トート・タロット図解
４ ソード（剣）
ソードのスートは四大元素の「風」を象徴し、思考と理性のエネルギーに関わる。
またソードはロジックとトラブルを表すスートでもある。「剣は元々人にとって良いものではないから」とはA.E.ウェイトの言うところである。
精霊はシルフ、対応する大天使はラファエルである。方角は東。
古来、ソードのスートは貴族階級を表すと言われたが、今日的解釈においては、大きく政治家や官僚、公務員などを表す。
全てのソードはティファレトに帰属する。
Knight of Swords ソードの騎士
Element 風の中の火
Zodiac 牡牛座21〜双子座20
【カードの意味】
Positive 器用で行動的、利口な男性 激しさ 勇気 直観 一点突破
Negative 決断力を欠いた男性 軽率 独断 非論理的
ソードのナイトは風の中の火の部分を表す。それは思考から発生する情熱や直観である。
彼は激しい嵐であり、突進する場所をわきまえている。両手には剣と短剣を握り、その方向に対して攻撃的である。
思考に対して情熱のバランスをとり、ヘルメットについたプロペラが彼を宙に浮かせている。
その目標に対する集中は馬の視線と編隊を組んだツバメによって表されている。右手の長剣、左手の短剣はそれぞれ目標に向かって突き出されている。
ワンドやカップのナイトと異なり、ソードのナイトは下方に向かって稲妻のように突進している。クロウリーは「狂った馬」と記している。
このカードの人物像は、活動的、技能的、鋭敏で巧妙な年配の、もしくは既婚の男性である。彼は激しくて、繊細で、勇気があるが、自分の考えに強く囚われてしまう。熟考よりも思いつきを重んじる。
品位が悪いと、彼は一転論理的な決断の出来ない男性となる。彼の行動は、反対者によって容易に払いのけられてしまうだろう。
支配領域にある双子座は、柔軟な対応力を発揮するが、品格が悪ければ移り気になる。人物に心当たりがなければ質問者には集注した一点突破をアドバイスする事。
『トートの書』での易との関連は、32番目の卦である「雷風恒」である。恒は恒常、普遍で変わらぬ事を意味し、このカードの図柄から受ける印象とは別の意味であるように思えるが、易経には「雷風は恒なり。君子をもって立ちてかたをかえず」とあり、迅雷疾風は物事を変えるが、その事によって安定すると解釈する事が出来る。迅速な行動こそ安定に繋がるという事である。
Queen of Swords ソードの女王
Element 風の中の水
Zodiac 乙女座21〜天秤座20
【カードの意味】
Positive 洞察力と観察力に優れた女性 偏見がない 明晰 寛大 理解力
Negative 陰険で冷酷な女性 厚かましい 狡猾 信用できない
ソードのクイーンは風の中の水の要素を表す。それは思考から生まれる感情で、この元素の伝達力を表す。
玉座は雲の上にあって、兜の羽根飾りは子供の頭であり、鋭い光線が何本も出て彼女の王国を照らしている。上半身は裸で、煌めくベルトと腰布をつけている。
右手に剣を持ち、左手に切り取ったばかりの髭を生やした男の顔がある。彼女は偽りの仮面を剥ぐマスクカッターでもあるのだ。
このカードの人物像は、極めて直観に優れ、観察力と理解力を併せ持ち、丁寧で公正な年配の、あるいは既婚女性である。クロウリーによれば、全くの個人主義者で、考えを記録するのが素早く、正確である。自信に満ち、身のこなしは優美で踊りと平衡の感覚にずば抜けて優れている。
品位が悪いとそれらは取るに足らない目的に費やされる。残忍で悪賢く、信のおけない女性になる。外面の美しさ故にそれは甚だ危険な物になる。
性格は元々優れているが、妨害には耐えられない。先見の明、慎重さ、行動する前の準備の注意深さが予防手段となるであろ
易との関連では、28番目の卦である「沢風大過」とされている。その意味は文字通り大いに過ぎるであって、重すぎる負担を持つべきではないという警告とされる。
