その日夕方16時から2時間ほどサファリドライブに出掛けて、今まで会った動物はもちろん、違った動物にも会えて興奮した。
その時もたくさんのゾウにも会えたけど、やっぱり1番はトムソンガゼルを狙っている2頭のチーターだろう。 カロとゾウは飽きるほど見たけどなかなか肉食動物には会えないね、と話していた矢先、またまたフレッドさんが見つけてくれた。
2頭のチーターは、最初は彼らがすっぽり隠れてしまうくらいの草むらの中に身を潜めていた。そのうちゆっくり、さりげなく出て来て、何事もないように次の草むらへと歩いて行く。そのずっと先には1頭のトムソンガゼルがいた。ごく自然体で、ハンティングするという気配すら感じないチーターに対し、憐れトムソンガゼル君、狙われていることがわかっているらしく、固まってしまってその場から動けないようだ。時々前脚の蹄をカッカッとせわしなく地面にこすりつけ、短い尻尾をパタパタ振る。しかし、時々様子を見ては、少しずつチーターから離れようと移動している。
そして、気がついたら、いつのまにか1頭のセグロジャッカルも登場!どうやら、おこぼれにあずかろうとしているらしい。“チーターさん、いつトムソンのヤツをやるんですかい?ワシはあなた様にどこまでもついて行きますぜ”といった感じで、チーターとつかず離れずの距離を保ちながら一緒にちょこちょこ歩いている。
しかし、少し距離が遠すぎたのか、チーターはなかなか仕掛けなかった。
この日はオブザベーションヒルに行く予定だったので、あまり長くは見ていられず、心残りだったがその場を離れる。さて、トムソン君、無事に逃げきれたのでしょうか??
このアンボセリにしろ、どこの国立公園・動物保護区の敷地内では原則として車から降りてはいけないのだが、いくつかの例外もある。
オブザベーションヒルもその1つである。広大な平原の中にポツンとお椀をふせたような小さな丸い丘で、アンボセリの展望台になっている。車でその下に行った後歩いて登るのだ。
そこへ向かう途中、またまたフレッドさんが突然車を止める。
え?何々?と思ったら、今度は左手の草むらの中に1頭のメスライオンがいた。ひぇ〜。フレッドさんに教えてもらわなかったら見落とすところだった。
メスライオンは数頭の群れで行動しているのだが、なぜかこのメスは1頭だった。「きっと、近くに仲間はいると思うけど…」とカロ。彼女は少し草むらで寝そべって周りを見ていたが、やがて側にある倒木でガジガジ歯を研ぎだした。その後、おもむろに立ち上がると、悠然と私達の車の前を通って道を横断し、右手の草むらの中へと消えていった。
そこからオブザベーションヒルまで一気に行く。すでに先客のサファリカーが数台止まっていたが、みんな帰るところで、貸しきり状態で丘の上に登る。
太陽は大きく傾き、少し強い風が気持ちいい。風と共に、日中キリマンジャロを覆っていた雲が東から西へと流れて行き、向かって左側から徐々にその姿を現してくる。自然がおりなす素晴らしいマジックショーだ。
丘には歩きやすいように石組の階段が作ってあり、あっという間に丘の頂上に辿り着く。
グルリと360度サバンナの広大な風景。本当に上手い言葉が見つからない。
「あのキリマンジャロの麓はすでにタンザニア」とカロに言われるが、ピンとこない。そのまま歩いて行けそうだ。なんか、ここでは国境だとか国だとか、そんな人間が決めたことはどうでもいいような気になってくる。
遠くに小さな豆粒のようなゾウやバッファローの群れが見える。下の水場には、これまたミニチュアのような2頭のカバがいた。
夕陽を浴びて、この光景を目に焼きつける。明日は早朝にアバディアに向けて出発するので、アンボセリの広大な風景をじっくり見るのもこれが最後だ。
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