ジャンボ! アフリカ 〜29.気球に乗ってどこまでも〜
…って歌がありましたね。私は生まれて初めての熱気球体験を、このマサイマラで行いました!! この旅を決める前から、マサイマラでのバルーンサファリに心は強く惹かれ、絶対乗ると決めていた。 1時間ほどのフライトでお一人様5万円という料金にもちょっとはビビッたが、ここでしか出来ない体験、何よりも大空に飛び立つというワクワクするような期待感は抑えられない。迷わず日本から申し込んで旅に出た。(ちなみにロッジでも前日夜までなら直接申し込めるそうでお一人様385ドルでした) バルーンサファリで事故が起こり、身体障害者になられた人の話も聞いた。バルーンに乗る前日には、あらためてバルーンサファリの受付で“事故が起こって例え死亡しても責任の追及はしない”といった旨の書かれた書類にサインする時は、さすがに親の顔が浮かんだが、やっぱり空の上へと心が飛んでいってしまった。 それなのに、日本から申し込んでお金も払って出発したのに、ナイロビに着いた日、稲野辺さんに「予定している22日は人数が集まらなくて飛ばないかもしれない。最悪、帰る日の23日に飛ぶだろうが、後の行程が厳しくなってしまうだろう」と言われて、ケニア入りしてからは“バルーン飛んでくれ〜!”とばかり考えていた。(もちろん天候不良で飛ばないこともあるので、本当に当日行ってみないとわからない状態ではあったのです。) マサイマラでも、バルーンサファリをやっているロッジは限られていて、フィグツリーはその1つである。バルーンをあげるのは気温が低く、風のない早朝に限られるため、22日は6時にレセプション前に集合、6時半出発となった。 6時半、ロッジのスタッフに連れられ、歩いて数分の広場に連れて行かれる。日の出直前の薄暗がりの中、赤いつなぎの作業服を着たマサイのスタッフが数人集まって、気球を上げる準備をしている。バルーンはすでにほとんど膨らみ、空に向かってむっくり起き上がろうとしているところだった。 着いたらすぐに、ゴンドラバスケットの中に乗り込めと言われる。 乗り込んだら、すでにこのバルーンのパイロットであるMrアンドリューが乗り込んでいてバーナーの調節を行っている。彼はバルーンスタッフでは唯一の外人、イングランド出身だが、ここでバルーンを飛ばすのが気に入って住みついているらしい。中年の渋みが漂う男前のジェントルマンである。 一緒に乗るのは、オーストラリアから来た男の子2人女の子4人の若者グループで、マイク、スティーブン、マーティン、サニー(後2人は名前忘れた、ゴメン)と言うそうな。 乗り込んだら、すぐにMrアンドリューが着陸の時の姿勢を説明してくれる。唯一の日本人の私に彼の英語の説明が伝わっているかどうか確認するため、わざわざその姿勢をとらされた。空中に出てからも、眼下に見える動物達の説明をする時、私に向かってわざわざ日本語で「ダチョウ!」「カバ!」「イボイノシシ!」と言ってくれた。 バスケットに乗り込んで着陸態勢の確認をしたらすぐに、バルーンは静かに、引力にさからうことなくスルスルと地面を離れていった。“あれ?!いつのまに離陸したの?”とわからないくらい、あっさりしたものだった。そして、みるみるまに木の高さになり、さらには木を見下ろすようになりと、グングン上空へ昇って行く。 朝方は冷え込むと思ってフリースを着込んでいたが、バルーンの上ではバーナーが焚かれ、その熱風が感じられるため思ったほどは寒くない。そしてバーナーを焚く時のゴーゴーという音が凄い。 ほとんど風がないため、バスケットはちっとも揺れない。時々、本当に空を飛んでいるの?と思うくらい静かに、安定して飛び続ける。けれど、バスケットから顔を出し、下を覗き込むと、地上ははるか遠く、インパラやガゼル達が小さく豆粒のように見える。バルーンはバーナーで熱風を送り、調節しながら上昇したり、時には地上の動物達に近づいたりと、上昇と下降を繰り返しながら空中散歩を続ける。 眼下の草原には、インパラやガゼル類、ダチョウ、イボイノシシ、キリン、木の上のサバンナモンキーなどが見える。3匹のライオンの真上も通った。 そして、バルーンから見たアフリカの大自然の素晴らしさ…!! バルーンが飛び立った時には、まだ日の出直前の少し暗さを残した紺青の空の色が、徐々に昇ってきた太陽の光と共に紫色から淡いピンク、眩いオレンジ色、黄金色…と、刻々と変化していく。その見事なグラデーションには言葉もなく、そして飽きることなく見つづけてしまう。太陽がサバンナの上に完全に姿を現し、柔らかい水色の空になっても、まだ白い残像を残す月。そして、太陽の光を浴びて、黄金色に輝くサバンナ。その大地に映るバルーンの大きな影。まるで大地をキャンパスにダイナミックな影絵をして遊んでいるみたいだ。…本当に素晴らしかったです!! 「あちらがセレンゲティ」とMrアンドリューが指差す。この平原は国境を隔ててタンザニアのセレンゲティに続いているが、アンボセリの時にも思ったけ、実感が湧かない。このままバルーンで飛んで行けそうな気がする。人間が決めた境界線。ここに暮らす野生動物達はそんなこと関係なく、ヌー達のように自由に行き来して暮らしているのだから。 通常1時間位とのことだが、この朝は1時間半くらい飛行した。やがて、自由気ままに飛んだバルーンの回収と朝食の準備のため追っかけてくるトラックが目に入る。そう、着陸点はいつも未定、その日の風次第なのだ。(なので、追っかける車が走り回るため草地が傷むとバルーンサファリを批判する声もある) 「あの川を越えたら着陸する」とMrアンドリュー。川を越え、ぐんぐん高度が下がる。言われた通り、座ってバスケットの縁の取っ手につかまり体勢を整える。外の様子が見えない。あ、着陸だ…と思ったら、バスケットの底が地面に接触、2〜3回軽くゴトゴトとバスケットが引きずられるようにして地面を横滑りする。そしてそのまま転がることなく止まった。 思った以上に静かであっけない、そして見事な着陸だった。よく、着陸の時にバスケットがひっくり返って中から這い出してくるという話も聞くが、Mrアンドリューのバルーン操作には危険は全く感じられなかった。 |