鍛冶作業記録

秋田での鍛冶修行  2003年8月20日〜22日

 8月末にアップしたものの焼き直しです。
 修行させていただいた鍛冶屋さんからの依頼があり、内容を訂正させていただきました。
(2003.09.25.)

第1日目

 8月16日から19日までの須賀川での鍛冶作業をした後、その足で秋田県 G町の『N製作所』に鍛冶の修行に行きました。須賀川からは420km位です。6時間と見積もって午後2時にお伺いする旨を伝えてありました。
 東北道「菅生PA」付近で衝突事故があり、白石IC〜仙台南IC間が通行止めとなり、慌てました・・・。白石ICでの約1kmの出口渋滞に30分近く待っていると、出口まで300mという所で通行止め解除となり、ラッキーでした。
 須賀川を出るときは雨でしたが、北上するにつれて青空が見られるようになり、久しぶりの晴れ間になんだかウキウキするものを感じました。
 G町には午後1時45分に到着、N君(熊公の勤める学校の卒業生)と会うことが出来ました。今回は師弟逆転、一から鍛冶作業を教えていただくことになります。「先生」とは言わないように「熊さん」と呼んでもらうようにました。
 G町は非常に静かな町でした。木材生産が盛んな町だったようです。そして、城下町。毎月2・5・7・0の付く日に朝市が立つ町で500年の歴史があるそうですが、人口は減り続けているそうです。10年前25000人だった町が現在では13000人位という話を聞きました。鍛冶屋の町G町は今は昔の話で、現在はN君の所と、もう1軒有るだけだそうです。
 好きな物はすぐに目に入ります。造り酒屋を見てワクワクしました。

 N君は熊公が新任の時の4年生でした。そして不思議なことに、中学は熊公のワイフが勤める学校に・・・。不思議な縁です。  もともと自動車開発の仕事をされていたのですが、鍛冶屋に転身されました。
 「怖いところもあるのですが・・・」と、言っていましたが、自分の作品を科学的に判断するため、金属顕微鏡で組織の状態を見たり、硬度試験や脱炭層の検査などしっかりデータを取り作業されています。また、全国の鍛冶屋さんを歩き研鑚を積んでいます。
 ナイフのファンの方はナイフを集め使わないで取っておく方がいらっしゃいますが、N君の製品は優美かつ実用に合わせたもので、狩猟やキャンプ、仕事で使われる方からの多くの情報を集めて、それに合わせた製品を作り出しています。使うには一寸もったいないかな?と思うくらい綺麗な物ですが、「バンバン使って使い減らしてもらいたい!!」というのが彼の考え方でした。ですから、ハードに使っても駄目にならない物を作っています。

 
製作所の前に見えるのどかな景色

《 お願い と 確認 》
 これから記述することは、N君から習った事柄を自分なりに解釈して書くものです。その全ての文責は熊公にあります。特に、温度の記述、火色の図については正確に火色を見る技もありませんし、温度計を持っているわけでもありませんから、あくまで目安であって、そのものズバリの温度を行っているわけではありません。熊公が作業の中で見て感じ、今までの勉強、特に幸光さんから頂いた温度表をもとにして示すものです。ここは経験と勘が必要な部分であって、熊公は一つの基準というか、その場の様子を分かっていただくために参考となるように温度と火色の図を書かせてもらいます。火色の図はパソコンで表現するのはほとんど不可能に近いですが・・・・。
 また、N君から聞いた話はできるだけ正確を期したつもりですが、ニュアンスの取り違えなど有るかもしれません。
 これからの記述は、あくまで熊公の解釈による記述であって、N製作所にはいっさい責任はありません。ご不審な点やご質問は熊公の方にお寄せ下さい。

【 鍛 接 】
 さっそく作業着に着替え、作業開始です。鍛冶作業の全工程を教えていただくので、まずは見学学習と思っていたところ、
「では、鍛接をしてみてください。」
と言われ、少々慌てました。いつもやっているようにしたいのですが、火床の様子も違うし、立っての作業ですし、スプリングハンマーの使い勝手も分からないし、ましてやほぼ完全に遮光しての作業、回りがよく分からない・・・・。ドキドキ物でした。
 今回は白紙2号を使って、山刀風のナイフを作る作業を体験する事になります。
 1回目、加熱後鋼が動き鍛接失敗、2回目、手前側の加熱不足で、中子側に鍛接不足発生。ここで模範演技をしていただくことになりました。鍛接の要領は、

