トート・タロット図解


3 カップ(杯)


 カップのスートは四大元素の「水」を象徴し、感情と霊感のエネルギーに関わる。

 精霊はウンディーネ、対応する大天使はガブリエルである。方角は西。

 古来、カップのスートは僧侶階級を表すと言われたが、今日的解釈においては、大きくアーティストや知識階級を表す。

 全てのカップはビナーに帰属する。

Knight of Cups カップの騎士

Element 水の中の火
Zodiac 水瓶座21〜魚座20

【カードの意味】
 Positive 優雅な男性 芸術的 熱狂的 与え、分かち合う 享楽的 愛を注ぐ
 Negative 偶像的男性 意志薄弱 浮気性 虚栄心 薬物依存 淫乱


 カップの騎士は唯一ヘルメットを被っていない騎士である。

 エレメントの属性は「水の中の火」であって、水のスートにあって最も活動的な部分を表す。その意味するところは感情から生じる情熱である。

 カップの中から水の活動宮である蟹座のシンボルである蟹が躍り出ていて、ナイトの背中には翼があり、馬はワンドのナイトの馬と同じように中に駆け上がっている。これらは水の持つ、最も活発な形態が華麗さに由来するからだとクロウリーは記している。

 彼は自分の愛情を分け与える事に至福の喜びを感じるが、それを認めて貰いたがる虚栄心の持ち主で孔雀はその表れである。このカードの示す人物像は、水の最も激しい側面にも関わらず、優美で、文学や芸術を愛好し、控えめで温和である。誘いにはすぐに応え、そのような刺激のもとでは熱狂的になりやすいが、その熱狂は長続きしない。愛情深い年配の、あるいは既婚の男性である。

 格式が悪いと、彼は官能的で、怠惰で信用できない存在になる。

 「火の中の水」であったワンドの女王では、水は沈静と調整の力として働いたが、カップの騎士では火が問題を引き起こす。心の内戦は精神疾患の原因となり得る。薬物への依存には注意が必要である。

 『トートの書』によれば易との関連は54番目の卦である「雷沢帰妹」である。帰妹とは若い娘が嫁ぐ事とされ、若い女性が年上の男性に懸想する事、順序が違う、乱れているという意味となる。この卦との関連は、悪品位の意味により反映されている。

 遊びはほどほどにと言う忠告と考える事も出来よう。

Queen of Cups カップの女王

Element 水の中の水
Zodiac 双子座21〜蟹座20

【カードの意味】
 Positive 観察者である女性 純粋 受容性 創造力 詩的 落ち着き
 Negative 依存的な女性 誤解 曖昧 錯覚 自己主張や信念の欠如


 水の中の水を意味するカップのクイーンは何処までも受容的である。良い意味で包容力があり、悪い意味では自分がない。彼女の姿は水のベールに隠されており、水面に映った彼女の顔は波紋にかき消されている。

 蓮は愛のシンボルであり、無限なる母、イシスのシンボルである。朱鷺も母性愛を意味する。巻き貝に似たカップからはザリガニが這い出しているが女王は意に介さない。彼女の玉座、そして全身は光の無限の屈曲で包み隠されている。

 このカードの示す人物像夢見がちで、幻想的な年配の、あるいは既婚の女性である。忍耐強く、あらゆる物を受け止め、送り出す。包容力と愛情深さを備えている。

 格式が悪いと、彼女を通過する全ての物が屈折し、歪められる。

 カップのクイーンは、自身の受ける衝撃や感銘を通じて、人を引きつけ、先導する。

 受容の中の受容であるこのカードは、隣接するカードの影響を強く受ける。無色透明の水は他の色に易々と染まってしまうのである。

 易との関連では58番目の卦、「兌為沢」とされる。兌は「喜ぶ」を意味し、楽しい時には徹底して楽しめと言う意味になる。ただし、そこには誘惑の危険もあると注意すべし。

Prince of Cups カップの王子

Element 水の中の風
Zodiac 天秤座21〜蠍座20

【カードの意味】
 Positive 鋭敏な若い男性 芸術家 有能 巧妙 秘められた情熱 技術
 Negative 無慈悲な若い男性 利己的 情け容赦ない 慇懃無礼 手段を選ばない


 感情の中の知性を表すカップのプリンスは身勝手な芸術家である。水は風によって嵐となる。彼の戦車を牽いているのは蠍座を表す鷲で、ヘルメットにも鷲がある。

 カップからは風の知恵を表す蛇が立ち上がり、第三のトーテムである蠍はカードに描かれていない。「水の中の風」は感情から発生する思考である。彼は鋭敏で、秘めたる激しさを持ち、全ての面で手際がよい。

