鍛冶作業記録

2004年鍛冶作業スタート 2004年3月25日〜28日

 暖かくなってきました。25・26日の2日間休暇を取り、2004年の鍛冶作業スタートです。 
 今回のテーマは『中子側の鍛接不足をなくす』ことです。

 今回はコークスを試そうと思っていましたが手配するのが遅くなり、結局今まで通りの松炭を使っての作業になりました。松炭は1日分を切るのに1時間掛かります。限られた日数での作業ではこの1時間は貴重です。コークスを使用できるように火床を改良しましたから、小指の先くらいの大きさ(何分と言うのでしょうか?)のコークスを用意しておけばすぐに作業に取りかかれるわけです。次回には必ず用意しておこうと思っています。
 ただし、今回炭切りをしていて、炭を切るコツのようなことを知りました。今までは角材の上で割るようにしていたのですが、角材の角を使い、押切の刃のように鉈を使って剪断する方法をとると能率良く炭を切ることが出来ました。「炭切り○年・・・」と言われますが、鍛冶作業5年目に入り、炭切りは何とか習得した感じです。

 初日は鍛冶作業場の設営、炭切り・藁灰作り・火かき棒作りにほぼ午前中掛かり、午後から1本鍛接・鍛造・焼き鈍しまで行いました。
 今回作った火かき棒は、L字に曲げた部分をロストルの幅とほとんど同じにしたもので、火床の奥の炭をかき集めるのが非常に楽になりました。

 2日目は初日のナイフの成形、2本の鍛接・鍛造・焼き鈍し、そして初日のナイフの焼き入れ、焼き戻し作業をしました。このナイフの焼き反りをとっているときに中子側の鍛接不足部分にヒビが入り、このナイフは没になりました。
 焼き反りを取るのに昨年8月までは金床を使っていました。9月の作業からは堅木(紫檀?)の角材を使っています。今回は凹面を作り、その凹面の深さや広さの違う部分をいくつか作って、反りを取るときに都合の良い部分を探すようにして使うようにしました。

 
       堅木の焼き反り取りの台               相豊ハンマーさんで購入した火作り鎚1kg(下)

 今回の作業には新潟三条の『相豊ハンマー』さんで購入した1kgの火作り鎚を使ってみました。写真下のものです。上の鎚は岡安鋼材さんで購入したものですが、比べて分かるように、ややうつむき加減に角度がついているもので使いやすい鎚です。送料・消費税など込みで7000円ほどでした。自分の形を注文した場合は9500円ほどになるそうです。自分の形の鎚を作ってもらう場合は木などで実物大の模型を作って送るとその形に作ってくださるそうです。
 相豊ハンマーさんのURLはhttp://www2.ocn.ne.jp/~aitoyo/です。
 ここの社長さんも親切な方で、ベルトハンマーについて質問したら、丁寧にお答えくださり、中古のベルトハンマーの情報もよこしてくださり、現在も進行中です。今でもベルトハンマーを作っている会社はあるそうで、据え付ける工費を含め150万円もするそうです。工房持ったらベルトハンマーも欲しいな!!

 3日目、2本のナイフ(柄部分を共金にした小刀)の鍛接・鍛造・焼き鈍し、前日の2本のナイフの成形を行いました。今回鍛接を平行して行い、鍛造も平行して行うようにしましたので、夕刻までには2本とも焼き鈍しは終了。このナイフも整形をし終えて、夕刻には4本のナイフの焼き入れ、焼き戻し、焼き反り取りをしました。
 これまで、技術の未熟さから1本作ったら次に取りかかるようにしていましたが、伯父の先手もあり、大分技術が持ててきたので、このように平行して作業を行うことで作業がスムーズに進む事になりました。

 3日目に作ったナイフ(小刀)は鍛造そのままを成形するワイルドな物にしてみようと思い作りました。昨年夏、信州古間の鍛冶屋さんの作られたナイフ(小刀)を手に入れました。これをまねた物ですが、そう簡単ではありませんでした。まず、焼き肌をきれいに作りそれを残すということはなかなかできないことを知りました。今回作った物はムラだらけ、恥ずかしいです。(^^;)