@ 加熱した地金、鋼に出来るだけ万遍なく薄く鍛接剤をまく。
A 刃側の鋼を地金より1〜2mm程度出し、切っ先側上部も少し出る感じに置く。置いたら鋼中央部を
 ハシでぐっと押さえ、右手のハシで地金・鋼両方を押さえ、火床に静かに入れる。



B 加熱はゆっくりと素材の芯まで加熱されるようにして、鍛接温度に持っていく。鍛接温度にするのは
 一回勝負で!!
C 鍛接温度に上げていく途中で、ハンマーで本当に軽く、中央部、、そして回りを押さえるように、特に
 四隅をしっかりと仮付けをする。この時鋼が動かないように注意する。そしてもう一度火床にもどす。
D 鍛接温度  ほどの火色にしたら、手前側の端から、先に向かって叩き、その後は鋼の回りを 
 打つように鍛接する。
  ここで、親方秘伝の鍛接用ハンマーを使われていました。独特の形状をしていて、布川君は不思議 
 とこの形が使いやすいそうです。面より点で接触するようにして、力が集中する鎚だそうです。普通の 
 ハンマーを使っていく内にその形になったか、その形に整形したのかは分からないと話されていました
 が、ハンマーの手前側の面で叩き鍛接すると言うことでした。
E 鍛接出来たところでスプリングハンマーで更に確実に付けて鍛接完了。素材を切り取り自然冷却し
 ます。 

 ここまでの作業を一気に行い、特に本付けの作業は1度ですませる必要があるといわれました。N君も同じサイズで同じような物を作って作業のイロハを教えてくれることになりました。
 熊公の鎚使いは「押さえる・おっつける」感じになっていると指摘を受けました。これを改めなければ・・・・。

 N君の所の火床は幸光さんが三条で作っていただいた火床と基本的には同じで、底面に空気室を作り、そこに送風して、その上面の穴あきの鉄板からコークスに空気を送るようになっていました。風量調節はインバーターを使って、ダイヤルで調節するようになっていました。
 作業場の真ん中に火床が構えられていて、右側に金敷、背面にスプリングハンマー2機、左手にグラインダー類が置かれ、作業しやすいようになっていました。熊公も工房が欲しいな!!

【 カイサキ取り 】
 鍛接が終わり、冷却されたもののカイサキ(貝先)をディスクグラインダーで丁寧に取ります。しっかり鍛接されていれば、カイサキ部分はすぐに消えるのですが、私の作品はなかなかそうはいきませんでした。
 カイサキを取ったものを火床に入れて、 の火色(900度半ば位)から  の火色(700度後半位)(温度はあくまで目安です)と、温度を下げながら鍛造・成型をすることになります。とにかく、前の温度よりも次の作業では下の温度をねらっていくということを言われました。
 鍛造時は  の火色(900度前後位)で作業しますが、ほぼ整形がすんだ段階では、次の  の火色(800度半ば位)から  の火色(700度後半位)の段階的な温度管理をしながら「馴らし打ち」をしていくことになります。そして、1回ずつ冷却することで組織粒を微細化して、硬さと粘りを持たせる訳です。
 ここに示した温度は、あくまで目安ですから、実際の火色を確認していきます。これには経験が必要です。

【 鍛 造 】
 さて、鍛造です。カイサキを取ったものを火床に入れ  ほどの色合い(900度半ば位)に芯まで加熱します。金床に水たまりを作って、ハンマーにも水を付けて水蒸気爆発を起こし、酸化皮膜を落とし、まずは中子部分の整形をしました。
 続いて、火床に入れ  の火色(900度前後位)に芯まで加熱し、切っ先部分の整形をします。そして、厚さ、長さ、幅を整えていきます。
 スプリングハンマーがあるから一気に鍛造されていきますが、熊公の場合「手ハンマー」だけですから、この作業は2〜3度で出来る代物ではありません。 の火色(900度前後位)を維持して、形を作り出すことになるわけです。峯側を厚めに、刃側を薄めに鍛造します。
 毎回、「水打ち」をして酸化皮膜を取りながら作業していきます。
 思う形が出来た段階で自然冷却します。

