マサラ日記     previous«  »next

8月25日(木)

 1週間ほど前。近くの書店から、私のオーダーしておいた扶桑社の出しているEn-Taxiという雑誌のバックナンバー2冊が入荷したとの連絡。さっそく購入して、引き込まれながら読んだ。

 そのうちの1冊は、文藝春秋の名物編集者として文芸誌のほか、『くりま』という超個性的で豪奢、しかも短命だったグルメ雑誌の先駆けを世に送り出し、その後、フリーで『ベスト・オブ・ラーメン』(名店のラーメンのカラー写真を原寸大で上から撮るという手法が斬新だった。同じシリーズで丼どもあり、一度は手にとったことのある方は多いことと思う)などの斬新な企画をヒットさせた里見真三という人(故人)の特集がお目当て。玉村豊男氏や丸元淑生氏といった関係者の原稿がいいし、自分の人生を考える上でもいろいろためになった。

 もう1冊は、2004年に復活したルースターズ、とくに大江慎也氏の特集。これもおもしろかった。私と同世代で気鋭の評論家、福田和也氏の文などかなり読ませる。福田氏はルックスに似合わず(失礼)、ロバート・クワイン、ジェイムス・ウィリアムソン(イギー・ポップの最強時代を支えたギタリスト、私は一時期、彼の音をすべてコピーしようとやってみたことがある。今は音楽界を引退し、IT野郎になっている。その潔さもマル)、ブライアン・ジェイムス(ダムドのオリジナル・メンバー)を自分にとっての3大ギタリストなどとおっしゃっていて、私と趣味がよく似ている。もちろん、大江氏の独白もある。

 復活後のルースターズは、20年前の孤高な全盛期を知る者にとっては、まるでものたりない存在だが、En-Taxiみたいな雑誌(いちおう文芸誌?)が大江氏をとりあげたこと自体が、ある意味画期的なのである。

 どちらも、特集のボリュームが少ないのが難点。まあ、いろいろなものを盛り込んだ方が、何かと飽きやすい現代の読者には受けるという傾向が強いのだろうし、しょうがないかもしれないが、もう少し頑張ってほしかった。

 ちなみに、最近のベストセラー、リリー・フランキー氏の『東京タワー』という本も、もともとはEn-Taxiの連載だった。
 文芸プラス・サブカルという切り口で、80年代初期の宝島をグッと偏差値アップさせた感もある。私の書いたような事柄に興味のある方はぜひご一読を。