トート・タロット図解


2 ワンド(棒)

ワンドは四大エレメント、火水風地のうち火を表す。情熱や直観のエネルギーである。

 火の精霊はサラマンダー、大天使はミカエル、方角としては南を意味する。

古来、ワンドのスートは農民階級を表すと言われたが、今日的解釈においては、大きくプロレタリアートや労働者階級を表す。

 コート・カードは、それぞれ、ナイトが火、クイーンが水、プリンスが風、プリンセスが地の性格を持ち、ワンドのプリンセスなら、火の中の地のエネルギーを意味する。その照応は他のスートでも同じ。

 エースから10までのスモールカードは生命の樹の各セフィロトに対応する。同時に全てのワンドのカードはコクマーに帰属する。


Knight of Wands ワンドの騎士

Element 火の中の火
Zodiac 蠍座21〜射手座20

【カードの意味】
 Positive 行動的で寛大な男性 激しさ 活動力 力強さ 臨機応変 明確な目的を持った外への動き
 Negative 悪意に満ちた冷酷な男性 プライド せっかち 猪突猛進 頑迷


 コート・カードは、占術においては、質問者自身、もしくは質問者と深く関わるであろう人物を示す場合が多く、質問者自身の性格と、そのような人物に心当たりがなければ、質問者の運勢がそのような方向に傾く可能性を示す。

 騎士のカードは一般に年配か、もしくは既婚の男性を表す。神聖四文字、YHVHにあっては、最初のY、ヨッドを表し、世界生成の四段階、アツィルト、ブリアー、イェッツラー、アッシャーの四段階においては、最も根源的なアツィルト界に由来すると同時に、セフィロトの中ではコクマーに配属される。

 ワンドのナイトは火のエレメントの最も激しい部分を象徴する。それは明確な目的を持った情熱の突進である。ナイトは火のマントを纏い、ワンドのエースの松明を手にしている。行く手にある物を全て焼き尽くさんとしているようだ。ナイトの兜の飾りや髭、そして馬のたてがみも進む方向になびいている。彼をとめる事は出来ない。馬の足は跳躍して宙に浮いており全く地に足がついていない。

 人物としては、活動的で寛容、激しさと自負を持っているが衝動的であり、予想もつかない行動に出る。状況に応じて行動を修正する術を持たないので、最初の行動で失敗すると失地回復は難しい。

 アーサー・エドワード・ウェイトは、騎士のカードでは、馬の様態がその騎士の精神の内面を表すと語っている。トート・タロットのワンドの騎士は、追い風に乗って疾走する馬である事に注意せよ。

 エレメントは火の中の火、すなわち直観に突き動かされる情熱である。蠍座の21度から、射手座の20度までを支配する。

 悪品位にあった場合の、ネガティブな意味として、地に足がつかない事、また落ち着きの無さを示す場合がある。質問者は、精力的でいながら、行動の時期を逃さぬように用心し、自分を信じて前進する事を求められている。

 クロウリーによれば、このカードは易の51番目の卦、「震為雷」と一致する。その意味するところは激しい雷であり、勢いがあるが調子に乗りすぎてはいけないという戒めもある。

Queen of Wands ワンドの女王

Element 火の中の水
Zodiac 魚座21〜牡羊座20

【カードの意味】
 Positive 適応力のある女性 安定 持続する情熱 寛大さ 穏やかさ
 Negative 愚かで頑固な女性 強情 横柄 執念深い


 女王のカードは年配の女性、既婚女性をあらわす。神聖四文字ではH、最初のへーを表し、四界ではブリアー界に由来し、セフィロトではビナーに配属される。

 ワンドのクイーンは火のエレメントを受容する力を象徴する。エレメントの属性は火の中の水であるので、直観から生ずる感情を表す。火の玉座に静かに座った彼女は、受け止めたエネルギーを内省しながら瞑目している。傍らの豹に置かれた手は、受容した力を分け与えているようだ。

