ジャンボ! アフリカ 〜11.アンボセリ走ればゾウにぶつかる〜

 

 さて、夕方16時、初めてのサファリドライブに出発である。

 サファリドライブは、サファリカーに乗って動物を探しに出掛けるのだが、日中は陽射しもきつく、気温も高い。人間も辛いが動物も同じことで動物達も昼間は休息していることが多く、ハンティングなど活動するのは大抵朝か夕方だ。だから、サファリドライブも朝と夕方に設定されており、朝は6時半前後から、夕方は16時前後から出発の所用約2時間程度のドライブとなっている。ロッジの宿泊客は、それぞれ自分達のサファリカーに乗って、動物との遭遇のチャンスを目指し、あちらこちらに散っていくのだ。

 カロと16時にレセプションで…との約束だったので行ってみるが、カロは来ていない。“まだかなぁ?”と思ってその辺を歩いていたら、カロはテラスの側にあるバーで紅茶を飲んでいた。『ポレポレ』…である。
 私は少し前にそこで紅茶を飲んだばかりだったので、そのままカロを待って一緒に外に出る。ロッジの玄関前には、すでにフレッドさんがサファリカーの準備をして待っていた。今まで閉じていた天井の蓋が持ち上がって開き、そこから頭が出せるようになっている。その車に乗って、いざ出発!

 ロッジを出ると、いきなり前の道をバブーンの大群が歩いている。ここアンボセリで見られるバブーンは毛色が明茶色のイエローバブーンで、のちにマサイマラなどで見るアビヌスバブーンとは違っていた。お尻の真っ赤なバブーンを指して、「発情の近い、あるいはその時期のメスのお尻」と、カロが教えてくれる。

 ゆっくり森の中を抜け、サバンナに出てくる。車は動物と私達自身の安全を守るために、公園毎に決められた制限速度を守ってゆっくり進む。(アンボセリでは大体時速20キロだった。けれど、動物を見つけてそこへダッシュで駆けつける時にはもうちょっと早かったけど…)
 しばらくは動物は何も見えない。時々、遠くに砂埃を巻き上げた小さな竜巻が何本も起こっているのが見える。乾季のアンボセリでは、日中よく見られる現象だ。中にはサファリに出てもほとんど動物が見られなかったという人の話も聞いていたので、もしかして私も運がないのかなぁと、チョッピリ気になりだした矢先、ワオ、いました〜♪

 まずはダチョウのオスとメス。ダチョウの羽色は、オスが翼の先と尾が白いだけで後は黒く、メスは灰褐色で地味だ。区別がつきやすい。3羽ほど悠然と歩いていたが、ダチョウって結構足も首も長くて、背が高いね〜。

 それから10数頭のバッファロー。草食動物の中では最も気が荒く、時にはサファリカーもひっくり返してしまうこともある…とか。さすが猛牛ですね〜。でも、目の前のバッファロー達はノンビリと草をはみ、時々“あん?何、見ているのかい?”って感じでこちらを見てくる姿はオトボケ爺さんといった感じがしたのは私だけだろうか?大人のバッファロー、特にオスは頭に立派な角をお持ちで、太く長く、先の方でクルンと反り返っているかっこうはナポレオンの帽子のようでもあるし、てっぺんはモーツァルトの頭でもあるような気がする。

 グランドガゼルやトムソンガゼルも数え切れないほどいる。普段はノンビリ草を食べているが、時々何を思ったのか駆け出し、ホップステップジャンプジャ〜ンプとピョンピョン飛び跳ねながらサバンナを疾走する姿は華麗だ、カール・ルイス(古っ)も真っ青の跳躍力で見とれてしまう。

 遠くをシマウマが数頭駆けて行く。それから、いないかなぁ?と思っていたヌーにも3頭ほど群れているのに出会った。けれど、アンボセリの名物(?)アフリカゾウになかなか出会わない。
 フレッドさんはあちこち車を走らせてくれているが、まさか行き違いになっているのかなぁと思っていたら、いました!アフリカゾウの群れ!興奮でゾクゾクする!しかし、本当に私の考えは浅はかで、この後いやというほど(?)ゾウを見ることになる。(笑)

 あ〜〜。それにしてもゾウはなんて大きいのでしょう。そしてなんてつぶらで優しい目をしているのでしょう。時々大きな耳をバタバタさせている姿もかっこいい。アフリカゾウのシンボル・牙も立派です。
 ゾウは女系家族、メスを中心に10数頭前後の群れを作っている。「おばあちゃん、お母さん、娘、そのまた娘、それから叔母ちゃん、伯母ちゃん…。男は成長したら群れから追い出されて自立ね」byカロの説明、よくわかった。その後もたくさんのゾウに会って、1頭だけで歩いているゾウがいたら、あぁ、あれはオスなんだなぁと思った。
 ゾウ達は草を食べながらゆっくり群れで移動している。その中には子供のゾウもいる。子ゾウは群れによって数が違うが、1〜3頭位は必ずいた。お母さんやおばあちゃんのゾウ達に守られるように囲まれて歩いているが、子供というものはどこの世界も同じ、元気よく1頭で先に突っ走っていこうとする子も中にはいるものだ。そんな子ゾウは、お母さん達にたしなめられるように、長い鼻で呼び戻されている。そうそう、子ゾウは走るんですね。ゾウ=ゆっくり歩くと思っていたら、子ゾウはタッタカ走っていた。
 あと、3頭の子ゾウが頭突きしたり、小さい体のわりに大きな耳をバタバタさせてじゃれあっている姿はメチャクチャ可愛かった。

 途中から、ほんとにゾウだらけのサファリになってしまって、いたるところでゾウに出会った。ホント、360度どっちを向いてもどこかに必ずゾウがいる。これだけゾウがいると、道路を横切るゾウの群れにも何度も遭遇する。車はゾウに危険を与えないように手前で慎重に停まって、目の前のゾウの横断をポレポレと見守る。大きなゾウの体の上に、コサギなどの鳥がとまって羽を休めていて、悠然と歩くゾウと共に移動している姿も面白かった。

 さらに走れば、泥んこまみれの真っ黒ゾウさんにも出会う。砂浴びや水浴びしたゾウ達だ。途中、小さな池のような水場があって、その中に2頭のゾウが頭まで沈み込むようにして入っていた。2頭は向かい合って、長い鼻を絡めあっている。遊んでいるのだろうか?
 ところで、この水場の近くには、道を大きく外れ、草地の中に入って写真を撮っているジープが1台いた。普通のサファリカーは道から一切外れてはいけないのに??と思ってカロに聞くと、「研究の為にちゃんと許可をとっている車」なんだそうだ。

 やがて太陽がどんどん傾いて行き、光線が柔らかくなって金色の光でサバンナが包まれる頃、ものすごい数のゾウの群れに出会った。
 とある草地に100頭以上いると思われるゾウの大集団と遭遇したのだ。(50までは数えたんですけどね…それ以上は多すぎて数え切れませんでした)「きっと、いくつもの群れが集まって出来ているんだろう」とカロが言う。
 圧倒される光景に、私は言葉が出なかった。