ジャンボ! アフリカ 〜30.サバンナの酔っ払い〜

 

 バルーンから降りると、待ち構えていた赤いつなぎのスタッフ達がテキパキとバルーン回収作業を始める。
 そして、目の前の草原には、すでにテーブルと椅子がセッティングしてあり、テーブルの向こうの台でコックさんがオムレツを焼く準備をして待っている。ここで、世界一豪華なブレックファーストを食べるのだ。

 …と、その前にまずはシャンパンで乾杯である。
 グラスが配られ、ボーイさんがシャンパンを注いでくれる。それからMrアンドリューとバルーンに乗った者全員で乾杯だ。

 向こうの台にはホカホカのパンや焼きたてソーセージ、ホクホクポテトがあり、コックさんに頼めばいつものように目の前でオムレツを作ってくれる。
 朝日を浴びながら、清々しい空気と一緒に大草原の真っ只中で豪華な朝食、すんごい贅沢です。バルーンも楽しかったけど、この朝食も楽しかった。
 食事がすむと、Mrアンドリュー直筆サイン入りの飛行証明書を、1人ずつ名前を呼んで手渡ししてくれる。
 その後は、みんなでジープに乗ってロッジに戻るのだ。

 んっがっ。朝のすきっ腹にシャンパンを一気飲みしたのがこたえたのだろう。自分で酔っ払ってきたような気がする。

 ジープは、最初は道なき草原を疾走する。ちょっと揺れる。それでも、隣になったMrアンドリューが座席の上に立てと言う。かっ飛ばすジープの座席の上に立った方が周りもよく見えるし、面白いというのだ。なので、靴を脱いで上がる。車から振り落とされないように、普段は幌がつけられているだろう鉄の細いパイプにしがみつく。う〜ん、車が疾走するとともに前からやって来る風が気持ちいい。
 途中、イボイノシシやダチョウ、インパラなどが見える。前にいたマーティンが、「あれは日本語で何と言うの?」と聞いてくる。

 楽しい。楽しくて思わずヘラヘラ笑ってしまう…。
 んがっ。ジープの振動が結構体にこたえる。シャンパンが全身に回ってくる。回る、まわる、グルグルグル…。
 毎晩飲むタスカービールはちっともこたえなかったというのに、たった2杯のシャンパンでノックアウトされそうだった。気分は悪くならなかったけど、ロッジに着いてジープから降りた私はフラフラ千鳥足だった。(自分で、“ほぇ〜、これが千鳥足か”と思った)

 当然顔も真っ赤になっていたようだ。
 ロッジの食堂にいたカロの所に行き、「おかえり〜」「ただいま〜」と言っていたらMrアンドリューもいた。彼とカロは知り合いらしく、しばらく話していたが、やがて何を思ったか突然、Mrアンドリューが私のほっぺたを触って言った。
「赤いね。ちゃんとサンブロックしてるかい?」
 …違います。これは日焼けじゃなくて、酔っ払いなんです。(爆)