鍛冶作業記録
酔鍛磨庵の作業から
2005年5月6日
酔鍛磨庵を開いてまもなく5ヶ月です。40日近く作業をしています。連続した作業は大切なことですね・・・。鍛接の作業は自信を持って出来るようになってきましたし、焼き入れ・焼き戻しの作業も変な緊張が無くなりました。
さて、このところ『冷間鍛造』をしっかり行うことで焼き入れ時の反り方が違うことを実証してきました。思えば昨年夏、須賀川での作業で、焼き鈍しを掛けた黄紙2号を使った剣鉈の厚みが気になった部分を冷間鍛造で修正し、焼き入れをしたら鋼側に反った(以後 「しゃむく」)事がきっかけでした。しゃむいた剣鉈、地金側から叩いて修正しようとして見事に割れてしまいましたが、このことがなかったら今がないです。
冷間鍛造の効用は自分なりに考えた事として次の図のようになるのではないかと思います。
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焼き鈍しによりストレスが解放された鋼を冷間鍛造することで鋼には圧縮のストレスが掛かるはずです。焼き入れ時の加熱でこのストレスはまた解放されるはず、それを急冷すると、鋼の膨張が起きる訳ですが、ストレスを解消された鋼の内部には、この膨張を飲み込むゆとりが出来ていて、冷間鍛造の仕方によって、飲み込みきれないときには「反り」として、飲み込んであまりある場合は「しゃむき」が出るのではないかと考えています。
これは全くの私見で、ただ漠然と考えていることですが、酔鍛磨庵の作業で冷間鍛造をしっかり行った物は反りがほとんど無かったり、しゃむいたりしています。鋼をコントロールする大切な作業、それが『冷間鍛造』だと考えるようになりました。
そこでです、昨年夏から初めた『割り込み鋼付け』ですが、過去(4月までに)4本作り、ことごとく失敗して来ています。そこでこの大型連休の作業は『割り込み鋼付け』をする事をテーマにしました。
割り込み鋼付けは周りを地金が取り囲むわけで、焼き入れ時に鋼が暴れて、鍛接面を引き裂いたりします。この鋼の暴れをコントロールするのは『冷間鍛造』・・・・。そこでチャレンジしてみました。
詳しい作業の様子は『酔鍛磨庵日誌 (5月4日・5日)』を見てください。NHK BS2で放送されている『チャングムの誓い』に出てきた包丁を作ってみることにしました。 冷間鍛造は充分と思うだけしたつもりですが・・・・
鋼部分に刃線に平行にヒビが入りました 刃先から3mm位の所 鍛接線はその上4mm
結果は今回も鋼の暴れに負けてしまいました。写真のように鋼の内部に刃に平行にヒビが入りました。パイ皮の様に剥がれている感じです。
(-_-)
荒砥ぎしてみた結果、刃の終点から3cmの所、刃線から3mm
上にほぼ刃線に平行に33mmのヒビ、ヒビの上部4mmの所に鍛接線があります。
鍛接面の剥がれはまったく無しです。鍛接は100点満点の出来です
(^o^)
このことから考えると、このところ鍛接はしっかりくっつくようになっていますから、鋼の膨張を鍛接面は抑え
きったのだと思います。逃げ場のない鋼の膨張による歪みは、鋼自身を引き裂くことで解消されたと考えら
れます。もっとズバリと言えば、この部分の冷間鍛造が不足していたと言うことになるのだと思います。悔しく
もありますが、良い勉強になりました。幸、刃線に沿って3mm上ですから、使う分には問題なさそうです。ど
んどん使って、このヒビがどこまで続いているか確認してみたいと思います。
本日、割り込み鋼付けで作った、木轆轤用のバイトの研ぎを掛けました。鍛接線の荒れと思っていた傷は
研いでみると何と上記と同じヒビでした。鋼に剥がれが出ていました。
ヒビの部分に赤線を入れました
このバイトは割り込みと言っても、地金の先をYの字型に切り、そこに鋼を挟み込んだものです。丁度上記の包丁の断面を見ているような状況になるわけです。この様子を観察すると、深さ13mm位まではヒビが入り込んでるようです。と言うことは、「チャングムの包丁」は出ている部分より10mmも奥にヒビが入り込んでることになりますね・・・・。
『割り込み鋼付け』は5連敗です。難しいですね
!!
だから面白い
!!
俄然ファイトが出てきました。
『割り込み鋼付け』のコツなどご存じの方、どうぞ熊公にご教授下さい
!!
宜しくお願いいたします。
m(_ _)m
夜、剣鉈を持って山に入った兄から連絡がありました。熊公の誕生日に向けてのメッセージと共に
『ありがとう。とにかくよく切れた。直径10cmの木の枝も
気合いで楽々切れた。細い枝などはカッターナイフの様に
サクッとね。
反響大です
!
モニター続けます。メンテナンスもよろしくね
!
』
というメールと写真が入りました。同僚の方達にすごいと言われたようで嬉しくなります。使用に耐えて初めて剣鉈なわけですから、これからの兄のモニターが楽しみです。
(2005.05.06.)
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