マサラ日記     previous«  »next

4月13日(水)

 昼に日本橋方面の中華料理屋で「鶏の唐辛子炒め定食」を食べる。小さくカットしたトリモモをやはり小さく刻んだにんじん、たけのこ、ピーマンなどと炒めた主菜は辛くて風味もよく、なかなかおいしい。ほかにも麻婆豆腐やホイコーローなど四川系の料理が多いので、帰り際、店の人(中国人)に「専門は四川料理ですか?」とたずねたら、ピシッとはっきり「北京料理です」と答えられた。「ちょっとまずいことをいったかな」とも思ったが、とりあえず「またきます」みたいなことをいって、一応ニコニコしつつ店を出た。

 中国の人もインド人に劣らず、料理に関する郷土意識が強い。たとえば同じ四川でも重慶と成都ではスタイルが違うらしく、板橋の某名店マダムからは「うちは成都の家庭の味よ。重慶じゃないからね」と念押しされた覚えがある。
 
 もちろんインド人も同様だ。日本で南インド出身料理関係者と北インドのナーンとかタンドゥーリ・チキンを食べると「やっぱり、ドーサやチェティナッド・チキンの方がうまい」といわれることがあるし、だいたいそういうものを食べること自体に拒絶感を持たれることが少なくない。もちろん逆もありで、ちょっと複雑な例としては、南インド人料理人のつくったバターチキンを、北インド料理のシェフと食べると「これは違うんだよね」と冷ややかにいわれたりする(要するに「南インド料理人は、真の北インド料理を知らない」といいたいわけだ)。
 沖縄の人といっしょに、「なんちゃって」なチャンプルーを食べ、うまいなどと口走り軽蔑される図を想像していただきたい。そんな感じだ。

 料理は文化や伝統でもある。無闇に萎縮する必要はないが、ある程度のバックグラウンドや系統的な知識を知っていた方が、よりおいしくなることは少なくない。何事にせよ勉強は大事ということだ。