 今回の作業では、2日目の午後からロストル部に異変が・・・・。厚さ3.2mmの鉄板で作ったロストルに穴があいてしまいました。熊公の火床は改修の結果前後に2つ部屋を持つ羽口の構造ですから、いつもは前側の羽口を使います。こちら側に酸化による減りで穴が開いてしまったのです。火力には変化はほとんどないものの、炭を掻き集めたりする時に不自由が出ました。


酸化によってボロボロになったロストル

 次回までにこのロストルを新しい物にしなければなりません。厚さは1cmくらいの物にしようと思っています。そして、前室・後室に分けるのではなく、気室は1つにしようと思っています。どの様な火床が作業しやすいのか大分見えてきましたから、まずは設計図を作り、厚さ1cm程の鉄板に穴を開けてくれる工場を探さなければなりません。自分で作るとなると穴開けに何日掛かるか? いつもお世話になっている工場でフライス盤を使用させていただくとなると、これまた相当の時間が掛かりそうですから、作ってくれる工場を探すつもりです。
 3回の作業で3.2mmの鉄板がダメになると言うことは、1回(3日ほど)の作業で1mmずつ薄くなった計算です。

 今回の作業では5本のナイフを作りました。うち1本は中子側にヒビ、これは作品のかずには入れられないです。残りの4本もテーマにした中子側の鍛接不足をなくすと言う事柄には一寸ほど遠い感じです。始めの鋼の寸法かと思い3日目には4cmの鋼でやってみたのですがしっかり鍛接不足が出ました。素人考えですが、中子側は地金が長くのびているわけで、冷却が早いのではないか?と思いました。これでもか!!と言うくらいに加熱しているつもりですが・・・・。
 もしくは、ハンマー使いの悪さですね、カイサキ部分が峯に対して90度になっているわけで、この部分に鍛接不足が出るということは、ハンマーの打ち下ろし方に問題が有るのかもしれません。今後の課題です。次回の作業では鍛接時に中子側を打つときは90度ずらして叩き、密着をはかろうと思っています。それから、鋼を思いっきり直角三角形みたいにして鍛接したら良いのかとも考えています。

 
今回の鍛接時に成形した鋼の様子
左はいつも作っているナイフの形用、右は柄共金の小刀用

 
今回作った5本のナイフ 一番下のナイフは没になりました
中子側の鍛接には問題ありますが、それ以外はまずまずの出来だと思っています。

 今回の作業でも、焼き入れ時の反りはそれほど大きくなりませんでした。上の写真の下から2番目のナイフはほとんど反りは出ない状態。昨夏秋田で教わってきた温度の管理が上手くいったものと思っています。硬度の方も問題ないものと思っています。

 最終日28日は午前中に荒砥ぎをして東京に早めに帰る予定でしたが、4本の荒砥ぎは思いの外時間が掛かり、結局午後まで掛かってしまいました。このことから3日間(4泊4日−前日の夜に須賀川入りする−)で作業する場合は、
 1日目に設営後、鍛接を必要な分行う。
 2日目には鍛造、焼き鈍しを行う。
 3日目には成形、焼き入れ、焼き戻し、荒砥ぎを行う。
 最終日は予備の時間として、撤収をメインにする。
と言ったパターンで作業するのが一番効率が良く、炭の消費量も少なくてすむ事を知りました。今まではとにかく1本ずつ仕上げていくように作業してきましたから、無駄が多かったと思います。作業の手順や掛かる時間がだんだん分かってきましたから、更には先手が出来ましたから、作業のパターンが見えてきました。
 それにしても鍛冶作業場の設営・撤収にはそれぞれ2時間も掛かります。そのため須賀川に行って作業する場合は3泊はしないとなりません。家の近くに工房を持つことが出来れば、土日にでも作業が可能なわけです。アアア〜〜〜工房が持ちたいな!!
 今年は仕事のスケジュール上そう多く作業は出来そうにありません。次回はおそらく8月までお預けです。残念だな〜〜〜!!
(2004.04.01.)





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