マサラ日記     previous«  »next

12月11日(月)           

 朝、九段下のインド大使館に行きビザの申請。ほぼ毎年最低一回やっていることだが、毎回緊張かつウンザリする。

 20年ほど前インドに関わりだした頃、「大使館の中はすでにインドだからビックリしないように」というお達しがインドの先達たちからあった(もうひとつ、「成田にいるエアインディアの機内も、すでにインド」という指摘もあったな)。法律上も治外法権だから日本ではないのは当たり前だが、とにかく一歩入ると、インド的不可解さやルーズさでそこはもう日本ではないのだ。
 これまでも、人が申請しようと多数並んでいるにもかかわらず平気で窓口をほったらかしてチャイ休憩するとか、開いているはずの窓口が閉鎖とか、何の断りもなく年末の繁忙期に突然申請申請業務を連日休むとか、わけのわからない行為でこちらを十二分に狼狽させてくれた。

 本日も随所にインド的不合理さと不可解さを散りばめた挙句、結局朝から2時間待ち。午後5時からの即日交付も本当ならば10分もあれば終了するところ、1時間以上待たされた。

 以前はこういうときキリキリと気持ちが昂ぶったが、今はもう慣れている。「あーあ、またやってるよ」とは思ったが、悠然と構えて処した次第。

 特にインドに行ったら、いちいちこういうことに怒ってもエネルギーの無駄である。何があっても笑ってやりすごす余裕が必要なわけで、本来私のような短気な人間には人間修養にピッタリな土地だと思う。

 インド大使館からいったん戻りゲンナリしたところで、昼メシを地元西荻窪の名店定食屋、坂本屋で食べる。


 同店の名物のひとつで、西荻窪在住の山本益博氏も大絶賛のカツ丼(味噌汁とおしんこが付いて750円)。
 ひとことでいえば、肩に余分な力が抜けた感じ。ことさらにこだわった形跡は無い。それでも、カツは揚げたて、卵の火の通し方も抜群、丼ツユも甘ったるくなくご飯にしみる量もちょうどいい。グリンピースもいいぞ。一口食べて唸ることはないが、一食平らげしばらくしてから「あーあ、おいしかったな、また食べたいな」とじんわりするタイプか。後味が軽いのも印象的だし、グルソー抜きらしい熱い味噌汁のおいしさも特筆モノ。おいしい南インドの庶民派ミールスにも通ずる、平凡なる非凡というべき逸品だった。

 ちなみにカウンターで食べたが、ラーメンスープ用の大きな寸胴にスープがなみなみというのが見えた。ここはラーメンやタンメンもおいしいと聞く。今度いただいてみよう。

 午後は前述のビザ受領のほか、雑事を坦々とこなす。

 夜、ホウレンソウ入りの挽き割り豆カレー、パラク・ダールを作る。


 わざとホウレンソウはザクザクと大きめに切り、煮込み時間も少なくした。あっさりとしてホウレンソウのうまみもよくのり、我ながら美味。

 

 近くのベンガル人料理屋からナーンとガーリック・ナーンをテイク・アウェイ。通称クルチャと呼ばれる丸ナーンスタイルのガーリック・ナーンがこれまた美味。ダールとの相性もよかった。

日記を書いているときのBGM:シタールのマエストロ、VILAYAT KHANのインド盤CD。ラビ・シャンカールのわかりやすい表現とは異なる幽玄的名人芸が深く染みる。