誰もいないめいどの世界の1つ。 しかし、その中央に、右手に杖を持った女性が立っていた ただ、その彼女を包み込むかのように、十二本の柱と、その上に宝玉が煌いていた。 そこでただ一人、水晶玉を見ていた。 『とうとうこの時が来てしまいましたね・・・・・・』 彼女は、複雑な表情でその水晶球を覗き込んでいた。 水晶球に映っているのは、パワーショベルを持ち上げ、放り投げる男。 そして、その男と視線が合った。 『はっ・・・・』 ただならない男の威圧感に、彼女は思わず水晶玉を落とした。 地に落ちた水晶玉は、粉々に砕け散る。 『・・・・・・聖者さま・・・・・・』 その時、 柱状の宝玉がキラリと光った。 ![]() 幻影の天使たち 第11話 ![]() 『きゃははっ、きゃはっ、きゃはははは』 にぎやかな笑い声が周囲に響く。 笑い声の主はナナとルル。 二人はプールサイドを走り、ぴょんっと跳び、プールに飛び込む。 その後ろをモモが追いかける。 「ま、待って、二人とも」 といって、モモも二人を追って飛び込む。 二人と違うのは、モモは浮き輪の中に入っていることと、鼻をつまみながら飛び込んだことである。 どうやらモモは泳げない様子。 そう、守護天使たちは、今プールに来ていた。 商店街の福引で当てたプールの招待券を使い、家族でプールに来ているのであった。 ちなみに水着は、 ナナとルルはセパレートタイプ、モモはオレンジのワンピースタイプである。 「ナナプール大好き~」 「ルルたんもらぉ~」 人としての体を与えられたにもかかわらず、ナナはいぬかき、ルルは平泳ぎをしている。 モモはばしゃばしゃと足をばたばたさせて少しずつ進んでいる。 こういうのをトンカチと・・・・・・・もとい、カナヅチと言う。 はしゃぎすぎのナナとルルを、ツバサが少しはなれたところから嗜めるように注意する。 「お~い、あんま調子に乗るんじゃないよ~」 その時、ツバサは自分に注がれる熱い視線に気付いた。 ツバサがつけている水着はスポーティなビキニタイプで、 赤と白のツートンカラーと呼ばれるもので、似合ってはいるが結構大胆なものである。 「・・・もしかしてボク・・・・目立ってる?」 自覚が無かったらしい。 次行ってみよう。 アカネは水際でパシャパシャと水をかいていた。 そこにミドリがやってくる。 「はれ~~~? アカネさん泳がないんれすか~?」 「ん~、ちょっとね、消毒された水は苦手なんだ」 「だめれすよ~、せっかく来たんだから泳がないと」 「後で良いよ、私に構わずミドリは泳いでて良いよ」 変化コンビのこの二人。 アカネは白のワンピースで、腰にパレオという薄い布を巻いている。 言わせて貰うが、そこら辺のガングロコギャルより綺麗で色っぽいのである。 小学六年生である事に疑問を感じずにはいられない。 その反面、ミドリはタヌキの足跡がぺたぺたついている水着で、こちらは逆に子供っぽい。 「アカネさ~ん、一緒に泳ぐれす~」 といって、ミドリはアカネの腕を引っ張って催促する。 「もう~、私は後で泳ぐから、離して」 アカネが言うと、ミドリはパッとアカネの手を【律儀に】離した。 「あっ・・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・あっ」 ――バッシャ~ン ミドリが手を離したため、アカネは重力に従い、プールの中に転落した。 アカネは、ゆっくりと水面に顔をあらわす。 「あ、あはははは、わざとじゃないれすよ」 ミドリが手をひらひらと振って必死に弁解する。 アカネは無言で、プールから上がり、腰に巻いていたパレオを外して、そこら辺に置く。 そして、再び無言でミドリのところによってきて。 「あ、アカネさん・・・・・・・・」 ――ドンッ ――ばっしゃ~ん と、アカネはミドリを突き飛ばし、ミドリはプールの中に転落する。 ミドリはプールの中でもがく。 『がばばばぼばぼばぼば~』 「な、何するんれすかアカネさ・・・・・・・」 水面から顔を出して言おうとするミドリの目の前に、飛び込み体制のアカネが映った。 ――ドッパ~~ン 盛大に水しぶきを巻き上げながら、アカネはプールに飛び込んだ。 「きゃぁ~~~」 ミドリは思わず逃げようとする。 しかし、そのミドリを逃がすまいとアカネが手を伸ばした。 「逃げるな~、よくもやったな~、このっ、このっ」 と、アカネはミドリの水着をつかみ、取っ組み合いをしてじゃれ始める。 ・・・・・・・・・・・・前言撤回、やっぱりアカネは小学六年生。 ビニール製の、ビーチベット。 それに座り、体を預け、本を読んでいる可憐な美少女。 いや、美少女というには大人びている。 彼女はユキ、守護天使たちの最年長、ゆえに皆から慕われている。 彼女もしっかりとプールに来ていた。 ちなみに、彼女は白のワンピースの水着で、高校三年生とは思えない清純な色気を醸し出していた。 そこへ、二人のイケメン(死語)が声をかける 『あの・・・お一人ですか・・・・・?』 『お茶でも・・・・飲みませんか?』 『僕たち、ご馳走しますよ?』 と、なんとも一般的なナンパの常套句を言う。 「まぁ・・・・そんな、困りま・・・・」 ユキが初めてのナンパで、頬を赤らめてそう対応しようとした時、 「ナナはオレンジジュース、もちろん汁百パーセントのねっ♪」 ナナがやってきてピースサインを出しながらにこやかに言う。 っていうか「汁」と言うな「汁」と。 「ルルたん青汁~」 ナナについてきて、今度はルルもやってくる、ってか青汁・・・・・。 「も、モモは、バナナジュースを」 モモがもじもじしながら頬を赤らめて言う。 しかし、三人が来たことにより。 『な~んだ、子持ちかよ』 『行こ~ぜ』 といって、二人はその場を離れる。 子持ちといわれた為、ユキはその誤解を解こうとした。 「あ、あの、ちょっとっ?」 しかし、ユキの努力もむなしく、二人組は誤解をそのままにその場から去っていった。 追って説明するのもなんなので、ユキはその場で嘆息した。 しかし、そんなユキの気持ちもいざ知らず。 「子持ちって何のことらぉ?」 「お、お母さんってことでしょうか・・・・?」 そこでナナが指をパチンって鳴らす。 「おかぁさんっ?」 と言って、今度は両手を合わせ。 「おかぁさ~ん」 と言う。 すると他の2人もそれに悪ノリする。 『おかぁさ~ん』 と言った。 「・・・わたくし・・・・・そんなに老けてるかしら」 と、ユキは嘆息した。 実はユキの雰囲気がただ大人っぽいだけなのである。 大きい25メートルプールの底。 す~っと動く影がある。 端から端まで一度も浮かび上がらずに移動する影。 25メートル地点で、ぺたっと壁に当たり、 「ぷはぁっ~」 クルミが顔を水面に出す。 25メートルを息継ぎ無しでしかもで潜水で泳ぎきるとは、クルミ恐るべし。 「気持ち良いの~、タマミちゃんも一緒に泳ぐの~」 プールサイドで本を読んでいるタマミをクルミが呼ぶ。 「タマミはいいですっ」 さっきからの繰り返しである、クルミがいくら誘ってもタマミはちっともにプールに入ろうとしない。 タマミの水着はワンピースタイプで、猫の足跡がぺたぺたとついている。 ミドリの水着とどう違うのかは良くわからない。 クルミはピンクのふりふりフリルの水着を着ている 「でも~、プールに来て泳がないのって邪道なの~」 「邪道って・・・・・」 タマミは、クルミの言う邪道と言う言葉に汗を浮かべる。 クルミはプールをばしゃばしゃと泳いで、タマミのところまで行く。 すると、クルミはタマミを誘惑するように言った。 「タマミちゃ~ん、一緒に泳ぐの~」 「だめですっ」 断固として言うことを聞かないタマミに、クルミが少しむっとなる。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 少しの沈黙の後、クルミはザバッとプールから上がる。 そして、とてとてと、タマミのそばまで来る。 タマミは、クルミに見下ろされて、びくびくする。 「な、なんですか?」 