 女王の王冠には翼の生えた球体で囲まれていて炎を放っている。手にしたワンドの先には松笠状の円錐体がついていて、クロウリーによればバッカスの神秘を暗示している。クロウリーがアテュの『愚者』に描かれた人物をバッカスであると書いている事に留意せよ。

 ワンドの女王の特質は、適応性、一貫した活動力、静かな権威であり、それによって自分の魅力を高める術を心得ている。彼女は思いやりがあり寛大であるが、抵抗に対しては我慢できない。友情や愛には極めて篤いが、人間関係においては、常に主導権を握る。

 悪品位にあると、執念深く、復讐心を抱く、怒りっぽいという面が強調される。彼女は騙されやすく、また、暴虐な面に走りがちである。

 魚座の21度から牡羊座の20度までの領域を支配する。

 『トートの書』では、このカードは易の17番目の卦、「沢雷随」と一致する。すなわち、時に従い、人に従えという卦であって、臨機応変に事に対処せよという啓示である。随とは追随の随である。
 

Prince of Wands ワンドの王子

Element 火の中の風
Zodiac 蟹座21〜獅子座20

【カードの意味】
 Positive 迅速で強い若い男性 活力 力強さ ユーモアのセンス 熱中 切迫感 新鮮なアプローチ
 Negative おごり高ぶった若い男性 乱暴 無謀 思いこみの激しさ 熱狂 性急


 王子のカードは一般に若い男性、未婚の男性を表す。彼女の母は女王であり、父は女王を獲得した騎士である。新生四文字の中のヴァウに配属される。

 ワンドのプリンスは風のエレメントによって火勢を増した火のエレメントである。獅子座の象徴である獅子に引かれた戦車は疾走しており、プリンスは勝利を意味するフェニックスのワンドを手にしている。このワンドはアデプタス・メジャー、大達人の称号を許された魔導師の持つ物である。頂部に翼のついたライオンの顔のついた光を放射する冠を被っていて、その王冠からは炎が幕状に垂れ下がっている。

 胸につけられたマークは、クロウリーによれば「メガ・セリオン」、即ち大いなる獣の印である。このマークはクロウリーの著作に度々描かれている物だ。A∴A∴でのクロウリーのマジカル・モットーがマスター・セリオンであったことを想起されたい。

 ワンドのプリンスが表す人物の特性は素早さと力強さである。彼は熱狂的な若者であり、用心深さを学んでいない。時として強烈すぎたり性急すぎる指向性を表す。性格は騎士や女王と同じく、高潔で寛大だが、法外な大ホラ吹きでもある。そして自分のホラの対象と、ホラを吹く自分自身を常に笑っている。

 悪品位にある時、性格は極端に悪化する。残酷で冷酷で無関心、狭量で偏見が強く仕事を怠ける。彼自身の自負その物が彼の弱点となる。

 蟹座の21度から獅子座の20度までを支配する。

 『トートの書』で関連付けられた易の卦は42番目の卦である「風雷益」である。その意は風を受けて進む帆船に喩えられる。益は「益す事」を意味していて、良き事は進め、悪しき事は速やかに改める事とされている。

Princess of Wands ワンドの王女

Element 火の中の地
Zodiac アジアの天空

【カードの意味】
 Positive 独立した若い女性 エネルギーと共に流れる 何であれイエスという 自由 情熱的 才気煥発
 Negative 信用できない若い女性 流される 浅薄 大袈裟 あてにならない

 
 王女のカードは若い女性、未婚の女性をあらわす。エレメントの中の地の役割を担い、最も現実的な力として作用する。また、コート・カードの中で、プリンセスのカードは黄道十二宮に属さず、四分割された天球を支配している。新生四文字の最後のヘーである。

 ワンドのプリンセスは火の力を受け止め、その中にたゆたって流れに身を任せている。頭上に伸びているのは公正の精神であるとクロウリーは記している。手にしたワンド先端には太陽をかたどった円盤がついている。彼女は虎の尾を捕まえ、虎は為す術もなく彼女に従っている。彼女は全てにイエスと言うのだ。彼女は春の火を表す雄羊の頭で飾られた金色の祭壇に仕える女司祭である。

