マサラ日記     previous«  »next

11月2日(水)

 新宿の伊勢丹前を通りかかったら、クリスマスのディスプレイ。もうこんな季節かという感じだ。これから、どんどん気ぜわしくなって、忘年会だ、クリスマスだ、年越しだ、みたいな日本的な年の瀬を迎えるのかと思うと、治るべき風邪も治らない気分になる(本日、風邪で体中がダルいのだ)。

 デリーでの連続爆発に続いて、ジャム・カシミール州で自爆テロだという。ディワリにラマダン明けだというのに、ラブ・アンド・ピースな世の中とはいかないようで、これまた気分が晴れない。

 秋の味覚できのこがたくさん出回っているが、インド料理できのこ類は超マイナーな食材のひとつである。日本だと、インド料理店に「マッシュルームとグリンピースのカレー」なんてのがあるが、本場だと、高級レストランやホテルにそうしたメニューはあるにせよ、多くの地域、多くのコミュニティーではめったに口にしない類の献立となっている。

 ベジタリアンのインド人、とくにヨガのスワミ(導師だ)などが私にケータリングや出張料理を依頼する際、「たまねぎ、にんにく、それにきのこはメニューからはずしてくれ」とほぼ必ずいわれる。それくらい、きのこはベジタリアンにとってノンベジ的な食材だといえる(独特の香り、肉にも通ずる食感、ジメジメしたところに寄生的なムードで生えていることなどが忌避の理由か)。

 そんな中、キヌガサタケの一種を名物食材にしているのがカシミール地方(「カシミア」の語源でもある)。私はカシミールではなくデリーで食べただけだが、いいのに当たると香りがよくて、なかなかイケる。カレーのほか、炊き込みご飯などにもする。乾燥したのを戻して使うことが多いが、とにかくえらく高価らしい(一説に乾燥品1キロで3万円以上!)。

 日本だと、缶詰めのマッシュルームをトマトっぽいグレービーでチャッチャッと炒めただけのカレーがよく供される。私としては、もっともオーダーしてはいけないメニューのひとつとして警戒している。

 ところで、ツェッペリンの名曲「カシミール」はぜんぜんカシミールっぽくも、あるいはインドっぽくもなく、むしろ中近東ぽいといわれる。なぜそうなったのか謎である。

(日記を書いているときのBGM:サンジェイ・スブラマニヤンのカルナティックボーカル・カセット)