 表面上は平静で落ち着いて見え、外部からの影響を受けやすいようだが、その実、それらを受け入れて自分に有利なように変質させてしまう力を持つ。集団やチームプレイよりは個人の仕事を貫こうとする若い男性である。

 格式が悪いと、権力的で利己的な面が協調される。

 愛を表す蓮は下に向けられている。カップの中を見つめる彼の姿は、己の芸術的な高みに酔っているのかも知れない。雨が降りしきり、水面に波紋を作り、背後の雲は嵐を予感させるが、彼はその力をも自分の物とするであろう。

 易との関連は61番目の卦である「風沢中孚」で、まさに水の中の風の卦である。中孚は誠や真心の意味で、相思相愛や誠意を尽くす事を意味する卦である。一般的なカードの意味からは離れているように見えるが、我を通す事は一つの誠意なのだと考えたい。

Princess of Cups カップの王女

Element 水の中の地
Zodiac 太平洋の天空

【カードの意味】
 Positive 優雅で愛らしい若い女性 優しさ 親切 ロマンティック 何事も易々とやってのける 感情に執着しない フレンドリー
 Negative わがままな若い女性 贅沢 怠惰 お人好し 甘やかし


 水の中の地は軽やかに水を吸い込む。地の部分は特に結晶化の能力を表す。踊る彼女のローブの端にあるクリスタルは感情の明晰さを示している。

 彼女の王冠の羽根飾りは翼を広げた白鳥で、東洋哲学でのAUM、宇宙開闢の音を表すとも言われている。

 左手の蓮は愛を表すが遠くに離して俯瞰している。右手の貝殻には亀がいて、これは地の示す北門を守る玄武にも見える。ヒンズー哲学では、亀は宇宙を支えている。

 そして背後のイルカは創造力を象徴する。このイルカは実在する哺乳動物としてのイルカではなく、神話や伝承の中のイメージとして描かれている、優美な魚としてのイルカである。

 カップの王女の人物像は、限りなく優雅で愛らしく、全ての官能、穏やかさ、親切、優しさを持った若いか未婚の女性である。彼女はロマンスと歓喜の夢の世界に住む。表面的には利己的で怠惰に見えるかも知れない。

 カップのプリンセスは、ある意味で理想の無垢の中にいるが、それが現実社会と相容れるや否やは隣接するカードに左右される。格式が悪ければ、全く現実的ではない夢想家の小娘となってしまう。

 好品位にあれば、他人に依存しながらも、逆にその助けにもなる人物と解釈できる。

 易との関連では41番目の卦である「山沢損」である。損はまさに損、減少している状態を表すが、この卦の示すところは「損して得取れ」の意であるという。その事から、カップの王女は尽くす女性、協力者という一面を持っている。

Ace of Cups カップのエース(水の力の根源)

Sephira ケテル
Astrology 水

【カードの意味】
 純粋な愛のエネルギー あるがままの感情 幸福 喜び 豊饒 多産 幸福と快楽 自己証明


 蓮の花からはえた杯にエネルギーが注ぎ、それは更に蓮を通して下方に注がれる。ワンドが限りなく男性的で動で陽であるのに対して、カップは女性的で静で陰である。

 しかしにながらカップは感情のスートであるから必ずしも静ではない。流れゆく感情にその杯は満たされているのである。カップの上下にあるオーラの形は、二つながらの情の波及を示している。

 カップのスートは、カップそれ自体もさることながら、カップから流れる水、液体によってエレメントとしての水の力、すなわち感情や愛の力が如何様に働くかという事を示す。エースのカードは根源のカードなので水として描かれるが、それは場合によっては血となったりワインとなったりする。

 実際の絵からは確認できないが、クロウリーの『トートの書』には、「杯の上方から、聖霊の鳩が下りてこようとしている。なかの液体を清めるためである」という記述がある。ライダー・ウエイト・タロットのカップのエースにはウェハーを加えた鳩が下りていく様が描かれている。カップを子宮に見立てれば、聖霊の降臨は受胎を表すだろう。

 また、クロウリーは「杯の底には月がある。なぜなら、その自然の第二の形態を知覚し生み出すのが、このカードの美徳であるからだ」とも記している。

2 Love ラヴ 愛

Sephira コクマー
Astrology 蟹座の中の金星

【カードの意味】
 意志の元の愛 豊かな感受性 男女の性の調和 恋に落ちる ロマンス 二人の世界 友情 喜び


 2は常に言葉と意志を表す。故にこのカードは意志の元の愛を意味する。「愛は法なり。意志の元の愛こそは」と記した『法の書』の精神を体現するのがこのカードである。タイトルは簡潔に『愛』とされているが、「意志の下の愛」と変更しても良いとクロウリーは仄めかしている。