【 馴らし打ち 】
 いよいよ温度を下げての「馴らし打ち」をする事になります。
 馴らし打ちの肝心なところは温度管理、とにかく前の作業よりも温度を上げないこと、もし上げてしまった場合は、その温度に戻り作業をし直すことになります。温度を下げるわけですから火色を良く見なければなりません。勿論遮光しての作業です。
  ほどの火色(800度半ば位)に芯まで加熱、水打ちしながら、金床の曲面を利用しながら裏すきの形を整えていきます。そして、自然冷却。
 次に  ほどの火色(800度位)に芯まで加熱し、裏すき面等の整形をします。そして、自然冷却。
 続いて  ほどの火色(700度後半位)に芯まで加熱し、同様に整形して、自然冷却。
 毎回温度を下げて整形し、自然冷却する事で、セメンタイトの成長を防ぎつつ、組織を微細化させる事が出来るそうです。このことは何度か鍛冶屋のビデオに登場してきて、見てきましたが、職人さんの腕の見せ所であって、熊公にはとても出来ないと思っていました。でも、温度表で火色を覚え、とにかく火色を前回よりも下げて行くことは何とか出来そうな気がしてきました。後はこれからの経験です。
 火色を見るなんて簡単に書いていますが、これは本当に経験がものをいうことで、熊公のような駆け出し鍛冶作業人には雰囲気を味わうだけのことかもしれません。図で示した火色はそのものではありませんし、一つの参考にしていただければと思います。熊公のちょっぴりの経験では書いてはいけないことなのかもしれません・・・・。

【 焼き鈍し 】
 次に、扱う鋼の焼き鈍し最適温度 の火色まで加熱します。切っ先部分がオーバーヒートしやすいので、中子側を初めに加熱するようにして、全体が均一に加熱されるようにゆっくりと炙る感じで加熱して、藁灰の中に入れて焼き鈍しをします。藁灰は良くかき混ぜて空気を含ませ、四方に保温用の鉈くらいの加熱した鉄を差し込み、その中央に焼き鈍しをする物を入れました。

 1日目の作業はここまででした。

 中子をS字に曲げてハシで取り扱いしやすくなるようにする事、中子側を最初に加熱する感じで、全体を均一に加熱する事、850度とか800度というのは目安であって、あくまで火色を確かめつつ作業を進める事など、沢山教えてもらいました。文章で表現仕様のないものも多いので、やはり指導者の下、体験する必要性を感じる1日目でした。




親方秘伝の鍛接用ハンマーの図
秘伝ですので・・・・ こんな感じのハンマーでした。

作業時に中子をこのようにSの字に曲げる
この写真は焼き入れ時の物、
    切っ先が上を向くように曲げてある
      通常はハシで挟んでまっすぐになるようにする。


 1日目の夜、N君の焼き入れ用の水を汲んでいる井戸のある居酒屋さん「たけだ」に飲みに行きました。ここのオヤジさんはとても面白い方で、蕎麦打ちをなさることから話があって、楽しい一時を過ごしました。勿論、G町の酒を堪能したのは書く必要もないですね・・・。
 オヤジさんに最終日に蕎麦をごちそうになること、新蕎麦が出たらそれを送って下さるといった話になって、良い出逢いがあったなと思います。
 N君の家に戻って、今まで作ってきた作品を見てもらいました。そして、割れが入ったことや、鋼の様子などを見てもらい、やはり温度管理が不十分なことによって起こる事であることを指摘してもらいました。
「試行錯誤しながらここまで作ることは凄いことです
と、言って貰えたのはとても嬉しい限りです。でも、今回の修行でグググ〜〜〜ンとパワーアップして、更に良い物を作りますよ!!
 コオロギの鳴き声を聞きながら、夏の終わりを感じながら床につきました。


