<La Vita Italiana   2006年9月号>

5年ぶりのモンテプルチアーノ



2006年8月、思い出の地、イタリア・トスカーナ州のモンテプルチアーノを再訪しました!

こ の数年来、イタリアの友人たちに「いつ来るの?」と言われ続け、もちろん私自身も「早く行きたい、トスカーナの景色が見たい」と思いながらも、なかなか余 裕がなく・・、ふと気が付くと5年の月日が過ぎていました。最後にイタリアを訪れたのは、まだリラが流通していた2001年夏のこと。帰国の時、サイフに たった1個残った200リラのコインをそのままにして、「このコインが使えるうちに、またイタリアを再訪できますように」と祈ったというのに、結局、その まま時は流れ・・、その間、我が家がおかれた環境はずいぶん変わりました。

モンテプルチアーノの幼稚園に通っていた息子は、今や中学生。夫 はますます忙しくなり、私はと言えば、目の前の仕事をこなしながら、イタリア語のレッスンに通う日々。大きな変化といえば、昨年夏に思いがけず、モンテプ ルチアーノでの体験をまとめた本を出版することが出来たことくらいでした。ただ、それを機に、私のなかで「いい思い出」となってしまっていたモンテプルチ アーノへの想いが、再びむくむくとふくらみ、もう一度ゆっくりあの街で過ごしたい、お世話になった人たちに直接、本を手渡してお礼が言いたい・・、と思うようになったのです。

実 は、今回は初めてのトスカーナ一人暮らしでした。というのも、家族3人のスケジュールを調整するのが思いのほか難しく、私は思い切って一人で先に旅立つこ とにしたのです。夫・息子とは現地合流にして、それまでは語学学校「イル・サッソ」に通ってイタリア語のブラッシュアップに励もう、というもくろみでし た。


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私がモンテプルチアーノを訪れた8月2日、すでに街は夏の最後を飾る伝統の祭りを前に色鮮やかに装いを変えていました。

観光客が街を行き交い、夏場ならではの華やかさ。この感じ・・、変わらないなぁ、と懐かしく思ったものの、すぐに気が付きました。チェ ントロ(旧市街)の通りに見知らぬ店がずいぶん増えています。街を行きかう観光客の雰囲気も何か違っています。かつてこの街に大挙して押し寄せていたのは ドイツ人でしたが、今、目立つのはアメリカ人! 街のあちこちから英語が聞こえ、店先の看板やメニューにも、もはや当然のことのように、英語があふれてい ます。以前は「英語なんて話せないし、話す必要もない」って言っていた人も多かったのに、必要に迫られて仕方なくなのか、それとも多少はビジネス感覚が強くなったのか・・。

そ れだけではありません。小さな田舎街のモンテプルチアーノに中華料理店が出来、メルカート(露天市)には中国人が経営する店が何軒も登場。まだ市内に住ん でいる中国人は多くはないようですが、同じトスカーナ州のフィレンツエやプラートの繊維業界が中国人労働者の急増で大打撃を受けていることもあって、友人 知人とおしゃべりに花を咲かせていると、必ずといっていいほど中国人にまつわる話が出てきて・・、そこにはなんともいえない微妙な空気が漂うのでした。

モ ンテプルチアーノが変わったか変わっていないかといえば、やはり「変わった」というのが事実。勝手な意見であることを承知の上で、正直なところを言えば、 そのことに私自身がほんの少し寂しさを感じてしまったことも確かです。それでも、街を包み込む雰囲気は、かつてと同じように優しく穏やかで、時の流れも ゆっくり・ゆったり!