と、タマミが言ったのを合図に、 ――ばっ 「あぁっ」 ――ぱたんっ 「ああぁっ」 ――がしっ 「あっ」 ――ずるずるずる・・・・・ なんとも速技。 クルミはタマミの一瞬の隙をつき、本を奪い、本を閉じ、本をその場に置くと、タマミの腕をつかんで、プールに向かって引きずり出した。 身の危険を感じたのか、タマミが涙声で言った。 「だ、だめです~、離してください~、タマミお水苦手なんでです~」 そりゃ猫だからね。 「何ランちゃんみたいなこと言ってるの~?タマミちゃんは車が嫌いなんでしょ~?」 クルミはタマミをずるずると引きずりながらそんなことを言った。 「そ、それはそうですが・・・・・って、そうじゃなくてっ」 と押し問答してる間にタマミを引っ張ってクルミはプールのそばまで来た。 「とりあえず入るのっ」 といってクルミはタマミの腕をつかんでブンッ、とプールに放り投げる。 「きゃぁ~~~~」 ――ばしゃ~ん タマミはプールの中でもだえる。 「みっ、水っ、水っ、肉球に水がぁ~~~」 悶えながら言うタマミの言葉に、クルミが冷静なツッコミを入れる。 「肉球なんてそんなもの今のタマミちゃんにはないの~」 「へっ!?」 タマミはもだえるのをやめて自分の右手を見る。 そこには綺麗な手があった。 タマミは手をにぎにぎする。 「・・・・・あはは、そうでしたね」 タマミは苦笑した。 「それよりもプール気持ち良いの~」 クルミは仰向けにプールにぷかぷかと浮いている。 「・・・・・・・・・気持ち良いですね~」 と言ってタマミはばしゃばしゃと泳ぎだす。 ところで本は? 「もう、こんなところに放りだして・・・・・・・・」 ユキさんが回収しました。 更衣室にて 「ふんふふ~んふんふんふふ~ん」 ミカが髪型をセットしている。 ミカは、赤いビキニを着用しており、ミカの色気を十二分に醸し出していた。 「ふふ~ん・・・・・・・・・・よし」 といってミカ鏡に映った自分に向かってウィンクをした。 「髪形よし、胸よし、おしりよ~し。うんっ、完璧、これでご主人様の視線はミカにく・ぎ・づ・け♪」 「ミ~~~カ~~~ちゃ~~ん」 そこへ底冷えするような口調でアユミがやって来る。 ミカは思わずビクッとなった。 「あれほど速くと言ったのにま~だ着替えていませんでしたのね~」 「あ、アユミ、どうしたの?泳いでくるんじゃなかったの」 「もうとっくに一泳ぎしてきましたわ、ミカちゃんこそこんなに時間かけて何をしていますの?」 「ふふ~ん、ミカのお色気でご主人様を悩殺するのよっ」 と、ミカが自身満々に腰に手を当てて胸を張る、ミカの豊かな胸が最も強調されるポーズである。 しかし、アユミは、持ち前のその毒舌を放った。 「相変わらずそんな低俗な事しか考えられないんですの?」 アユミのそのセリフに、ミカはカチンと来た。 「何よそれ~、ぺったんこなあんたに言われたくないうわよっ」 「あ~ら、胸ばっかり大きくなっても邪魔なだけでしてよ~」 「むき~~~っ、あんたは胸が無いから色気が・・・・・・・・」 ミカはアユミに言い返そうとしたが、途中で言葉に詰まった。 ミカはアユミの体をまじまじと凝視している。 アユミの体は、泳いだことにより濡れていて、指先からは水滴が落ちていた。 それによって、彼女の色気は、従来の色気の数倍増加していた。 水も滴る良い女とは、まさにこの事だろう。 「・・・・・?色気が何ですって?」 途中で途切れたミカの声を疑問がり、アユミは聞き返す。 しかし、ミカは反応しない。 ミカはポカンとアユミの身体を見ていた。 すると、アユミはミカの視線が自分の身体に向いていることに気が付いた。 (・・・私の格好、そんなに変でしょうか・・・・?) アユミは、ミカと正反対の青いビキニを着用していた。 何気に似合っている。 アユミは自分の格好を確かめるため、きょろきょろと背中や腕を見渡す (変じゃ・・・無いですわよね?ならミカちゃんは何をそんなに凝視してるのかしら?) 自分の格好を確認したのち、アユミが再びミカの名を呼ぶ。 「ミカちゃん?