マサラ日記     previous«  »next

2月12日(日)
           

 朝起きてから、終日、家の中ですごす。主に原稿書き。

 昼、インド料理以外の仕事上のレシピ製作を兼ねて、カタクチイワシの醤油煮を使った雑穀米炒飯をつくって食べる。これが予想以上においしく正解。
 続いて、オイルサーディンの入った雑穀米のライス・サラダもつくる。雑穀米サラダは、以前シェフをしていた店で出したこともある。予想通りの出来映えでオーケー。

 カタクチイワシというのは、シラスになったり、煮干しになったりもする。マイワシよりスラリとして、サイズも小さい。
 もともとイワシの大産地だった千葉の銚子あたりだと、カタクチのゴマ漬け(酢で締めてゴマと和える)や、卯の花和え(やはり酢締めをおからと和える)などもよく食べるようだか、あいにく、今年はマイワシ、カタクチとも絶不漁。とくにマイワシはまさに高級魚扱いになりつつあるらしい。

 去年までは、頭と内臓を取ったマイワシをまるごと1尾タマリンドで煮込んだカレーをたまにつくったが、最近はそうもいかない(もともとは師の得意技)。白身のメカジキなどとは異なる風味でおいしいのだが(骨がついていることもダシをアップさせる要因)、イワシが高くて困りものである。

 寿司でも、イワシ、アジ、そしてコハダ。青魚は大好きだ。

 日本の場合、肉を食べている人より、魚を買う人の方が経済的に余裕がありそうな気がしてならない。魚の方が食生活上、ぜいたく品ということである。

 昔、カルカッタの裏町の安食堂のオープンキッチンで、鉄板の上でスパイスをつけたカタクチイワシをジュージュー焼いて並べて売っているのに出くわしたことがある。食べなかったし、写真にも撮らなかったが、実においしそうだった。

 トルコやチュニジアでマイワシを炭火で焼いたやつを食べたが、それらもバカウマだった。
 チュニジアだとボラみたいな魚もおなじようにして食べたが、どちらもイケた。
 魚の身をほぐしながら、クミン・シードとおろしニンニク、それにちょっとレモンを混ぜたペーストみたいのをのっけて食べるのだが、かなりハマる味わい。ビールもすすんだ。

 そういえば、私の師である南インド人シェフによる大昔の「アジャンタ」のまかないで、焼き魚をつくる調理法がスゴかった。
 たしかアジの開きだったが、厨房に焼き網があるにも関わらず、シェフは中華鍋に油を引いて、そこに開きを入れて、揚げるように焼くのだった。
 できあがりはクリスピーで香ばしく、意外なくらいにイケた。たしか、レモンをギュッと搾ったはずだ。そのあたりもいかにもインドッぽかった。
 その後、何度か得意げに家でマネして、おなじ調理法のアジの開きを食べた覚えがある。中華鍋に魚のにおいがつくのがイヤで、そのうちやめたような気がするが。

(日記を書いているときのBGM:またもクレイジー・ケン・バンドの『青山246深夜族の夜』。1曲目の「ハンサムなプレイボーイ」って白洲次郎のことかと思ったが…)