第2日目

【 焼き入れ 】
 焼き鈍しを終えた物をグラインダーで酸化皮膜を取り、反りなどの修正をして、自分の思うスタイルを罫書きし、押し切りのような道具でだいたいの形を切り出します。熊公はグラインダーだけで成型することになるわけです。鉄粉が沢山出るな
 切り取ったものをグラインダーで成型し、スプリングハンマーの金敷部分が凸面になっている物で裏すき部分を整えます。これだけで綺麗に裏すきが入っているのには驚きました。
 地金部分にセンを掛け、面を整えて、今回は鎚目を入れることにして、N君はスプリングハンマーで1人で作業されましたが、まだ踏み込み加減が分からない熊公は、N君のハンマーを振り下ろしてもらい、鎚目を付けました。
 そして、鋼側に銘を打ち込みます。
 銘を打った後、裏すき面を軽くグラインダーでさらうようにして(面を荒らし)、いよいよ焼き入れです。この段階からは脂気厳禁、軍手なども新しい物にして慎重を期しました。
 焼き刃土は、N君が親方から頂いた昔の壁土と砥の粉を使いました。
 この段階で焼き入れ用の井戸水に氷を浮かべ温度を管理する作業をしました。特に、白紙の場合は温度管理が難しいそうです。
 今年は8月でも気温が上がらず、夏の無いまま秋になっちゃうのかと思うような気候ではありますが、火床の回りは暑いこと暑いこと、方や大きな氷を水に浮かべ、温度の管理をするわけで、鍛冶作業の大変さを味わいました。ましてや、部屋を閉め切り、遮光しての作業ですから・・・・。ダクトから送られてくる外の新鮮な空気で、息を繋ぐ感じでした。
 今日はコークスではなく松炭を使っての焼き入れです。使い慣れているせいかちょっぴりホッとした感じもありました。
 刷毛で焼き刃土を薄く万遍なく塗り焼き入れに入りますが、自分の本番前に2本廃棄処分にする物を使って練習させてもらいました。
 鋼面を上にして、炙るように焼き刃土を乾かし、中子側を先に暖め、全体を同じ温度になるように切っ先部分はオーバーヒートしがちなので細心の注意を払いながら焼き入れ温度に持っていきます。強力磁石に付かなくなる、これが変態点に達した状況です。この温度をキープすること数分間、焼き入れ水に峯側から入れますが、入れる直前一呼吸置いて、一気に入れます。入れたら水を切るように縦に動かし、グブグブ・・・という動きが収まったら取り出ます。
 練習の1本目で水の中で揺するときに切っ先が水から出てしまいました。結果ははっきりとムラとして現れました。良い失敗をしたと思っています。
 本番は緊張しましたが、2本練習しましたからちょっと冷静になれたと思います。全体を均一に焼き入れ温度まで持って行けたと思います。片刃の物を作ったわけで自己流の作業ではグーンと焼き反りが出るのですが、殆ど出ない状況です。「温度管理さえちゃんとしていればそんなにそりは出ないですよ。」との事でした。鍛接・鍛造・焼き鈍し・焼き入れ、それぞれに温度管理することの大切さを知りました。

【 焼き戻し 】
 続いて、焼き戻し、「空焼き」による方法と、「あっと驚く位簡単にしてるんですよ!!」という2つの方法を行いました。本番物は後者、焼き入れ練習用の物で「空焼き」を行いました。
 この空焼きの時は、まず鋼側の酸化皮膜を落とし、部屋を明るくして、微妙な色つきの変化を見ました。これも言葉では表現し切れませんが、何回も何回も取り出してみて、先端部が加熱しやすいことを充分に配慮しながら、色を見て仕上げます。酸化皮膜を落とせない場合は、水滴を落とし、その動きを見ることも教えてもらいました。
 あっと驚く簡単な方法というのは、「ソルト剤」を使い、電気炉で温度を維持する物でした。ソルト剤を落とすためにはお湯が使われました。

 今回は、N君は刃側を薄目にするだけで、刃付けをしやすくするためのハンマーは入れませんでした。ですから峯側をのばして刃側を打ち出しまっすぐにするような作業はしませんでした。理由の一つとして、温度の上がり方にムラが出る可能性が高くなるためとのことでした。(勿論、刃の部分をあらかじめ薄くして作業することもあるそうです。) 確かにそうです。ただ、焼き入れ後にグラインダーに掛けるのはどんな物か?と質問すると、熱処理後は細心の注意が必要ですが、温度を上げないようにして掛ければ良いということでした。硬度試験その他をされての言葉ですから、熊公もこのように作業をしていこうと思います。でも、回転数をコントロールできる水冷回転砥石がないと難しいことでしょうね・・・・。

【 鍛接・焼き入れ時のポイント 】
 この時の話で、鍛接・焼き入れは火床が充分に暖まった状態で行うことが大切で、火床の上部にレンガなどを置き、保温効果を上げておくと良いと言うことでした。
 N君の修業時代、作業の終わりに親方が「明日の分の鋼付けを行っておくように!!」と、言ったそうです。でも、明日やればよいと思いそのままにしたら、翌朝、叱られた話をしてくれました。その時、火床が充分に暖まっている状況で鍛接をする必要があることを知ったと話してくれました。熊公もこれからこのことを実践したいと思っています。
 2日目は午前中最後に焼き入れ、焼き戻しを終了しました。