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 それでもミカは反応しなかった。 「ミカちゃんっ?」 口調を強めてもう1回呼んでみると、ようやくミカは反応を返した。 「へっ、はっ、何?別に私はあんたの体に見とれてなんかいないわよ?」 と、ミカは自爆する。 しかし、アユミは気づかず、頭の上に『?』マークが浮かべている。 「・・・・?何を・・・・・・言っていますの?」 アユミが不思議そうにミカの顔を見る。 「へっ?はっ、何も・・・言ってないわよ?」 思いっきり動揺していた。 「・・・まぁ良いですわ。私、もう行きますわよ」 といって、アユミはきびすを返し、更衣室から出て行った。 その後姿を見ながらミカは一言ぽっつりと。 「帽子くらい取りなさいよ・・・・・・・・・・」 アユミのトレードマーク、ベレー帽 片時でも外さないそれは、プールの中でも例外じゃないようだ。 悟郎は、プールサイドでボケ~っと座っている。 泳ごうともせず、ただ両足を水の中にいれてばしゃばしゃと動かしているだけにしか過ぎない それを・・・・・・・・ 「えいっ」 ツバサが背後から悟郎に忍び寄り、ドンッ、と背中を押して、プールに落とした。 「うわっ、わわわぁっ」 悟郎が、慌てて両腕で空を掻く。 ――ばっしゃ~ん、ぶくぶくぶく・・・・・・・・・・・・・・・ 「ぷはぁっ」 浮かび上がってきた悟郎に、ツバサがにっこりと笑いながら言った。 「何しょぼくれた顔してるの?ご主人様っ、せっかくプールに来たんだからもっと泳がないとっ」 「え?・・・・あっ、うん、そうだね」 といって悟郎はプールから上がり、先ほどのようにプールサイドに腰掛ける。 その隣にツバサがちょこんと座る。 「どうしたの?何か考え事?」 ツバサの問いに悟郎が答えた。 「・・・・うん、やっぱり・・・・ランも一緒につれて来れば良かったなぁ・・・・って思って」 「・・・・・・・しょうがないよ、ラン、水苦手だし・・・・」 「うん・・・・」 「それに・・・・・・・・・・・あの子病気だし」 ツバサが洩らしたその一言に、悟郎は思わず驚いた。 「えっ? 病気だって!?」 「あっ、いや、たいしたこと無い病気なんだけど・・・・・・・」 ツバサが慌ててそう言う、しかし、 「でも、一人で留守番してたら病気が悪化したとき周りに誰もいないから大変かもしれない・・・・、やっぱり・・・一人で残すべきじゃなかった・・・僕、ランを連れてくるよっ」 「あっ、ご主人様っ」 悟郎は、あっという間にプールから出てランが一人でいる家に走っていった。 「・・・・・・・・・・・病気って言っても・・・恋の病・・・・なのにな」 ツバサがポツリと洩らしたその言葉を聞いたミカが、その背後から声をかけた。 「何が鯉の病って?」 「うわぁっ」 ツバサは思わず大声をあげる、そのツバサの態度に、ミカは思わずムッとなって。 「何よそれ、私はお化けなの?」 「い、一瞬そう感じた」 ミカはいきなりツバサの背後に立っていた、そりゃ怖いわ。 「ひどいわねぇ、こんなナイスバディーなミカをお化けだなんていうなんて」 といってミカは再び腰に手を置いて胸を張る。 そこにユキがやってくる。 「ミカさんっ!」 「ん?」 「なんですかっ、その露出過多な水着はっ!」 ユキは、ミカのビキニの水着を指差してそう言った。 「ユキの水着がおばさん過ぎんのよ~♪」 「おば・・・・・ともかくっ、もう少し恥じらいを学ぶべきです!」 ユキの言葉に、ミカは数瞬だけ考える仕種をした、 しかし、ミカにそのような事を期待しても無駄な事である事を忘れていたらしい。 「恥じらい・・・・・・・・・『いやぁ~ん』『やっだぁ~ん』、恥らい終わりっ」 と言うと、ミカはビシッとユキに敬礼をする。 そのミカの行動にユキとツバサは冷や汗を浮かべる。 「ミカちゃんに注意したって無駄なことですわ」 「ひゃぁっ!」 「どうせ聞く耳持たないんですからね、あの大きな耳はただの飾りだったようですわね」 今度はアユミに背後に立たれ、驚くツバサ。 