 王女の性格は、愛する事と怒る事について、突然で激しく容赦がない。自分の領域に入ってくるものは何でも焼き尽くしてしまう。彼女は野心を抱き、向上心に燃え、熱狂的である。侮辱されるとその事を決して忘れない。輝かしく、大胆不敵で情熱的である。

 品位が悪いと、意志薄弱で周囲の力に流されてしまう危うさを示す。表面的で芝居がかった行動をとり、浅はかで、明らかに間違っていてもその事に自分では気づかない。

 四分割された天球のうち、アジアの天空を支配する。

 このカードに関連付けられた易の卦は27番目の卦である「山雷頤」である。卦の形が顎を表すと言われており、養う事という意味があるが食べ過ぎに注意という意味もある。すなわち、やり過ぎは禁物という事だ。何事もバランスに注意する事。

Ace of Wands ワンドのエース(火の力の根源)

Sephira ケテル
Astrology 火

【カードの意味】
 純粋なエネルギー 力 フォース 活力 激しさ 情熱 直観

 エースは四大元素の根源を表し、他のスモール・カードよりも遙かに上位にある。

 ワンドのエースは純粋な火の力、直観や情熱のエネルギーを示す。純粋なのでその力の意味する事は周囲のカードに左右される。松明から放たれる炎は、ヘブライ文字、ヨッドの形をしていて、カバラの生命の形に配置されている。これは太陽=男根的な噴出で、あらゆる方向に稲妻を走らせている。

 エースはケテル(王冠)から発現する根源的な力の発動である。海王星の影響を受けるケテルの札はその身を根源の力に委ねるのである。非常に早期の段階なので、まだ意志として明確に術式化されていない。クロウリーは「エースは、その外見においても、それ自体が元素ではなく、元素の根源である」と記している。

 実占に於けるエースの読み方としては、それが質問者の根源的な動機付けを表すという事であり、無意識で盲目的な動機の発動があるという事である。他のエース、特に悪品位にあるエース、ワンドの場合であればカップのエースと並ぶと、質問者の意識下に無自覚な混乱があると読み取れる。

 『トートの書』では易との関連付けはされていない。

2 Dominion ドミニオン 支配

Sephira コクマー
Astrology 牡羊座の中の火星

【カードの意味】
 支配 青天の霹靂 良くも悪くも新しい事が起こる 意志の力 新しい方向性への力 創造力

 このカードは火のスートのコクマーに属し、最も高められた形態の意志を表す。

 中央で交差するのはチベット密教の法具であるドルジェで、稲妻、ないしは落雷の象徴であると『トートの書』にある。その力は創造的な部分よりも、むしろ破壊的な形式において力を発揮する。創造の前には破壊が必要だという事を暗示している。

 ただし、チベット密教でドルジェ(ドルチェ)と言った場合、普通は五鈷杵、ヴァジュラの事を言う。ここに描かれた法具はチベット密教ではプルパと呼ぶ。憤怒像を付けた武器を用いるのは煩悩を断ちきる為だと言われる。

 中央部から放たれた6本の炎は新しい創造性を示す。それは牡羊座の中の太陽の影響を示すと共に、コクマー(知恵)は改革の星である天王星の影響を受けている。

 牡羊座の中の火星は大胆で一心不乱な衝動を意味する。火星は牡羊座のルーラーなので、その力は最も強く働く。悪品位にあれば、衝動は破壊衝動として作用する。

 ライダー・ウェイト・タロットではワンドの2は地球儀を手にした支配者が居城のバルコニーから遙か彼方の海を眺める絵柄が描かれており、「支配」の先にある更なる野望を描いている。

 実占において「支配」のカードはテレマ主義の意思の力を強く象徴したカードであり、質問者に強靱な意志を持つ事を促すカードとして読み取れる。

 『トートの書』ではこのカードを易の卦とは対応させていない。ただし、牡羊座(白羊宮)の火星は、地占におけるブエルに属すると記している。その意味は、少年、男性の象徴 で、多くの場合凶だが、恋愛と戦争に関しては吉とされている。