 二つの蓮からからみつくイルカを通して二つのカップに勢いよく水が注がれ、それは優雅に海にあふれ出している。蓮は愛を表しイルカは錬金術にとって神聖な象徴であり、一般的な観念では「王の術」と呼ばれる。

 このカードは、最も広範な意味での男性と女性の調和を表し、完全にして落ち着きのある調和と、強烈な喜びと恍惚を放射するとクロウリーは記している。

 蟹座は十二宮の中で最も包容力に富み、蟹座の中の金星は奉仕的かつ排他的である。その愛には他者の入り込む余地はない。悪品位にあれば、排他的で利己的な恋愛を表すかも知れない。

 とはいえコクマーに由来するカップのには、ケテルのエースから発言する純粋な意志である。占術上においては、「恋に落ちる」という予言と見るよりも「愛せよ」という啓示として受け止めるのが賢明である。また現代においては、男女のジェンダーを超越した愛を読み取らねばならない場合がある。

3 Abundance アバンダンス 豊壌

Sephira ビナー
Astrology 蟹座の中の水星

【カードの意味】
 豊かさ 愛の芽生え 楽しみ 手厚いもてなし 娯楽 色欲 享楽 親切 博愛 遊び心 お祝い


 このスートのビナー(理解)に関係する。クロウリーによれば、デメテル、あるいはペルセポネのカードであり、冥府の王、プルートーと関連強い女神や女性のカードである。

 沢山の蓮からザクロで作られたカップに水が注がれてあふれ出している。この溢れる水は、充満する喜びの中にある「愛の意志」の達成であり、肥沃の霊的な基礎であるとクロウリーは記している。

 蟹座の中の水星は鋭敏さや記憶力を表すが、同時に軽薄でもある。物質的な満足やもてなしに対する警告が発せられていると見るべきであろう。

 またビナーに関係する3のカードは土星の領域にもある。ペルセポネはプルートーの国で石榴を食べたために、下界に閉じ込められる事になったという神話から、人生において具合の良い事は、たとえ楽しかろうと疑ってかかるべきであるという教訓を読み取らねばならない。

 このカードの豊かさが、質問者にとって吉と働くか凶と働くかは品格次第。

4 Luxury ラグジュアリー 贅沢

Sephira ケセド
Astrology 蟹座の中の月

【カードの意味】
 安心感 快適 衰退の兆し 心配と混ざった快楽 欲望の放棄 スタンドプレー 仲間割れの恐れ


 水のエレメントのケセド(慈悲)に由来する。蓮の根は複雑に絡み合い、不安定な四つのカップはもはや水を溢れさせてはいない。空は曇り、海面は波立っている。

 ケセドは木星の支配領域にあり、本来、吉相の出るセフィラーであるが、同時に、4という数は魔術的に極めて複雑にな数値である。カードの図柄からは、蓮から水は注がれてはいる物の、溢れだしてはいない事、海面が波立ち、波乱の予感をさせている事が重要である。

 すなわち、このカードの持つ水のエレメントの力は、一件、良好な状態にあるように見えるが、隠れた危険や衰退の兆しの予感を読み取る事である。

 『贅沢』というタイトルに込められた真理を理解せよ。カップは満たされているのに、質問者はその満たされたエレメントの力に不満を抱いている。品格が悪ければ、贅沢という言葉は貪欲や無い物ねだりに繋がっていくのだ。

 月は蟹座の本来の宮であり、最も強く働く。その意味するところは包容力と共にヒステリーである。エレメントの純粋さは既に失われている。

 また『トートの書』では、このカードはジオマンシーのヴィアとポプラスに関連すると述べられている。ヴィアは道や経路の事で、旅に関わる事は吉、ポプラスは人々や群衆を意味し、多くの人の関わりを暗示する。

5 Disappointment ディサポイントメント 失望

Sephira ゲブラー
Astrology 蠍座の中の火星

【カードの意味】
 満たされなかった期待 不満 混乱 頓挫 失恋 快楽の終わり 絶望 後悔


 水のエレメントのゲブラー(峻厳)に由来する。ゲブラーは激しいので、既に破壊の象徴が見て取れる。安楽時の全く予期していないときに、妨害や損失、失敗が発生する事……それ故にこの札は『失望』と名付けられている。