「むっかぁ~、何よあんたは~、なんか私に恨みでもあるわけっ!?」 「別に恨みなどはありませんわよ~?ほほほ」 「・・・なんかいやな笑い方ね」 恒例のミカとアユミの口ゲンカも、アユミの妙な笑いにミカは気をそがれた。 『おかあさ~ん』 どこからともなく「おかあさん」の声が聞こえる。 「おかあさ~ん、喉が乾いたぉ~」 「なんか飲みたいよ~」 「あの、も、モモはバナナジュースが飲みたいです」 ルルとナナとモモが駆け寄って来て、足に抱きつく。 そして、口々にお母さんと言い、ユキにねだる。 その三人を嗜めるようにユキが言った。 「こ、こらっ、その話は秘密に・・・・・」 と、ユキが言ったが、時すでに遅く。 「なにそれ・・・おかあさん?」 ミカは不思議そうにユキたちを眺める。 その隣で、アユミも同じくユキ達を見ながら言った。 「・・・事情はわかりませんが、あの子達三人はユキさんをお母さんととってるみたいですわね・・・・・・といっても、あの子達の年齢から考えればユキさんは若すぎだと思いますけど・・・・・」 「ふぅ~ん・・・・・・・・・ユキも大変ねぇ」 「ふぅ・・・・・なんか・・・・楽しそうだね」 「ひあぁあぁあっ!」 「はぁ・・・・・・そうれすねぇ・・・・・・ツバサさん、何してるんれすか?」 背後からの急襲パート3、流行ってるのだろうか? 「い・・・いや、ちょっとね・・・って、あんた達、どうしたの?やたら疲れているように見えるけど」 「あ、あぁ、別にたいしたことは無いんだ」 (いえない・・・プールに来て泳がずにミドリと取っ組み合っていたなんて・・・・) 「アカネさんがミドリに襲い掛かってきたんれす~」 ミドリがあっさりと言い放つ。 「なっ!」 アカネはとっさにミドリの口を両手で覆う。 「へっ?襲った・・・・?」 「コラっ、ミドリっ、説明するにももっとましな言葉があるでしょうがっ」 「だって~、別に間違ってはいないれしょ~?」 「そ、それはそうだけど・・・ってっ、ちが~うっ」 最後は思わず大声になる。 「なになに?何が違うって?ミカお姉ちゃん聞きたいなぁ~」 ミカが茶化すような口調でアカネに迫る。 すっ、とアカネは表情を消した。 この表情したときの、アカネする事は1つ、ミカのこめかみに脂汗が浮かんだ。 「ミカね~さぁ~ん?」 アカネが底冷えのする喋り方でそう言った。 「あ、あははは、冗談よ、冗談・・・・あは、あははははははは」 ミカは笑ってごまかす。 ミカはアカネが苦手、ウサギはキツネに食べられる立場だから無理も無い。 「ふぅ~、気持ちよかったの~」 「一生分泳いだって感じですね♪」 そこへ、タマミとクルミの二人がやってくる。 クルミはそのまま、タマミはプルプルと全身を振って水を飛ばしている。 と、そこに居る皆を見てクルミが言った。 「あれ~?何でみんなこんなところに集まってるの~?」 クルミがそう言うと、ミカは思い出したかのような感じで、 「あっ、そういえば本題忘れちゃってたわ、ねぇツバサ、ご主人様知らない?」 と、ツバサに聞いた。 「え?」 「ご主人様よっ、さっきからどこにも見当たらないのよ・・・あんた知らない?」 「あ・・・・ご主人様は・・・・・・」 と言って、ツバサはミカに説明した。 「えっ!?えぇ~~~~っ!?帰っちゃったの~~~っ!?」 「い、いや、あの・・・ランをつれてくるって・・・・・」 ツバサは、ミカがいきなり大声を出したので耳を押さえながら答えた。 「ラン?あの子水嫌いじゃない、プール来ても怖いだけじゃないの?」 ミカがもっともな事を言う。 「それもそうなんだけど・・・・・・ご主人様が「一人で留守番はやっぱり心配」って多分『水に入らなくても良いから、皆のところに居よう』ってことなんだと思うけど・・・・・・」 「・・・・相変わらずご主人様は優しすぎるんだからぁ・・・・・」 ツバサの言葉に、ミカがそう言う。その言葉に全員がうなずいた。 悟郎が家に向かって必死に走っている頃。 ――コンコン と、睦家のドアをノックする人物がいる。 