マサラ日記     previous«  »next

9月25日(月)           

 アナログレコードのラックを探して家具屋の人と話していたら、「レコードって今や貴重品ですから、ジャケットにキズや凹みをつけちゃまずいですよね」といわれた。
 レコードは貴重品なのか。そういう意識はなかったので新鮮なフレーズだった。

 私がレコード会社でディレクターをやっていた1980年代中盤はちょうどアナログからCDへの移行期。音にうるさいジャズやクラシックはもちろん、ロック系もCD、アナログ両用で発売されていた。
 また同時に、会社内、業界内では連日「CDとアナログは、どっちがいいか」という議論が大真面目で行われていた。

 CDの創生期では「レコーディング・スタジオの音をそのまま再現」(実際はそうではない)とか「アナログのように針飛びしない」(ご存知のように実際はCDだって音は飛ぶ)、「持ち運びに便利」といったことを売り物にしていた。
 一方では、CD反対派が「ジャケットの楽しみがない」「音に温かみがない」といった論法でアナログレコードの維持を訴えていた。

 私が今もアナログ盤を持っているのは、まだCD化されていないものが多いからだ。特に黒人ブルースやソウルだとその傾向が強い。
 逆にロックだと、例えばデヴィッド・ボウイの『ジギー・スターダスト』でも、今のCDならば未発表テイクもあるし、ジャケットの点を除けばCDで事足りる。
『愛しのレイラ』も、アナログのモコモコで音のヌケが悪いミックスが解消されているので、音だけならばCDの方がいい(ただし、2枚組見開きジャケットの素晴らしさはCDでは再現されない。そこがアナログの魅力?)。

 ところで、うちには12インチ・シングルとか、45回転のミニアルバムなんていうのがけっこうある。
 例えば、国内でいえば、旧日本コロムビア、シャンシャン・レーベルによる近田春夫とビブラトーンズの大名盤などがそう(ルースターズの「ニュルンベルクでささやいて」等も同じシリーズ)。
 これらはオリジナル通りにCD化されたことは皆無で、そういうものを聞きたい場合はアナログの方が有利だ。

 というようなことを書いてはみたものの、やっぱりアナログってマイナーだな。
 引越しが完了したら、少しずつでもアナログをMD、CD、DATなどに移設する作業をしようと思う。


★日記を書いているときのBGM:ジョニー・ウィンター『狂熱のライブ』。たしかこの前の『俺は天才ギタリスト』とかいう、ひどい邦題の素晴らしい作品はまだCD化されていないはず。