また、エテイアやA.E.ウェイトの設定ではソードの女王には未亡人という意味が与えられている。私の考えでは、それをトート・タロットのソードの女王にそのまま重ねる事は推奨しない。ただ、風の中の水は、常に論理に感情の負荷がかかるので、その点を注意しないと孤立を招く恐れがあるという警告となるだろう。
Prince of Swords ソードの王子
Element 風の中の風
Zodiac 山羊座21〜水瓶座20
【カードの意味】
Positive 純粋な教養を持つ若い男性 固定観念を破る 批判的知性 独創性
Negative がさつで信用ならない男性 八方美人 散漫 目標が定まらない
ソードのプリンスは風の中の風を表し、ティファレトに帰属する。
知性を表す風の風である彼は何処までも知的だが、彼の戦車は羽の生えた子供達に牽かれていて、その方向はバラバラである。よほどの事がないとその知的関心は一点には定まらない。それがナイトとの違いであるが、同時に右手に剣、左手には鎌を持ち、自分の作りだした物を即座に壊す。
彼は新たな創造を常に行うパイオニアである。ヘルメットの上にはやはり子供の顔がある。クロウリーは、それが秘密の王冠を意味していて、ティファレトを意味するの物であると記している。
このカードの人物像は、純粋に理知的である。情や感覚には左右されない。頭の中には多くのアイデアや企画があって、実はそれらの自身の考えにすら関心を持っていない。既存の原理から限りなく自由でいるので、後悔や良心の呵責無しに、考えられる限りの論理を主張し、推し進める事が出来る。
品格が悪ければ、彼は目標の定まらない八方美人となるだろう。愛や情けに囚われない思考は、時として残酷に作用する場合がある。正しい事が幸福な事だとは限らない。
易との関連では57番目の卦、「巽為風」である。まさに風の中の風の卦である。その意は風の吹くままにと言われ、カードの絵柄で、戦車を引く風のケルビムが赴くままに何処へでも行くと考えても良いかも知れない。時には風任せと云う事も必要になるのである。支配する宝瓶宮（水瓶座）は博愛の宮であり、それはソードの王子の柔軟性である。
Princess of Swords ソードの王女
Element 風の中の地
Zodiac 南北アメリカ大陸の天空
【カードの意味】
Positive 厳格で現実的な若い女性 雲を切り開く 管理能力 実際的な知性 不屈の精神
Negative 軽薄で小利口な低俗な若い女性 攻撃的 復讐的 怒り 小賢しさ
風の中の地を表すソードのプリンセスは、不安定な要素の定着を表す。それは思考から産まれる感覚であるので、彼女の知性は現実的に働く。
天から地への影響を象徴し、ミネルヴァとアルテミス、またヴァルキューレをも暗示する。また神の怒りを表すようにヘルメットにはメデューサの羽根飾りがある。火の消えた祭壇から上昇する彼女は目前の雲を切り裂くように剣を振るい、プロペラか手裏剣のような翼を纏っている。この手裏剣ないし折り紙の風車のような幾何学模様は、このスートのスモールカードには、度々形を変えて描かれるので、覚えておく事。
彼女の知性は実際的であり、厳しく、執念深く破壊的である。断固とした主張と、物質的な面で役に立つ知恵と手際の良さを具えている。聡明で論争を解決する能力にも長けている。
品位が悪いとそれらの性格は低俗な狡賢さに堕してしまう。エテイヤウェイトは、トラディショナルなデッキではプリンセスに相当するソードのペイジにスパイの意味を与えている。
易と関連付けられているのは18番目の卦である「山風蠱」である。これは山によって遮られた風という八卦の組み合わせを持っていて、腐り始めた食べ物というのがイメージフレーズである。小さい事に拘る事で大事を見失ってはならないという警告の卦として捉えられる。
Ace of Swords ソードのエース（風の力の根源）
Sephira ケテル
Astrology 風
【カードの意味】
知性 勝利と敗北 諸刃の剣 決断 明晰さ 閃き 征服 渦巻くフォース
ソードのエースは純粋な知性であり火と水の結合の結果である。テトラグラマトンのヴァウで、イェッツラー界を支配する。
