言う・・・・ラン?」

ツバサが肩を揺さぶると、その反動でランの顔がツバサの真正面に来る。

そのランは頬を、涙で濡らしていた。

「ラン・・・・どうしたの?」

突然の自体に、ツバサは戸惑った。

自分はそんなに強く揺さぶってしまったのだろうか? そう思って。

「ご、ごめんね?痛かった?」

ツバサは謝った、しかし、ランは。

「違うの・・・ご主人様は・・・私たちのっ、ために・・・ご主人様は、いのっ・・・・ひっく」

ランは口から嗚咽が漏らす。

ツバサは、この事態に戸惑う。

ふと、他の守護天使たちを見ると、ツバサ達以外の守護天使たちは例外なく、涙を流していた。

そして、ルルが大声を上げて泣き出してしまった。

「ご主人たまぁ〜、死んじゃイヤらぉ〜〜〜」

「ちょっ、死ぬって・・・・どう言うことですの?」

「何がどうなってるのか、はっきり説明してくださいっ」

「ご主人様は・・・・・・私たちを助けるために、四聖獣と取引をしたのよ・・・・」

「取引って・・・・・一体・・・・?」

ユキの問いにアカネが答えた。

「ユキ姉さんたちを解放する代わりに・・・ご主人様・・・・自分の命をあげるって・・・だから・・・・」

『そんなっ!?』

四人は一斉に叫んだ。

「そんな、それでは、止めなければ・・・・」

ユキは振り返り、悟郎に駆け寄ろうとする。しかしそれをミドリの悲痛な声が押しとどめる。

「もう・・・無理れす、ミドリ達には何もできないれすよぉ・・・・・」

「ご主人様・・・・ご主人様ぁ・・・・」

みんなの悲痛な声があたりに充満する、しかしその声を悟郎は聞き流し、ゆっくりと四聖獣の元へと歩み寄る。

悟郎は、四聖獣の眼前に立つと、言った。

「・・・ありがとう・・・・・・でも・・・・・・獣神具ってどうすれば返せるんだろう・・・・・・だって、もう消えちゃったし・・・・・・・・・・・・・・・」

悟郎は自分の手のひらを見つめながら考える。

すると、四聖獣の四人が悟郎の周りを取り囲む。

「えっ!?」

すると、悟郎の体から光があふれる。

青竜の牙、玄部の甲羅、朱雀の羽根、白虎の鎧

その四つの獣神具は、四人の四聖獣の元に戻った。

『全ては・・・これからだ』

四人は同時にそう言い、そして、ゴウが青竜の牙を振りかざす。

「覚悟はいいな・・・・・?」

「・・・・・・・・あぁ・・・・・・僕の命で彼女たちが守れるのなら・・・・・・」

悟郎は、自らの運命をすべて受け入れたように瞳を閉じた。

そしてゴウは、青竜の牙を一気に振り下ろす。

守護天使たちの悲鳴と絶叫が混ざった声が響き渡る。

『ダメェ〜〜〜〜〜〜』

ゴウの持つ青竜の牙が悟郎を切り裂く。

と、思ったその時。

守護天使たちの叫びと呼応し、ゴウが作った結界が、轟音を立てて砕けた。

――ビシッ、ガガガガガ・・・・・・

ゴウは牙を振り下ろす手を止めた。

「な、何だ今の音は・・・結界が・・・壊された? まさか・・・・・そんなことが・・・・・」

四聖獣のゴウが作り出した結界は破壊された。

何者かに。





敵か味方か、しかし、守護天使たちにはそんなことはどうでも良かった、

悟郎の命が助かった、それだけでみんなは安堵していた。






静寂が支配する闇の中を、コツコツと四つの足音がやってくる。

「運命か・・・・・」

「因果か・・・・・」

「宿命か・・・・・」

「・・・そして天命か・・・・・」

ゆったりと、かつ規則的に聞こえるその足音の主は、口々にそう言った。

そして、暗がりから姿をあらわし、その姿が街灯の明かりに照らされる。

その姿の中の1人を確認すると、アカネは目を見開いて驚愕する、

その様子は、ツバサとアユミも同じであった。

そして、悟郎も例外ではなかった。



第15話『四種の神器』に続く