空港から、まずは翌日朝まで滞在予定のパナフリックホテルに車で案内される。ホテルでは、この旅を手配してもらった会社の日本人駐在員の方が待っておられた。稲野辺さんという若い女性の方だった。
ホテルで稲野辺さんに会い、まずはロスト・バゲージのことを話す。それはツアー会社の方でなんとかするが、最悪の場合数日カバンが出てこないこともある…と言われて、ちょっとガックリくる。
それから、カメラを忘れたことでさらにガックリしていた私の姿がよほどひどかったのだろう。気の毒に思われたようで「一眼レフではないけど、私のカメラでよかったらケニア滞在中の間お貸ししましょう」と、翌日、アンボセリ国立公園に向けて出発する時に、ホテルに自分のカメラを持ってくると言ってくださったのだ。
「コンパクトカメラだから一眼レフのようにいい写真は撮れないかもしれないけど…」と言われるが、なんのなんの、私にとっては物凄くありがたい話。私のミスから始まった問題で稲野辺さんには関係ないことなのに、「忘れ物はよくあることなんですよ。気持ちを切り替えて明日からの長旅に備えてください」と励まし、快く自分のカメラを貸してくださった稲野辺さんには、本当に心から感謝している。あの時の彼女の親切にどれだけ救われたことだろう。おかげで何とか気持ちを持ち直し、元気に旅をすることが出来たのだから…。
さて、本当ならこの日は1日ナイロビ滞在で、希望すればナイロビ市内のジラフセンターや国立博物館などに連れて行ってもらうことも出来たのだが、トラブルでくたびれきった私には余裕がなかった。明日からの長旅に備えるためにも、ゆっくりホテルで休むことにする。
ただ、昼食は郊外のレストランに予約が入っていたので、昼食には出掛け、その足で市内のマーケットに連れて行ってもらい、当面必要なものを買うことにした。何しろ、ロスト・バゲージで、手元には貴重品と最低限の洗面道具だけが入ったディパックしかない。もしも、明日ナイロビからアンボセリに向かう前にカバンが出てこなかったら、着の身着のままアンボセリで2泊することになると言われたからだ。
12時、約束の時間に稲野辺さんに案内され、ドライバーのフレッドさんが運転する車で、ナイロビ郊外の『Carnivore(カーニボア)』というレストランに連れて行ってもらう。ここは、夜にはディスコにもなる焼肉レストランで、牛・豚・羊・鶏肉はもちろん、野生動物をハンティングする許可を持っていて、日替わりでキリン・シマウマ・インパラ・ワニ・ダチョウなどの肉が出されるのだ。
屋外テラスにあるテーブルに案内され、様々なサラダが盛られた器と熱い鉄板プレートが置かれたら、後はウェイターさんが運んできてくれるお肉の“食べ放題”の始まりである。ウェイターさんが、焼きたての串刺しになった肉の塊を持って各テーブルをまわり、各自の鉄板の上にナイフで肉を削ぎ落としていくのだ。食べられなくなったら、サラダが盛られた器の上に立てられた旗を倒せばおしまいである。
最初は普通に牛や羊、鶏肉、ソーセージなどが来る。そのうち本日のメインメニュー(?)がやってきた。ここは日本人のツアー客がよく来るのか、ウェイターさんも心得たもので、私の所に来るとニッコリ笑って、「ダチョウ!」「シマウマ、オイシイ!」と片言の日本語で説明しながら、一切れ二切れと置いていく。彼らの笑顔は、まるでコピーされたような営業スマイルが多い日本のファーストフードの店などと違って(いや、日本のお店が全部そうと言うわけではないけど…)屈託なく底抜けに明るい。すごく嬉しくなってくる。
で、この日はダチョウ・インパラ・シマウマのお肉が出て、一通り完食しましたよ、もちろん。(爆)ダチョウはまあまあ美味しかったけど、シマウマ・インパラの焼肉は、見た目は牛肉みたいだけど食べてみると結構しわくて、噛めば噛むほどなんだかレバーみたいな味もする。う〜ん。自分的にはあんまり好きじゃない。…と思いつつもしっかり食べちゃった。
しかし、これらの肉は性質の問題なのか、火の通し方なのか何が原因かよくわからないが(特にシマウマの肉がアヤシイ)、それから翌日いっぱいまで私の口臭はかなり強烈で、自分の鼻がひん曲がるくらい臭かったのだ。
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