風の本質は「その欲するところいずくにも吹く」である。思考は意志と繋がるので、クロウリーのテレマ主義にとって、ソードのエースの意味するところは神人合一に向かう人類の意志である。
剣の柄は潜在意識のマインドを示す三日月で出来ており、知恵の蛇がからみついている。刀身には法の言葉テレマ(意志)が刻まれている。クロウリーによれば、これは魔術師の剣であり、戦士の武器ではない。
剣の切っ先が達した王冠は勝利を意味し、その光芒はアティユと同じ22本である。ソードのエースは思考の純粋な明晰さが洞察の閃きに達した事を意味している。雲は払われ光に満ちている。
ソードのスートは全ての知的な顕現を管理するが、常に複雑で混乱している。合体した火と水の葛藤がその原因である。風は火と水に対しては相生であるので、隣接するカードに注意する事。
２ Peace ピース 平和
Sephira コクマー
Astrology 天秤座の中の月
【カードの意味】
静観 相反するものの統一 呉越同舟 混乱の収拾 安らぎ 平和を保つ事
平和のカードはコクマーに由来する。コクマーの支配は意志を表し、２のカードはスートのエレメントの力を最も良い形で発動する。そのエネルギーは急襲する崩壊を受けずに持続する。
交差する二つの剣は青白い薔薇によって統合されている。この薔薇は母の影響を表すとクロウリーは記していて、思考がハートの中で休息する状態に至った事を示している。
薔薇は白色の光線を風車、均整を象徴する幾何学模様を作っている。ほぼ、プリンセスの背後にあった幾何学模様と同じ事に注目せよ。
天秤座の中の月は調和を意味するが同時に優柔不断でもある。平和が持続するか否かは隣接するカードの影響を受けるが、基本的に天秤座の月の力が平和を持続させる。
ゴールデン・ドーン・タロットでは「回復された平和の主」という秘密の名称を持つが、トート・タロットでは、回復が必要な混乱や争乱は前提とされていない。それはむしろケセドの支配する４で現れる。
３ Sorrow ソロー 悲しみ
Sephira ビナー
Astrology 天秤座の中の土星
【カードの意味】
不幸 メランコリー 憂鬱 遅延 欠陥 目標の喪失 痛み 欲求不満
ビナーはここではケテルとコクマーの三位一体を完成させる慈悲深い母ではない。偉大な海の暗黒である。この状況について、クロウリーは自著『霊視と幻聴』の参照を推奨している。ただし、『霊視と幻聴』はクロウリーのパスワーキングにおけるとりとめも無い幻想を多く含むので注意する事。
三本の剣は不均等で、魔術師の剣は二本の曲がった剣の結合を断ち、その衝撃は薔薇の花を散らしている。背景では容赦のない夜の元で、嵐がそっと忍び寄っている。
このカードは暗く耐え難い混迷を意味している。クロウリーは、これを混迷する子宮と呼び、激しい想像の情熱が潜んでいるが、その子供達は怪物であると述べている。
天秤座の土星は自己卑下と自己管理の克服を意味している。悲しみを克服するための手段を周囲のカードから探すべし。
件のプロペラ模様は分断されて散っている。これは風のエレメントの持つ思考の力が、感情その他の、何らかの要素によって疎外されている事を示すと思われる。やはり隣接するカードに注意が必要である。
４ Truce トゥルース 休戦
Sephira ケセド
Astrology 天秤座の木星
【カードの意味】
あるがまま 現実を許す 混乱からの脱出 争いの後の平和 休息 妥協 受容
ケセドに由来する４は木星の影響を受ける。デカンの配置も天秤座の中の木星で、木星の力は更に高まる。それ故に、このカードは知性の世界における権威という観念を讃える。それは精神的混迷からの避難所である。
天秤座の木星は誠実や奉仕を意味するが、卑下や堕落も意味する。そうした意味では、タイトルにあるこの休戦は妥協の産物である。
聖アンデレのＸ字型の十字架で交差する四本の件は、大輪の薔薇に収まっている。十字架の緑色は困難の受容に導いた創造性と受容によって導かれる創造性を意味し、背景の青は明晰さを象徴するが、蜘蛛の巣状の模様が困難や複雑さの中での休戦を物語っている。幾何学模様はかろうじて上下左右に形を留めている。