その人物は、左手にトンカチを持っている(!?) ――コンコンコン 右手の甲で再度ドアをノックする。 部屋の中にいたランがその音に気づき、扉の前までやってくる。 「誰・・・・・?」 そう思いながら、ランはカギをあけて、ドアノブをまわそうとした。 と、そのとき、でかける前の悟郎の言葉を思い出した。 『念のために、すぐにドアは開けないようにね、変な人来ないとも言い切れないから』 「そうでした、まずは覗き窓で誰かを確認して・・・・・・」 といって、ランは少し背伸びをして覗き窓を覗く。 「!」 ――カチっ、ガチャッ ランは慌てた様子で鍵を空けてドアノブを回した。 ドアの前で立っていた人物は・・・・・・・・・ 「あれ?ラン一人?他の皆は?」 忠治だった、しかも手に持っているトンカチでドアを叩こうとしていた。 「あ、皆さん、プールに行ってます」 「ふ~ん、そっかぁ・・・・・」 「忠治さんは、何の御用で?」 「あ、あぁ、ベランダの補強しようと思って・・・・・トンカチの音響くかもしれないから取りあえず連絡を、と思って、管理人さんにはすでに伝えてるから」 「あっ、そうですか、わかりました」 「ランは留守番・・・か、水嫌いなんだっけ?」 「あ、はい・・・・前世の関係で・・・」 ランが答えると、忠治は苦笑して言った。 「ふ~ん、まぁ、人間誰でも嫌いなものあるものだし、まぁ、別に良いんじゃないかな?」 『人間』という単語にランが反応する 「あ、あの・・・ランたちは『人間』じゃ・・・・・」 忠治はランの言葉を無視してさらに言う。 「まぁ、でも水が苦手ってのはなんだかなぁ・・・・・少しずつ慣れて行くべきだと思うけど」 「は・・・はぁ・・・・・・」 「まぁ、徐々にで良いんじゃないかな? まずは顔つけることから、とかさ」 「は、はい、わかりました・・・・」 ランの答えに、忠治は満足げにこくりとうなずく。 「うむ、わかればよろしい・・・・と、その手は?」 ふと、忠治はランの左手の人差し指に巻かれた白い布に気付いた。 「あ、これは・・・この間料理してる時に包丁で切ってしまって」 「ふ~ん・・・・・・・」 忠治はランの左手を取る。 「あ・・・・・・・」 いきなり手を取られ、ランは戸惑う、そのランの様子を無視して忠治が言う。 「指切るといろいろ面倒なんだよね~・・・早めに直さないとね・・・・・・」 といいながら忠治はランの包帯の巻いているところをそっと撫でる。 「あ、あの・・・?忠治さん?」 ランが忠治の行動に頬を染めながら聞いた。 「ん~?」 「何してるんですか?」 「治してる・・・・」 「え?」 「これでよしっ・・・・とと、ご主人様がやってきたみたいだぞ」 忠治はランの手から自分の手を離すと、そう言った。 「えっ!?」 ランは忠治の横をすり抜けて外に出る。 すると、階段を上ってくる悟郎の姿が見えた。 「はぁっ、はぁっ・・・・・・・・ラン・・・大丈夫?」 悟郎は、着いて早々そんな事を言った。 「え?何がですか?」 ランは、何の事かわからず、困惑気味に聞き返す。 「何って・・・・・ツバサから病気って聞いて・・・・・」 悟郎の心配したような表情を見て、 (ツバサちゃんが?) と、ランは頭の上に疑問符を浮かべながら、包帯を巻いた手を差し出した。 「・・・・・・あっ、その・・・指を」 ランは包帯した指を悟郎に見せる。 「へ?そ、そうなんだ・・・・・・・ちょっと、ケガ見せてもらえるかな?」 「は、はい」 そして、ランはするすると指の包帯をほどいていく。 そのランを横目に見ながら、忠治がかすかに笑った。 ランは、包帯を解き終わって、怪我したところを悟郎に見せる。 悟郎は、その手を取って、まじまじと見つめる。 「あ・・・・・・」 悟郎の行動に、ランは頬を紅潮させた。 「ん~・・・・よくわからないなぁ・・・・・どこをケガしたんだい?」 ランの手を見ても、怪我がどこに有るのかわからなかったため、悟郎は本人に聞いてみた。 「あっ、あの、人差し指の先です」 「人差し指の先・・・・・・・・・・・・・・・あれ?