 今が攻め時と云う事だろう。

 ちなみに、このカードのタイトルである、ドミニオン、続くヴァーチュー、ディスクの4のパワーはそれぞれ、天使の九階級のうちの中級三隊、主天使、力天使、能天使の名称と一致する。

3 Virtue ヴァーチュー 美徳

Sephira ビナー
Astrology 牡羊座の中の太陽

【カードの意味】
 物事の開花 苦労が報われる 実行の時期 安定した強さ 気高さ 誠実 直進


 火のエレメントのビナー(理解)はエネルギーの確立を表す。故にこのカードのワンドは開花した蓮を先端に持つロータスワンドである。

 ロータスワンドは黄金の夜明け団系列の魔術結社では、アデブタス・マイナー(小達人)に昇進したセカンド・オーダーに参入した魔術師の魔術武器である。更に高位の大達人、被免達人は名誉位階なので、実質、小達人まで昇格すれば魔術上の免許皆伝である。ここにも物事の開花の意味が隠されている。

 オレンジは誠実さを表し、牡羊座の中の太陽は猪突猛進を表す。牡羊座に太陽が入るのは春分点からであるので、ここには春の訪れという意味もある。ビナーはグレート・マザーのセフィラーと言われ、太陽が偉大な母を燃え立たせるとクロウリーは記しているが、ビナーは土星の支配領域でもあり、試練や制限を意味する星である。ワンドの3の「美徳」は試練の後に開花する成果である。

 悪品位にある時、牡羊座の太陽の猪突猛進は攻撃的に作用する。

 ゴールデン・ドーン・タロットでは「確立された力の主」の秘密の名称を持ち、ライダー・ウェイト・タロットでは、所有する商船の安定した航海を見守る大商人が描かれている。

 易では11番目の卦である「地天泰」と重ねられている。卦の形は天の上に地が重なるという形だが、転じて、地は下り、天は昇るので、調和の卦とされる。天下太平、穏やかさと安定を意味する卦である。

4 Completion コンプリーション 完成

Sephira ケセド
Astrology 牡羊座の中の金星

【カードの意味】
 仕事の完結 完了 一段落 成就 祝福


 ケセド(慈悲)に属する火のスートは、互いに繋がって完結したワンドによって表される。ケセドは木星が支配するので、この札は祝福されている。ケセドは至高の深淵の下に位置し、具現化された完成の力を表す。2の根源の意志は3を通して送られ、4で一つの体系を持つに到る。

 先端についた牡羊はアメン・ラーの聖獣であり牡羊座を意味するが、鳩はウェヌスの象徴として金星を表す。牡羊座の中の金星は、人は気転や優しさなしに仕事を成し遂げる事は出来ないとクロウリーは述べている。

 占星術では白羊宮の中の金星は包容と安定を意味していて、ネガティブな面は退屈と官能への耽溺になる。

 カードにあるワンドの両端は輪に触れており、根源の仕事の完成と限界を示している。ワンドの数の倍の炎が無秩序の萌芽を孕んでいる。

 悪品位にある時、牡羊座の金星の情熱は身勝手な完結を表す事になる。

 このカードに関連付けられた易の卦は無い。
 

5 Strife ストライフ 闘争

Sephira ゲブラー
Astrology 獅子座の中の土星

【カードの意味】
 問題 葛藤 困難 敵対 災い 暴力 競争 ブロックされたエネルギー


 ゲブラー自体が火星の支配する火の領域にあるので、火のスートの力は純粋に活動的に働く。また、獅子座と土星に支配される。獅子座は火相星座の不動宮で、最も釣り合いのとれた火の元素を示すが、土星は火のエネルギーが自己主張を生じさせる。悪品位にあれば、自己主張は独善に変わる。

 中央にあるのは首領達人のワンドであり、大達人のフェニックス・ワンドと小達人のロータス・ワンドを押さえ込んでいる。フェニックスは互いに背を向け、ロータスは枯れたように見える。

