翌日1月19日、朝食を食べた後の6:30、次のアバディア国立公園に向けて出発する。
今日もキリマンジャロが姿を見せてくれる。後ろに遠ざかっていく朝焼けのキリマンジャロを何度も振り返ってみる。
そして、こんな早朝の涼しい時間帯は野生動物たちの活動時間で、ゲートを出るまで、そしてゲートを出てからしばらく、マサイキリンやシマウマ、ゲレヌクに出会った。ゲレヌクは後ろ足で上手に立ち上がってアカシアの葉を食べていた。
アンボセリからアバディアに行くには、一旦来た道を戻りナイロビを通っていかないといけない。
ナイロビに着いてウフルパークの側を通ると、なぜか大勢の人が集まっている。?と思ってカロに聞くと、今日は日曜日だからキリスト教の礼拝だと言う。ケニアの多くの人はキリスト教を信仰しており、どこへ行っても大抵の町の中で教会をみかけた。
…そうか、今日は日曜日なんだ。あの大自然の中を旅して日付感覚がなくなってしまったようだ。
ナイロビまで北上した後もさらに北上を続ける。
ナイロビを離れるにつれ、辺りの景色はまた変わってきた。道も坂を登りつづけ、森に囲まれた山の中に入っていく。へ〜、ケニアにはこんな風景もあるのだ。テレビで見ていたマサイマラやアンボセリのサバンナとは違い、ここは一見山の中のジャングルといった趣である。
ナイロビまでいたる所に生えていたアカシアは姿を消し、ユーフォルビア・インゲスという柱サボテンのような木やソテツのようなものが多く見える。側にはトウモロコシ畑や、サトウキビのようなものもある。…と思ったら、トウモロコシは正解でしたが、サトウキビと思ったのは牛にあげる牧草でした。この辺りは、今までいたサバンナと違い、土地に対して人間も牛の数も多いので、自由に放牧できないから牧草を育てているとのこと。ここでも、山肌に多くの牛が放たれている。時々紅茶の茶畑も見える。
そして、ナイロビまでスカッと晴れていたのが嘘のように、雲が多くなってきた。頭上には厚い雲が垂れ込めている。太陽が遮られる分、涼しいようだ。
13:30アバディア国立公園の入り口にあたるアウトスパンホテル着。
今日泊まるツリートップスは非常に狭いロッジなので、ここアウトスパンホテルでチェックインし、大きなカバンは預けた後、1泊分の荷物だけ持ってホテルの4WDで向かうのだ。フレッドさん、カロとは明日の朝ここに戻って来るまでしばしお別れである。
アウトスパンホテルで昼食を摂り、14:30他のお客さん達と共に2台の大型の4WDに分乗して乗り込む。
ホテルを出てすぐに舗装した道から離れ、うっそうたる森林の中の道へと入って行く。途中アバディア国立公園のゲートを通り、30分ほどデコボコの坂道を走ったところで車が停まる。
車の運転をしていた人が、ここからツリートップスまで歩いて行くと言う。ここはゾウやバッファローなどの大型の動物もいるが、私と一緒に歩けば大丈夫、なぜなら私はライフル銃を持っているからだというようなことを言いながら、銃と弾を見せてくれる。
丘の斜面を少し登った所で、突然目の前に高床式の木造のロッジと、そのロッジを挟むようにしてある2つの池が現れる。ツリートップスは文字通り木の上のロッジで、昔は大木の上に立てられていたが、今はその大木も枯れ、高い柱の上に立てられている。
うわ〜。今朝までいたアンボセリとは全く違う、森の国に来てしまった。しかし、静かでなかなかいい雰囲気だ。
さっきの人が、ツリートップスの歴史を説明してくれる。
ここは、元々ハンターのために作られたロッジだったこと。1952年、今のイギリス女王エリザベス2世が王女だった時ケニアを訪問。ここツリートップスに泊まった夜に父ジョージ6世国王の訃報が届き、彼女は木の上で王位を継ぎ、翌朝女王として降り立ったこと。…しかし、私は単なる平民。王女様のようなエレガントのかけらもない。(爆)
歩いてロッジに行き、階段を登って中に入る。
本当に狭くて、部屋はベッドだけでいっぱいだし、シャワーやトイレは共同だし、廊下は人とすれ違うのが難しい。しかも廊下の所々には、なぜか天井や壁からニョッキリ枝が飛び出しており、ぶつかってケガしないようにムートンが巻きつけてある。
ここでは他のロッジと違ってサファリドライブではなく、ロッジの屋上テラスや各階の展望室、ベランダなどから、両側の池に水を求めて来る動物達を観察するのだ。池の周りにはロッジの人が塩をまいており、それも舐めに集まってくる。
はぁ〜。それにしても、大きなガラス窓越しに籐の椅子に座って、午後の紅茶とスコーンやケーキを頂きながら、寄ってくる動物達を見るというのはなんという贅沢。
お茶を頂いた後、屋上のテラスに上がってみるが、少々風が冷たい。ここは標高2000メートルを越える山の気候なのだ。実際、夜や次の朝には持参していたフリースの上着が役に立つ。
最初は何も見えなかったが、16時頃より南側の池にはバッファローの大群とイボイノシシ達が現れる。北側の池にはウォーターバックが1頭いる。
バッファローの大群が去って、17時半頃からはゾウの群れがやって来る。水を飲んだり、長い鼻を使って塩を食べたりしている。子ゾウもいる。少し離れた池のほとりには、ブッシュバックのカップルとインパラもいた。
ずっと遠くに見える山はケニア山らしい。
やがて暗闇が迫ってくると、ロッジの前にはオレンジ色の照明がつけられる。夜間にやって来る動物を観察しやすくするためだ。
そうそう、ここにはアニマルコールなるものがあった。それは、部屋のスイッチを入れて赤いランプをオンにしておくと、夜中でも動物が来た時はブザーを鳴らして起こしてくれるのだ。ブザーが3回ならゾウ、2回はサイ、1回はなんだったっけ?
とにかく、この夜は2回コールが鳴った。
1回目は22:45頃。フリースを羽織って慌てて展望室に行くと、北側の池の塩がまかれている辺りにゾウの一群とクロサイが1頭現れていた。そこはちょうど展望室の真下なので、しっかりクロサイも観察できた。しかし、可愛そうなクロサイさん、いや、美味しいものは早い者勝ち?塩がまかれている所に近づこうとしたら、ゾウに鼻であしらわれ、追い払われていた。
2回目のコールは、真夜中の3:10頃。寝ぼけマナコの目をこすって、またまた展望室に駆けつける。夜中なのに大勢の人が集まっている。ここでは、夜中のコールにパジャマで起きて出てもマナー違反として叱られることはないのだ。ただし、冷え込むので防寒着を羽織ったり、レセプションで借りた毛布を体に巻きつけ寒くないようにする。22時と同じ場所に再びクロサイ1頭(同じクロサイかな?)に10数頭のバッファロー、池の向こう側には1頭のゾウもいる。クロサイさん、今度は塩を食べているようだ。
そして、朝。目が覚めて窓の外を見ると、そこは夏の道東も顔負けの濃い霧に全てが姿を隠していた。
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