ケガなんて無いよ?」 ランの答えを聞いて、人差し指の先を見る、しかしそこにはケガなんて無かった。 「えっ?」 ランは手を引き戻して自分の手を見つめる。 わぁ、綺麗な手。 「ウソ・・・・ケガが消えてる・・・・・・・」 ランは、咄嗟に忠治を見る、先程の不思議な行動のためである。 しかし、忠治はランの視線を無視し、いきなり、 「さ~てと、どうするのかな? お二人さん、一緒にプールでも行ったら?」 「えっ?」 「どうせ悟郎さんはランの迎えに来たんでしょ?一人で留守番はやっぱり心配だから~とか思って」 忠治はずばりと悟郎の行動の理由を言い当てる。 「な・・・・どうしてそこまで・・・・」 悟郎が驚きの表情を浮かべていると、忠治は飄々として言った。 「あれ?本当だったんだ、適当に言ったのに」 「そ、そうなんだ・・・・・・」 「行って来れば?俺は自分の部屋に居るから、鍵しめときゃ泥棒とかも無いでしょ」 「え・・・でもランはお水は・・・・・」 ランが渋っているところを、忠治が諭すように言った。 「ラン・・・・・・・さっき言っただろ?いい機会だ、少しずつ慣れていけばいいさ」 忠治の声に、ランは戸惑いながらも従う。 「・・・・・・・はい、わかりました」 忠治がはにっこりと微笑むと、ランに耳打ちした。 『上手く行ったら水着でご主人様を悩殺できるかもしれないぞ』 ――ボンッ ランの顔が真っ赤に、紅に変化する。 「あっ、あのっ、ランは別にそんな、そんな、そんな・・・・・・・」 ランはしどろもどろになって否定しようとする。 「ハイハイ、そんな状態で何言っても無駄無駄無駄無駄だよ、とっとこ・・・とっとと行って来い」 「あ、ありがとう、忠治君」 「ん~、問題ない」 どこかで聞いた事があるようなセリフを残して忠治は自室に帰っていった。 ちなみにランはいまだに真っ赤になっている。 「・・・・・ラン・・・・?」 「はっ、は、はい、なんでしょうっ」 「さっき彼になんて言われたんだい?」 忠治が何かを言った途端、ランの様子が変わった為、悟郎はランに聞いた。 しかし、その悟郎の行動はランにその言葉を思い出させる結果になった。 「・・・・・・・・・・・・・」 ――ボンッ 再びランの顔が真っ赤になる。 「あっ、言いたくないなら別にいいんだ」 そのランの様子に、悟郎は慌ててそう言った。 「は、はい・・・・・・・・」 「さぁ・・・・・皆も待ってる、行こうか」 「はい・・・・・・」 悟郎はランの手をしっかり握り、プールへと走った。 そして、プールに待っていたミカからの第一発言。 「もうっ、ご主人様~、かってにいなくなって~、ミカ心配したんだからねっ」 ミカがそう言って悟郎に抱きつく、しかしそのミカにツバサがぼそっと言う。 「ジュースごくごく飲んでたくせによく言うよ・・・・・」 「なんですってぇ~~~~?」 「ホントのことでしょ~」 「ふぬぬぬぬぬぬ~」 ホントのことを言われては返す言葉も無く、ミカは呻き声を出すのみになった。 「で、ラン?」 「はい?」 「お水、大丈夫なの?」 ツバサがランを気遣いながらそう言った。 そのツバサの問いを、ランが否定する。 「いえ、でも、少しずつ慣れていこうと思って・・・・・」 「うんっ、偉いっ、それでこそランだっ♪ ついでにご主人様悩殺しちゃえっ」 ランにだけ聞こえるほどの声の小ささでツバサが言った。 しばし沈黙。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ![]() 本日何回目のショートだ? その後、ランは水着を着て、みんなの指導のもと、少しずつ水に慣れていく特訓を行った。 ランの着ていた水着は、赤いレース地で、後ろの腰の部分には、金魚のしっぽを連想させる、ひらひらがついていた。 この水着を見て、悟郎が「綺麗だ」と思わずつぶやき。 「ご主人さま~、ミカは~?」 とミカが言ったため、悟郎が全員の水着を誉めたことは、言うまでもない・・・・・・・・・ |
第12話『愛する人を守るために』に続く