 首領達人の杖は、権威は高位者に由来する事を示し、大達人の杖は火による破壊と浄化、そしてその灰からのエネルギーの復活の観念を示す。小達人の杖は3のカードの娘であり、母の持つ和らげる力を持つと言われる。5は4の閉ざされた完結を打ち壊す力である。

 クローリーによれば、ゲブラーについての最も難解な教理は、破壊的で不合理なエネルギーが女性の優しく穏やかな効果に由来する事だという事である。これは単にゲブラーに留まらず、峻厳の柱自体が女性的な柱であり、慈悲の柱が男性の柱であるとされる事にもある。カバリストの一部は、それは中庸を意識する為であると主張している。

 交差する杖からは、十の炎が別の方向にほとばしっている。獅子座の土星の自己主張が独善と反発を生む事を示しているのである。

 ライダー・ウエイト・タロットのワンドの5ではワンドを使って荒らそう五人の人物が描かれており、ウェイトはそれを「戦争の模倣」と呼んだ。真剣な争いか、ゲームとしての闘争かは時と場合によって異なるだろう。

 『トートの書』では易との関連付けはされていない。

6 Victory ビクトリー 勝利

Sephira ティファレト
Astrology 獅子座の中の木星

【カードの意味】
 勝利 成功 美 愛 ポジティブ 問題なし 良き指導者 魅力的な人物


 太陽の支配するティファレトにおいて、スートの力は最も良き力として働く。三対の達人のワンドは調和し合い、交差した位置の炎は散らずにランプのような輝きを持つ。フェニックスは向き合い、ロータスは生き生きとしている。獅子座の木星は個性を自信として昇華しているのである。

 5は革命的な情熱をもって4の閉ざされた完結を吹き飛ばしたが、この6によって両者は結婚に至った。それによって生まれた物が太陽(Sun)と息子(Son)であるとクロウリーは記している。

 ランプのようにともっている火は九つあって、イェソドと月に関連する。これはエネルギーの安定を示している。

 ただし、万事が大成功という事ではない。事は上手く運んでいるが、より深遠な問題と向き合う事を避けている場合がある。悪品位にある場合、獅子座の木星は自己憐憫やひがみを伴う。

 やはり『トートの書』では易との関連付けはされていない。

 ライダー・ウエイト・タロットでは凱旋する勝利者が描かれている。

7 Valourヴァラー 勇気

Sephira ネツァク
Astrology 獅子座の中の火星

【カードの意味】
 勇気 最後の奮闘 個々人の努力 一匹狼 緊張 孤軍奮闘 やせ我慢


 ネツァク(勝利)に由来するこのカードでは、生命の樹では地に属する下方にあって、もはやエレメントの力は弱まっている。ネツァクは金星の支配領域で、精神よりも具体的かつ肉体的な状態を支配する。

 6で調和していたワンドの力は自信の喪失を始めており、炎は四方に散っていて、帰属する獅子座の中の火星(マルス)の指示を仰ごうとしているようだ。組織的な力が失われたのである。

 手前にはゴツゴツした棍棒があって、単独の武器となっている。六本の達人達の杖に対抗するにはあまりにも不釣り合いな武器である。ライダー・ウェイト・タロットでは、突き出された六本のワンドに、地の利を得て対抗する勇敢な人物が描かれているが、トートではむしろ、勇気と言うよりはやせ我慢や孤軍奮闘の意味合いが強い。

 四方に散乱している火のエレメントは、組織的な意図が失われた状態での攻撃を意味している。

 獅子座の中の火星は率直だが意地っ張りである。悪品位にある時は、勇気というよりは無謀という側面が強調される。

 クロウリーはこのカードについても易との関連を記していない。

8 Swiftnessスイフトネス 迅速

Sephira ホド
Astrology 射手座の中の水星

【カードの意味】
 スピード スピーチ 電話かメール 新しい観点 ハイテク 自由 発明 偏向


 このカードはホド(輝き・栄光)に由来する。ホドは水星の支配領域であり、知性や言語能力、コミュニケーションに関連する。また、占星学上の対応でも射手座と水星に帰属する。射手座に帰属する、8、9、10、の三枚は、火のエネルギーの純化を象徴する。

