マサラ日記     previous«  »next

11月9日(水)

 夜、打合せで池袋のパキスタン料理店に行く。
「チキン・カライ(骨付きチキンのトマトベース・スパイス煮込み)」「マトン・ビリヤニ(マトンのスパイス煮込み入り炊き込みご飯)」「シャミ・カバーブ(マトンとチャナ・ダールのシルキーなハンバーグ仕立て)」などをいただいたが、とりわけおもしろかったのが「本日のダール(挽き割り豆の煮込み)」。

 ふつう、南インドならばムング・ダール、北インドならばやはりムングかチャナ・ダールあたりを使うのが、日本にあるインド系料理店の姿だが、今夜この店は「ウラド・ダール」の煮込みで迫ってきた。これはめずらしいことだ。

 ウラド・ダールというのは、南インドで「ドーサ(クレープのような軽食)」「イドゥリ(蒸しパンのような軽食)」「ワダ(甘くないドーナツのような軽食)」などの材料となる。またカレーやマサラ、ポリヤル(野菜のスパイス炒め)をつくる際、生のまま油で炒めて、独特の食感や風味を生かす。逆にいえば、あまり煮込みカレーには使わない。

 これをダールにするのは、北インドやパキスタンのイスラームの人々が多い。煮込むとトロッとした粘りが出て、日本人には好き嫌いがはっきり分かれる。ムングダールのようなわかりやすい風味とは対極にあるカレーだ。しかも、インドのダール・カレーにはない辛さ(アーンドラ・プラディシュ州のダールは辛かったが)。

 今日打ち合わせに参加した方々には受けていた。私も、ひさしぶりに食べた感じ。たまにはこういうダールもいい。

 インド亜大陸料理の奥深さを再認識する夜だった。