この街で、勉強をしたり、散歩をしたり、友人たちと食事を楽しんだりしているうちに、私はどんどん気持ちがラクに なっていきました。少し前まで、しかめっ面をして頭を抱えていたのがウソのよう! 何をイライラしていたんだろう、何を悩み考え込んでいたんだろう、と自 分でも笑ってしまうほど。少しずつですが、気持ちにゆとりを持てるようになったのでした。この数年来、反抗期を迎えた息子や仕事の問題で、強張ってゆくば かりだった私のココロを、モンテプルチアーノはゆっくりときほぐしてくれました。やっぱり私はこの街が好き! 私にとって、とても大切な、特別な場所で す・・。


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5年ぶりの再訪の感想はあまりにも複雑で・・、とても簡単に表現することは出来ませんが、現地で感じたことをこれから少しずつご紹介していきたいと思っています。お時間のあるときに読んで頂ければ幸いです。

トスカーナを撮影ドライブ!


 

今回のモンテプルチアーノ滞在では、現地にお住まいのマッシモ&トモコご夫妻のご案内で、トスカーナ”撮影”ドライブを楽しみました。

実 は、以前、レンタカーを借りて、トスカーナ各地をドライブしたことはあるのですが・・、夫は調子に乗ってスリリングな運転をするし、私は横でハラハラする し、で、それなりに疲れたのも確か。そこで今回は「運転」より「撮影」を楽しもう、というわけで、ガイドをお願いすることにしました。おおまかなルートだ け決めて朝早く出発し、あとは地元をよく知るご夫妻にアドバイスしてもらいながらその時々の気分で決める、という「わがまま放題」の撮影ドライブ。でも、 そのお陰で、家族みんなが思う存分トスカーナの景色を楽しみ、写真撮影にいそしむことができました。

真夏のトスカーナは、まばゆいばかり の太陽に照らされて、光り輝いていました。広々とした丘陵地がどこまでも続き、大地には雲の影がくっきり。そして、そのところどころには、トスカーナの象 徴とも言える「チプレッソ(糸杉)」が姿をのぞかせています。チプレッソは道の両側に規則正しく並んでいたり、束のように固まって植えられていたり、たっ た一本だけポツンと立っていたり・・。でも、すべてが絵になる光景で、美しいったら! しかも、その日の光の加減や風や湿気で、少しずつ微妙に表情を変え るから、見ていて飽きることがありませんでした。改めて、「あぁ、今私はトスカーナにいるんだなぁ〜」としみじみ思った次第。

ちなみに、糸 杉があまりにも美しく、コントラストよく存在しているから、私は「見た目を気にするイタリア人が植えたのだから、デザインをあらかじめ考えていたのに違い ない!」なんて思っていたのですが、実は、ちゃんと「意味」があるのだとか。トモコさんによると、1本だけポツンと植えられているのは土地の境界線などの 「目印」として、また 束になって植えられているのは「鳥類の狩り」のためで、ハンターは糸杉の林に身を隠して自分が連れてきた鳥を放し、その鳴き声に誘われて近くにやってきた 鳥を仕留めるのめなのだそうです。もっとも今は禁止されていますが。

でもね〜、「ここにチプレッソがあればキレイだから!」と思って植えた人も絶対いたに違いない、と、私はひそかに思っています!
だって、イタリア人って、そういうところあるんだもの・・。


なお、撮影ドライブの成果は、最近、立ち上げたブログに随時、掲載しています。ご興味がおありでしたら、ぜひご覧下さい。

ブログ「トスカーナで・・、ピアノ・ピアーノ」

 http://eri-isshiki.at.webry.info

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ちなみに、お二人はトスカ−ナ地方を中心に「個人案内&旅のコーディネイト」をされています。わがままでオリジナルな旅を楽しみたい方にはぜひオススメします。リクエストに答えるだけでなく、色々な提案もしてくれますよ〜!

HP「トスカーナ優雅な田園滞在のススメ」

 http://www.tabitoscana.com/

ブログ「オリーブとブドウ畑の間で」 (8/18 朝の光に包まれたオルチャの谷へ)

 http://tlifestyle.exblog.jp/pg/blog.asp?eid=f0062510&iid=&acv=&dif=&opt=2&srl=3173013&dte=2006%2D08%2D24+18%3A50%3A00%2E000