 ワンドは純化されて稲妻のような電気エネルギーにその姿を変えた。光の棒が電気エネルギーに変わった事は、ホドの輝きに由来する。炎は上がっておらず、電光その物がエネルギーである。物事は新しい物に向かっていく。

 虹はその力の成就の希望である。極限を扱う純粋な光を分割し、スペクトルの七つの色に変え、相互作用と相互関係を表す。聖書においては虹はノアとその子孫に対する唯一神の契約の印である事に留意されたし。

 実占においては、物事の急激な変化や、急ぎの報せがある事を済みする場合が多い。報せの吉凶は隣接するカードとの品格次第である。

 射手座の中の水星は旺盛な向学心を持つが偏向に注意する必要がある。急ぎすぎないという忠告が必要となるかも知れない。

 同じく、易との関連は言及されていない。

9 Strength ストレングス 剛毅

Sephira イェソド
Astrology 射手座の中の月

【カードの意味】
 自立 個である事 力 フリーランサー 根無し草 強い者に立ち向かうフォース


 「剛毅」というタイトルは、オーソドックスなタロットでは大アルカナの11番(GDタロット、ライダー・ウェイト・タロット系列では8番)の、ライオンと共に描かれた女力士のカードにつけられる。ゴールデン・ドーン・タロットでの秘密の名称は、「大いなる力の主」である。

 イェソド(基盤)に属するこのカードは月の影響を二重に受ける。棒は矢となり、交差した矢の前に際だった矢があって、太陽の力を射手座の月に与えている。クロウリーによれば、9は常に自分より優れている力との関係に於ける、力の最大限の発展を示す。中央の一際大きな矢が太陽と月を結びつけているのは、「生命の樹」で、太陽の支配するティファレトと、月の支配するイェソドを繋ぐ径(パス)は射手座に対応する径だからである。

 射手座の月は楽観的だが、スートのエネルギーは下に向かっている。炎はあらゆる方向に備えているかのようである。

 実占に於けるワンドの9は、オーソドックスなタロットの大アルカナの「剛毅」のカードとは異なり、自分自身の獣性の克服ではなく、より強い外部の力に対抗する力、及び、その為の準備を意味する。悪品位にある時、楽天的な見通しが準備不足を起こさせる。

 このカードもまた易に関する言及はされていない。

10 Oppression オプレッション 抑圧

Sephira マルクト
Astrology 射手座の中の土星

【カードの意味】
 圧迫 抑制 憂鬱 破壊的力 制限 躊躇


 トート・タロットの出自でもあるゴールデン・ドーン・タロット、腹違いの兄弟とも言えるライダー・ウェイト・タロット系列のタロットでは、スモール・カード(小アルカナ)の10枚目は、エレメントの力の完成、もしくは極限とされるが、トートでは、完成よりも過剰とみなされる。マルクトは全てのセフィラーから垂れ下がっているが、それらの霊的な力からは切り離されている。

 八本のワンドは交差しているが、「支配」に現れたドルジェ(プルパ)によってそのエネルギーを押さえ込まれている。エレメントの力は窮屈な状態にある。霊的な根源から切り離されて、盲目的な力となっているのである。緩和作用も無い過剰なエレメントの力は、最も破壊的な様相を呈する。

 交差した八本のワンドの両端は鈎爪のような形をしており、少ない番号のカードに描かれていたワンドのような権威や知性を欠いている。長く伸びた二本のドルチェに圧迫された八本のワンドの背後には炎が猛り狂っている。

 射手座の土星は慎重さから来る躊躇や未知への恐怖を表す。

 クローリーによれば、この絵に表されているのは脱出不可能な圧迫と抑制である。やはり易や地占との関連はされていない。

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