マサラ日記     previous«  »next

2月3日(土)           

 日本は節分、で、スーパーに行ったら節分用といって殻付き落花生を山積みで売っていた。新聞でも、「最近は豆まきした後手軽に食べられるので落花生派が増加中」みたいな記事があったが、ウーム、私としてはやっぱり大豆がいいと思うのだが。

 最近は節分というと恵方巻きを売るが、これはもともとマイナーな関西の風習を日本一のコンビニ・チェーンが利用して、戦略的に広めたもの。まんまと乗せられている消費者は多いようだ。

 土用のウナギもバレンタイン・デイのチョコレートも商業戦略として生まれたもの。それらが季節の風物詩のように仕立てられたのはスゴいことだ。恐るべき販促パワーを見習うべき?

 ネットでさるSNSのページを見ていたら「おいしいブレイン・マサラを東京で食べられる店を教えて」という発言があった。
 こういう質問を私もたまに受けるが、どう答えるべきかたいてい一瞬迷う。
 
 ブレイン・マサラというのはヒツジの脳みそのカレーである。いったんゆでたヒツジの脳みそをマサラで炒め煮して作るが、インドで食べるとたいへんおいしい。


 これは昔、カルカッタのナコダ・モスクというイスラーム寺院の脇にあるムスリム料理店(たしか「ラホール・ホテル」という名前)で食べたブレイン・マサラ。メチャクチャおいしかった。

 本当においしいブレイン・マサラにありつくための必須条件というのがある。それはブレインが生であること。以前、私のムスリム料理の師匠が東京で作ってくれたブレイン・マサラは本場そのものの調理法でシビレたが、ご本人も「フローズンのブレインなので味は違う」といっていた。つまりは、日本で生のブレインは入手不可能なので、どうしたってインド並みの逸品に出会える確率はほとんどないということになるわけだ。

 通常のマトン肉も日本では冷凍しか手に入らないので、厳密にはインド亜大陸で食べるマトンカレーとはどうしたって差が出る。しかし、その差異はブレインやレバーなど内臓系のそれに比べれば、はるかに小さいもの。

 結局、日本の場合、ブレイン・マサラやヒツジの内臓系メニューはあまりお奨めしないということになってしまう。ちょっと悲しいが、まあ、しょうがないだろう。

日記を書いているときのBGM:ダンカン・ブラウンとピーター・ゴッドウィンというふたりが作ったデュオ、メトロの同名アルバム(1976年)。モダーン・ポップというジャンルだが、早すぎたニュー・ウェイブという感じも。デカダンな名盤だ。