 蓮は激しい風によって花弁を散らしており、カップには全く水が流入していない。海は渇いて淀み、死の海となっている。これは4のカードで予感されていた損失や衰退が形を持って現れたカードである。

 火星は古くは蠍座の支配星であり、魅惑と威嚇に働くが、猜疑心と欲深さを持ち合わせる。予期された快楽は裏をかかれる事になる。ライダー・ウエイト・タロットのカップの5と比較せよ。ライダーでは失われた物の他に幾ばくかの物が残されているが、トートではエレメントの力を示す水は完全に涸れている。

 カップは逆五芒星に配置され、物質的な欲望が裏切られる事を示している。あるいは物質が精神を打ち負かしてしまう。

 『トートの書』によればジオマンシーのルベウスに関連するとされている。ルベウスは赤、伏せたグラス、逆転を意味し、悪い事には吉、良い事には凶という分かりにくい卦である。良いか悪いかは気持ちの問題であるとも言える。

6 Pleasure プレジャー 快楽

Sephira ティファレト
Astrology 蠍座の中の太陽

【カードの意味】喜び
 楽しみ 快楽 快適 幸福 幸運 成功 あらゆる欲求の満足 安らかさ 余裕


 このカードは水のエレメントにおけるティファレトの影響を表し、デカンとして配置された蠍座の中の太陽の力によって、それは更に強化される。トート・タロットにおいてはティファレトの支配する6は小アルカナのラッキー・ナンバーである。

 蓮の茎は踊りの微妙な動きで群集まり、勢いよくカップに水を注ぐが溢れだしてはいない。物質的な快楽には限界がある事を示しているのと同時に、このカードの快楽、喜びが努力や緊張を伴わない、自然な形での調和や安楽、満足を表すのである。

 4で贅沢を望み、5で失望を味わったあと、身の丈にあった、分相応の満足を得るという段階がここに示されている。

 蠍座の太陽は目的意識を自覚的に持つが、猜疑心や復讐心をも表す。背後の淀んだ地面が、錬金術的な腐敗の過程を踏まねばならない事を示している。蠍座は水のエレメントの腐敗の一面を表すからである。

 また同時に、蠍座がエロスとタナトスを司る宮である事を忘れてはならない。このカードの示す快楽は、性的な意志の達成を強調して表している。ただし、性的快楽への耽溺ではない。それは次のカードで示される。

 品格が悪いと、単なる自己満足や自慰行為の中での自己完結を表す。

 奇しくも、カップの配置はデカンの太陽を中心としたヘキサグラムの形を作っている。

 易との関連では20番目の卦である「風地観」とされる。観は見る事、仰ぎ見る事、静観する事などで、物質面よりも精神面での吉相とされている。

7 Debauch ディボーチ 堕落

Sephira ネツァク
Astrology 蠍座の金星

【カードの意味】放蕩
 耽溺 耽りすぎ アンバランス 妄想 不倫 中傷 情欲 姦淫 中傷 放蕩


 水のスートのネツァクに由来する。ネツァクは金星の支配領域であり、性愛に関連するが、デカンで配された、蠍座の中の金星が更にその意味合いを強めている。

 この7のカードは、6の快楽に必要以上にのめり込んでしまった為に起こる、不安定で脆弱な状態を描いている。蓮は鬼百合に変わり、カップには水ではなく緑色の粘液を注いでいる。溢れだした粘液は海を瘴気の沼地に変えてしまっている。カップその物の虹のような色合いも、堕落の観念を具現化する物だとクロウリーは記している。

 カップは下向きの三角形が二つながらに重なり、最も大きな一番下のカップをも毒々しく溢れさせている。6でヘキサグラムの形を作っていた三角形が二つとも下に向かっている事に注目せよ。クロウリーによれば、このカードは6のカードの表象を邪悪で嫌らしい物にしたに等しい。

 蠍座の金星は品位が悪く、金星の力は良い方向には働きにくい。よほど良いカードに隣接していれば、エレメントの愛の力が、一途な愛となっていると読み取る事も不可能ではないが、多くの場合、それはのめり込みや、耽溺する愛を表す。

 『法の書』の精神が「意志の下の愛」である事を今一度思い出すべし。性愛への耽溺は意志の力を拒絶してしまっている。

8 Indolence インデレンス 怠惰

Sephira ホド
Astrology 魚座の中の土星

【カードの意味】
 感情的枯渇 興味を失う 怠惰 無気力 不愉快 不健全 慢性化する病 物質的繁栄を捨てる


 ホドに由来するこのカードは、前の7のカード、堕落と放蕩の帰結である。ホドの水星の作用は魚座の中の土星の力によって疎外される。魚座の土星は孤独や詐欺を表す。ホドの水星の力は適切な判断力を失う。魚座の水のエレメントは穏やかだが淀んだ水でもあるとクロウリーは記している。