妥協であるが受容する事での休戦であり、あるがままを受け入れるマインドの状態である。品格しだいで、その休戦が必要な休息であるのか、強いられた妥協の産物であるのかを判断すべし。
５ Defeat ディフィート 敗北
Sephira ゲブラー
Astrology 水瓶座の中の金星
【カードの意味】
敗北 失敗 弱さ 凶兆 悪意 裏切り 愛の破局 貧困 悲嘆 負けを認める
ゲブラーの峻厳はここでも崩壊を導く。敗北は知的な衰退と混乱による物かも知れない。
ゲブラーは火星の力を及ぼすが、水瓶座の中の金星は同士的で個人主義的な愛の形を意味する。それが平和主義的な裏切りだとクロウリーは言っている。その敗北の原因は、過剰な力よりも脆弱さが災いの原因となる。
剣の柄は逆型の五芒星を形成し、いっそう不吉な象徴となる。剣は曲がっていて、柄の形はどれも似ておらず、刃も曲がったり欠けたりしている。最も低い位置の剣だけが、先端を上に向けているが、武器としての力を殆ど発揮していない。４にあった薔薇はすっかり破壊されて、花弁が逆五芒星を描いている。
背後の光は敗北を受け入れる事で次の創造性に繋ぐという希望である。良い品格の中にあれば、「負けるが勝ち」という希望を見出す事が出来るだろう。
６ Science サイエンス 科学
Sephira ティファレト
Astrology 水瓶座の中の水星
【カードの意味】
客観的な明晰さ 分析 科学的研究 到達点に来た知性 困難の克服 目標を見出す 方針の決定
ティファレトの太陽の力はエレメントの本質を復活させる。科学的態度に昇華された知性の働きである。クロウリーは６という数字その物が知性に関係するのだと記している。
水瓶座の中の水星は、天空のエネルギーが人間のケルビム天使に作用して、知性と人間性を強める働きをする。その性質は、協調的な着想を意味するがオタク的でもある。知性は極限まで高められる。
剣の柄は六芒星の形を作って、六つの正方形を組み合わせた薔薇十字の中心で交わっている。科学的な明晰さは薔薇十字会の秘教的な知恵に結実していくのである。
クロウリーはこのカードの表象について、「全ての精神的、道徳的能力の完全な平衡を勝ち取る事は至難であるし、常に変化する世界ではそれを保つ事はほぼ不可能であるが、それを最大限に解明するに当たっては、化学的概念を示す必要がある」と『トートの書』に記している。
知性の極限の発動とは科学的な姿勢であって、それはオカルトの世界にあっても同様である。風車の幾何学模様は、交差する平行線と交わって、あたかも魔方陣のような配列になっている。
品格が悪いと、知識のための知識の渇望を意味するであろう。すなわち、オタクである。
７ Futilityフューティリティー 無益
Sephira ネツァク
Astrology 水瓶座の中の月
【カードの意味】
無駄な争い 継続しない努力 無意味 時間の無駄 強すぎる相手への空しい敵対
ネツァクの破滅の力は５ほどには絶望的に働かない。とはいうものの、水瓶座の中の月は、独創的とはいえ自己満足に陥る事を示す。
強力な一本の剣に、六本の小さな剣が立ち向かっているように見えるが、それぞれには別の惑星のマークがついている。それはどうして事が上手く運ばないのかという無意識の誤魔化しが混乱している事を示している。
本来無意味である事を体験し自覚する事で、より価値の高い事にエネルギーが向かうのであれば、このカードの意味は必ずしもネガティブではない。金星の支配領域であるネツァクは勝利を意味するからである。
このクロウリーによれば、カードは４の「休戦」と同じく、宥和策を暗示する物だという。気の迷い、妥協したいという願望、ある種の寛容さがあり、強すぎる相手に立ち向かっても無駄であるという諦観が必要だとされる。
品格が悪ければ敗北主義を意味するかも知れない。背後の幾何学模様はあまりに大きすぎる手裏剣のように見える。
８ Interferenceインターフェレンス 干渉
Sephira ホド
Astrology 双子座の中の木星
【カードの意味】妨害
予期せぬ妨害 不運 混乱 相反する考え 優柔不断 忍耐の欠如 制限
