ジャンボ! アフリカ 〜32.最後のサファリドライブへ〜

 

 昼食の後は、テントの前のデッキチェアに座って本を読んだり、お昼寝したりする。
 昨日洗ったズボンがなかなか乾かないので、テント前の木にかけて干していたら、サバンナモンキーの親子一行がやってきて、子猿がズボンを引っ張り出した。「あ〜っ!!ダメダメ!」と思わず叫んで近づいたら、いきなり母親猿の牽制攻撃にあい、いきなり足首をカプリと噛まれた。「わ〜!ごめん、ごめん!」慌ててテントに逃げ帰る。その日限定の小さな歯形がついていた。

 16時、いよいよ最後のサファリドライブである。旅が始まった時は長いような気がして、旅に終わりが来ることを想像できなかった。でも、明日の早朝にはここを出発し、ナイロビに戻って帰国の途につく。なんか信じられない。そして帰りたくない。

 今日は、昨日のような激しいスコールにも見舞われず、少々雲は多いが穏やかな夕暮れに近づいたサバンナへと出発する。

 出発してすぐ、2頭のマサイキリン発見!1頭は優雅に側対歩で歩いているが、1頭は上手に足を折り曲げ、草原の中に座り込んでいる。ゆったりリラックスしている。座った姿勢でも首が長いから、遠くからでも「キリンだ!」ってわかる。

 しばらく、車を進めると、今度はフレッドさんがチーターを発見!
 20〜30メートルの距離をおいて2頭のチーターがいる。そして、それぞれの視線の先には、それぞれ1頭ずつトムソンガゼルがいる。アンボセリの時のように、ここでもハンティングの機会を狙っているチーターと出会えたわけだ。ただアンボセリと違い、ここはチーターの身を隠すほどの丈の草はない。ほとんどお互い丸見え状態だ。
 2頭がどうやってハンティングを仕掛けるのか、1頭ずつそれぞれが襲うのか、それとも1頭のトムソンガゼルを2頭のチーターが共同作業で襲うのか、興味津々。しばらく車を停めて見ることになる。

 1頭の方はゆっくり寝そべって、リラックスしているようだ。寝転がってゴロゴロしたり、トムソンガゼルとは違う方向に頭を向けたりしている。しかし、絶えず耳をピクピク動かし、時々長〜い尻尾を持ち上げてパタパタしているところをみると、臨戦体勢なのだろうか。もう1頭はおすわりの体勢で、トムソンガゼルの方を見るともなしに向いている。
 嗚呼。しかし、ここでも憐れ狙われた2頭のトムソンガゼルはそれぞれに固まってしまっている。

 固唾を飲んで、この緊迫した雰囲気を見守りながら、ハンティングの時を待つ。…が、今日もチーターはなかなか仕掛けない。“トムソン君には悪いけど、行け!チーター、行くんだ!”と、心の中でハッパをかけるが動きはない。

 20分以上待ってみたが動きがないし、他の動物も見たいので諦めてその場を離れることにした。

 少し走ると、今度はオスライオンの後姿発見。前に回り込もうと道を進むが、ライオンと車の間には、昨日の雨で出来たぬかるみが残っており、ぬかるみの手前でフレッドさんが車を停める。そして少し考え、申し訳なさそうにここを通るのは無理だと言う。他に道はない。でも、はまってしまって時間をロスするよりはましだ。ライオンの後姿だけを拝んで引き返す。

 しばらく、トムソンガゼルやインパラ、トピ、イボイノシシなどを見ながら走っていると、何台か車が集まっている所を発見。近づいていってみると、小さい子供を抱えたチーターの母親が草むらの中に座り込んでいた。草むらの陰で見えにくかったが、赤ちゃんチーターぶち可愛い♪(=^・^=)ミャ〜。猫みたいだ。

 そして、さっき会った2頭のチーターの所に戻ってみるが、状況はほとんど変わっていなかった。どうやら、今日は襲わないのか?

 やがて、刻々と終わりの時が近づく。名残惜しいけどもう帰らないといけないのか…と、思い始めた矢先、道のずっと左側に、低い木立を背にして座っている1頭のオスライオンが目に入った。
 「シンバ!!」と思わず叫んでしまったが、フレッドさんもハンドル切って車をそちらの方に走らせ、ライオンから5メートル位の所まで近づいてくれる。

 どうやらさっきとはまた違うオスライオンのようだ。
 立派なタテガミを持ち、堂々と構えている。…と思ったら、前脚で顔をゴシゴシ、ついでにその前脚をペロリと舐める。ワハハ、可愛いね〜。と思っていたら、今度は大きな口をあけてアクビを始めた。この姿に、カロもフレッドさんも大笑いしている。う〜ん、百獣の王ライオンキングもアクビをするんですね。 

 腹ばいで寝そべったまま、首だけ持ち上げて辺りを時々動かすが、私達の車を気にする風もなく、動かない…と思ったら、突然スックリ立ち上がった。オオォ!カッコイイ!!
 だけど、何だ何だ?どうやら停まっている私達の車を見つけた他の車数台が、何事かと押し寄せてきたのが気になったらしい。
 けれど、さすがライオン、動じない。車が近づいてきたのを確認すると、再びその場に座ってしまった。

 ライオンの向きが変わって表情が見えにくくなったので、私たちも帰ることにする。
 帰る途中、1頭のハイエナと会う。彼(彼女?)もねぐらに帰る途中なのか?辺りはだんだん薄暗くなってきて、ハイエナの姿にもなぜか哀愁漂っていた。

 今回は予定の2時間を30分以上もオーバーして走ってくれていた。フレッドさん、本当にありがとう!!!