ジャンボ! アフリカ 〜6。フレッドさんは名ドライバー〜

 

 しかし、私のドライバー・フレッドさんは名ドライバーだった。旅を終えて彼がいかに優秀なドライバーであったかを実感し、旅が順調にいったのは彼の力が大きいと感謝している。
 彼はマサイ族出身の青年で、カロラインさん曰くシャイであまり喋らないとのこと。私も珍グリッシュしか喋れないから、あまり彼と話す機会がなかったけど、各地でのサファリドライブの後、「アサンテサナ!(スワヒリ語でありがとうございます)フレッドさんのおかげでたくさんの動物が見ることが出来て嬉しかった!」と言うと、シャイな彼の顔がクシャッとつぶれて満面の笑顔となり、ガッチリ握手し返してきて、「カリブ!(どういたしまして)」と答えてくれる。純朴で素敵な笑顔、それだけで十分だった。
 
 ケニアの道路は幹線道路以外未舗装で、しかも舗装されている場所でもなぜか穴ぼこだらけの悪路が多い。特にマサイマラまでの道は、道路の左右真ん中どこにでも数メートルとあけずにボコボコ穴があいており、その道をひたすらガタガタ揺れながら進むので、いかに車酔いしない人間でも閉口する。(カロラインさん曰く「穴があいても直す人もお金もない」)
 さらに、国立公園や保護区内はもちろん、その周りの道は日本と違って整備の不十分なオフロードの道が続く。砂埃だけでなく、石ころが飛んでくる危険だってある。実際、この旅の途中でも、フロントガラスに大きな蜘蛛の巣状のヒビが入ったサファ リカーを見かけた。また、パンクするサファリカーの話もよく聞くし、これもまたマサイマラからナイロビに帰る途中、パンクしてお客と荷物を全て降ろし、修理しているサファリカーも見かけた。
 後にマサイマラでは、一度激しいスコールの後サファリドライブに出掛けたが、何台もの車が道の途中に出来たぬかるみにはまり、身動きが出来なくなって、他の車に応援を求めている姿を見かけた。
 
 だが、フレッドさんの運転する車は一度も事故もパンクも起こさず、ぬかるみの道を通ってもはまらず、危険と判断したら安全と思われる道に進んで、彼の運転に微塵の不安も感じなかった。
 しかし、彼は運転テクニックだけではなく、もっと素晴らしい能力も持っているのだ。真の力はサファリドライブで発揮されていく…。