ホドに由来するこのカードは、知性と論争の問題における持続力の不足を表すが、双子座の中の木星の軽快さが弱まっている努力にも幸運を与えている。にもかかわらず、意志は偶発的な干渉によって絶えず妨害される。
下を向いた二本の剣に交差する、三本ずつ向きを変えた剣は、様々な形をしていて、干渉に対処する選択肢があまりにも多岐にわたってしまう事の混乱を意味している。剣の形は様々な国の様々な文化の中で作られてきた刀剣類である（日本刀はないようだ）。
背後の幾何学模様はやや乱れ、毒々しく、また暗い色の背景に染められている。絶え間なく続く妨害や干渉に対して忍耐が求められている。
このカードをポジティブに読むためには、まず、分からない、混乱しているというマインドの状態、それその物を受け入れる必要がある。また、ホドは水星の支配領域であるから、このカードの困難を解決して「栄光」に導くためには知恵を絞る必要がある。
ここに描かれた多文化の剣の中に日本刀（サムライ・ソード）が無い事は、日英が戦争状態にあった第二次世界大戦時がトート・タロットの作成時期と重なる事があるかも知れないと愚考する。
９ Crueltyクルエルティ 残酷
Sephira イェソド
Astrology 双子座の中の火星
【カードの意味】
激しい苦悶 絶望 心配 悩み 理性の敗北 自己不信 自己批判 罪悪感
イェソドはエレメントの力を中央の柱に戻し、８での無秩序が修正されるが、その力は衰退の極みにある。
双子座の中の火星は、器用に立ち回ろうとして焦燥を感じている。ソードはもはや純粋な知性ではなく、熱意のない感情の自動的な発動を表す。イェソドは月の支配領域で、最も低次のアストラル・レベルと潜在意識を表すので、質問者にはこのカードの示す苦しみや悲嘆という物の原因に対して自覚的になれない可能性がある。
ソードの力は純粋な知性が感情に負けた事を示す。下に向けられた剣はギザギザで錆びつき、血を滴らせており、背後にはクロウリーによれば毒液、マンガラ・ビルソンによれば涙が流れ落ちている。幾何学模様は乱れ、やはり衰退した知性を表すかのようである。
このカードをポジティブに読むためには、苦難や苦渋の受容というマインドが必要である。品格が悪ければ、質問者の苦しみに解決策が見いだせなくなる。他のカードの中から、苦悩の原因を探し出す事。
１０ Ruin ルイン 破滅
Sephira マルクト
Astrology 双子座の中の太陽
【カードの意味】崩壊
崩壊 堕落 狂気 現実逃避 総決算 再建の為の破壊 手放す 諦める 執着を断つ 下克上
マルクトに由来する10は常にエレメントの極地を表す。それは狂気に堕した理性、魂を持たない機構のいい加減な騒乱である。
双子座の中の太陽は器用貧乏な情報収集を表し、エレメントの力は混乱の極みにある。剣の柄は生命の樹の形を作ってはいるが、太陽を示すティファレトの剣はその他の剣によって打ち砕かれている。６で示された科学に昇華された知性がここでは破壊されてしまうのだ。
破壊されたティファレトの剣は、破滅の光を周囲にはなっている。手裏剣の幾何学模様は、どのカードよりも複雑な角を描いていて、破壊の力の激しさを象徴しているようだ。
破滅のカードは何かの終わりではあるが出来事の終わりを意味しない。それは執着を断つ事による再建のための破壊であり、軽やかに諦め、手放す事の啓示である。品格が悪ければ、破壊は自滅的な物になるが、建設に向かうカードが他に出ていれば再起のチャンスはあるだろう。
このカードにも易との関連付けがされており、それは43番目の卦である「沢天夬」である。夬には「決する、決断、決定する、邪魔者を取り除く」の意味があり、下克上を暗示する卦だとされる。ライダー・ウエイト・タロットのソード10と比較すれば、その導き出す答は明らかになる。支配者、上位者にとっては暗殺と言った不吉な暗示を含めて足をすくわれ、倒される事、抑圧された物には、それらのプレッシャーを排除できることを意味するであろう。
ゲストの立場とその質問内容によって、このカードは吉札にも凶札にもなる。