マサラ日記     previous«  »next

8月16日(火)

 昼前、大きな地震があった。病院にいたが、エレベーターが止まったりして、周囲の人々は皆顔がひきつっていた。

 病院から出たら、今度はスコールのようなザーザー降りの雨。アジアっぽい雰囲気にしばし心なごむ。というのはウソで、こんな降り方は迷惑。とりあえずは、かさを持っていてラッキーだった。

 昨日の日記にスリランカ料理のことを書いたので、その後、新宿西口に行ったついでに「コートロッジ」へ。

 13時前に行ったが、店内は満席。パリプ(インドのダール)とお好みのカレーが1種、ゴダンバかライス、サラダがつく800円のランチをオーダー。
 左下のパンみたいのがゴダンバ。南インドで「パロータ」とか「セイロン・パロータ」「ケララ・パロータ」などと呼ばれるものによく似ている。全粒粉ではなく精白した小麦粉を使い、北インドのパラタ同様、生地にクロワッサンのような層を幾重にもつくって、それを薄く伸ばしてから鉄板で焼き上げる(間違ってもタンドゥールは使わない。ただし北インドのパラタはタンドゥールでも焼く)。この店では製造過程が目撃できて楽しい。
 南インドの方がサクサクとしているのに対して、この店のはモッチリとしている。私はもっとサクサクが好みだが、これはこれでおいしい。ナーンひとつの味わいにしても、インド、日本、そのほか世界中でいろいろあるのと同じである。

 カレーで要チェックなのは、やはりパリプ(ダール)。豆はチャナ・ダール。写真ではわからないかもしれないが、ココナッツミルクがたっぷりと使われている。インドではケララ以外あまりお目にかからないタイプのものだ(ケララのダールにしても、ココナッツを使わない方がふつうだろう)。
 私はもうひとつのカレーにマトンをオーダーしたが、これは南インドのそれに似ている。というか、昔修業した「アジャンタ」のマトンカレーをよりスープっぽくした感じ(アジャンタのはけっこう辛いが、この店はかなりマイルド)。私には妙になつかしい味わいだった。

 もともと小麦がとれないはずのスリランカ、ゴダンバは米よりずっと後に、アッパム(スリランカではホッパー、アーッパなどと呼ばれる)、イディヤパン(スリランカではストリング・ホッパーなど)などとともにケララから伝来したのではなかろうか(アッパムやイディヤパンには小麦は使わない。あくまでケララ起源というお話だ)。
 パリプ、マトンとも、ごはんにもよく合う味わいであった。

 ランチの後、仕事で六本木の明治屋ストアに行く。近くのほかのスーパーが本日休みらしく、本来の客層ではない人々も来店中らしい(店内のお客様同志の会話から類推)。
 そんな中、あきらかに明治屋や紀ノ国屋的でない若い男女の会話。
「このルッコラって、ほうれんそう?」by男
「さあ? 行こう行こう、ここ高いから」by女
 完全にバカップルである。