マサラ日記     previous«  »next

12月26日(月)

 昼間の仕事が終了後、私の師匠、そして、さるインド料理店の敏腕シェフと秋葉原で待ち合わせ。今や国際的なスポットのカレー散策に出かけた。

 一軒目、ネットで評判のいい店に入る。
 メニューは豊富だ。パコラ(ヒヨコマメの衣の天ぷら風スナック)にしても野菜のほか、チキン、エビ、チーズと揃っている。

 と、メニューを眺める我々3人の目が1点に釘付けになった。ポークのカレーがあるのだ。これはまずい。インド料理でポークはないだろう。しかも、連れの2人はイスラム教徒である。
 ふたりは「インド料理店を名乗る以上、ビーフとポークのメニューはあってはダメ。ヒンドゥ、イスラム両方の人たちが食べられない」というが、まったくごもっとも。

 結局、スターターにサモサ、チキン・ティッカ(タンドゥール料理のチェックに最良なタンドゥーリ・チキンが、何とディナー・タイムもまだ早い夜7時に売り切れだという。苦笑いしてティッカに変更)、フィッシュ・ティッカ(シーク・カバーブの肉が何かを聞いたら、マトンとチキンのミックスとのこと。シーク・カバーブはマトン100パーセントというのが鉄則だから即却下、それでシーフードのタンドゥール料理になった)、カレーがチャナ・マサラ、ダール・マッカーニー、さらにアールー・ゴービーを頼んだら「ない」といわれたので(これまた苦笑)シュリンブ・バター・マサラ、それにナーン。

 もうこの時点で味の想像はついたし、だいたいポークがある段階で腰が引けていたが、現実は想像を軽く上回っていた。香りのないタンドゥール、パサパサの魚、味のないチャトニ、辛いだけでやはり風味のないカレー、恐るべき形をしたナーン。いうべきことは何もない。

 続いて、新しくできたヨドバシカメラの中にあるインド料理店へ行ってみた。
 ここでも得がたい体験が我々を待っていた。何と「タンドゥール」を使わない「タンドゥーリ・チキン」や「タンドゥーリ・シュリンブ」に出会ってしまったのだ。オーブンで焼いて「タンドゥール」はないだろう。タンドゥール風にしろよ。しかも紛らわしいことにナーンは店頭のタンドゥールで焼いている。ふつうのお客様は、当然、「タンドゥーリ・チキン」もタンドゥールから出てきたと思うはず。ヒドい店である。

 3人して、2店ともえらいものに出会ったという感想で一致。とにかく、えらく後味がわるい。日頃、一部日本のインド料理店の荒廃ぶりを嘆く我々だが、予想を上回る実情にあきれかえった。

(日記を書いているときのBGM:エドガー・ウィンター・グループの『恐怖のショック療法』。名曲ぞろいの名盤で口直しである)