 蓮は花の盛りを過ぎ萎れていて、かろうじて二本の茎だけが生きており、水を注いでいるが、底の浅いカップを満たす事も出来ない。カップも古びて壊れかけている。海はもはや耕作不能の水たまりや潟となっている。水平線の光の上には重苦しい雲が広がっている。

 この状態は、一見、5の『失望』と似ているが、望んで得られなかった物の失意を表すのではなく、関心やエレメントの力への希求、それ自体が既に枯渇している事を意味する。慈悲の柱の最下層にあるホドの次元では、エレメントの力は格段に弱まっている。

 品格が良ければ、次の段階のために、物質的な繁栄を捨て去る事も意味する。ライダー・ウエイト・タロットのカップの8と比較せよ。このカードは、失望する、怠惰に陥るという予言として扱うのではなく、執着や未練を軽やかに手放すことの啓示と受け止めるべきである。

9 Happiness ハピネス 幸福

Sephira イェソド
Astrology 双子座の中の木星

【カードの意味】
 期待 希望 一時的な幸福感 恩恵 完全な成功 健康


 イェソドはネツァクやホドが中央の柱から逸脱したエレメントの力を回復させる。9はクロウリーによれば、イェソドの支配領域にある月の数でもあるのでエレメントの力を更に強める。

 中央の柱に戻ってきたエレメントの力によって、整然と並べられたカップには息を吹き返した蓮から均等に水が注がれて溢れだしている。クロウリー曰く、このカードは水の根源の力の極致と完璧さが盛観を呈している画像である。

 水の力が最も強く働いているが、その効力は永続的な物ではない。魚座の木星は芸術性や霊感を高めるが、寂寥や緊張も強いる。成功や幸福は一時的な物である。

 しかしながら、魚座に配置された木星の影響は共感以上の物である。それは明かな祝福であるとクロウリーは記している。曰く、水の力が最も完成し、最も有益である様相を示すとの事である。

 このカードに描かれたカップは、エースを除けば最も大きく、また安定感のある深い水を湛えられるカップである。しかも、そこから黄金色の液体が溢れだし、蓮の花も
また同じ輝きを放っている。トート・タロットにおいては、このカードを水のエレメントの最も良く働く力と受け取って良いだろう。

 品格が悪ければ、表面的幸福に満足して大事な物を見失っている状態、物質的に満たされていても人間関係では孤独な状態などを表すだろう。

 また、このカードはジオマンシーのラエティーシャに関連すると『トートの書』に記されている。その意味は喜び、橋、噴水、虹で、可能性、喜び、幸福に関する状況では吉とされる。

10 サタイエティ 飽満

Sephira マルクト
Astrology 魚座の中の火星

【カードの意味】
 退屈 飽満 飽き飽き 持続する成功 浪費 お節介 感情をもてあます 依存


 ウェイト・タロットやGDタロットでは大吉を示す10のカードは、このトートでは完成と言うよりもやり過ぎとみなされる。従って、マルクトに属するこのカードは完成と過剰の両面から捉えねばならない。

 カップは生命の樹、セフィロトの形に並べられ手いるがその傾きは不安定である。巨大な蓮(他のカードと違って、具体的な蓮ではなく、図案化された象徴としての蓮である)から各杯に水が注がれて溢れだしている。だが、溢れだしているのは中央の柱に位置するカップだけで、慈悲の柱と峻厳の柱のカップは傾きながらも水を溢れさせてはいない。

 魚座の火星は献身と自己犠牲に加えて甘えや依存も意味する。完結したエレメントの力の争乱を予想させる。

 トート・タロットにおいて、スモール・カードの10を解釈するには、その他のタロットとは異なった深読みを必要とする。ワンドのスートでは、有り余る情熱が抑圧という事態を招いた、このカップのスートではどうであろうか?

 カップのスートの持つ水のエレメントの力は本質的には「愛」である。しかるに、カップの10は愛の極北であると同時に限界である。従って、品格が悪ければ、マンネリに陥った愛、倦怠期の夫婦というような占断が可能である。

 品格が良く、他にも良いカードに囲まれているならば、それは充足した愛の継続や持続と読み取る事も可能であろう。いずれにしても、水のエレメントの作業はここに完結する。良くも悪くも「意志の下の愛」の到達点がここにあるという事になる。」

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