 午後はN君の本業を見学実習です。レザークラフト用の「革包丁」の制作を、昨日の作業の復習として見せていただきました。あっという間に10本の包丁を仕上げていく様子を見て驚きました。鍛接の手順を5回見ることが出来、また、「馴らし打ち」の温度管理も10回見ることが出来、有意義でした。

 夜は鍛冶屋ビデオを見ました。これまた楽しい一時でした。


第3日目

【 刃付け 】
 あっという間の3日間、今日は刃付け、研ぎの学習です。
 「熊さん、ナイフのゆがみを取ってください。」
 ほんの少しですがゆがみがありましたのでハンマーで叩き修正、しかしこれが命取りでした。切っ先部分の鋼にヒビを入れてしまいました。アア〜〜〜〜!! 後悔先に立たずです。ガックリしたものの、良いショックでした。きっと慎重に作業するきっかけとなることと思います。勉強に来たのですから、泣いてなんて居られません。
 まずは裏すき部分のバフ掛けです。思う方向に目をそろえて、加熱されすぎないように素手で管理します。2種類のバフを掛け、次は地金側のバフ掛けですが、これはベルトサンダーのバフで掛けました。
 ここで防錆材を塗ります。
 いよいよ刃付けです。まずグラインダーで熱が上がりすぎないように自分の思う角度で刃の荒削りをしていきます。刃先が0.8〜0.9mmの厚さで残るように削ります。(制作するものによって作業には違いがあります。)
 続いて、回転砥石を使って刃を付けますが、この段階で「返りが」切っ先から元まで付くようにまずします。そうすることで刃が付かない所ところが出ないようにするそうです。そして切刃の面を大切にしながら、鎬のラインをしっかりと決めて、出来るだけ平面に想定した刃角に仕上げます。
 ここから手研ぎです。荒研ぎで回転砥石の目を落とし、平面をしっかりと作ります。その後、今回は、1000番−1500番−2000番−6000番と段階を追って研ぎ、最後に地金の曇りを出すように、粉にした砥石で地金部分を研ぎ、終わったら藁灰で錆等を落として、お湯をかけて拭き上げ、防錆剤を塗ってできあがりでした。(この手研ぎも、沢山の方法があるようです。)
 綺麗に裏すきの入ったナイフができあがりました。裏にセンを掛けなくてもこんなに綺麗な裏すきが入るなんて・・・・。驚きでした。
 N君の話では、中砥くらいまではセラミック砥石がお薦めですと言うことでした。自然石の砥石にこだわる必要は無いという話を聞きました。
 時計は11時40分を指していました。鍛冶修行終了の時間です。

 やはりベルトサンダーが欲しいです。しかも、水を流せる仕様の物が有れば最高です。熊公の鍛冶作業ではこんなに設備はありませんから、1台で何役かしてくれる物が必要です。また、押し切りも欲しいです。
 「押し切りを自分で作ってみては?」と、親方が使っていたハサミ状の物を見せてくれました。「これで3mmくらいの物は切れますよ。」と、言っていました。
 押し切りの制作は無理かもしれませんが、裏すきのアールを作る金敷は何が何でも作らなければ、今使っているアンビルの端を削ってアールを付けるか、別の物を用意するか・・・・。1台で何役かさせた方がいいですね、角の部分は使ってないから、そこを加工しようかな?

 
 親方が使っていたというハサミ                  裏すきのアールを出す金床

今 回 の 作 品
 
N君の作品                           熊公の作品

 作品の写真を見て分かるように、同じ素材、量で作ったのに、熊公は小さくなってしまいました。おまけに最終段階で刃にヒビを入れてしまい本当に残念でした。

 
N君の買い手の付いている作品

 制作過程を見ている、一緒に作った作品を売ってくれるようにお願いしたのですが、鍛冶屋として気に入らない部分があって、更に自分が使ってみたいと思っているので・・・、ということで残念ながら売って貰えませんでした。そこで、同じ形式で、ちょっと藪や枝を払えて、料理も作れるように7寸のナイフを注文して来ました。細かい仕様を書き留めて、12月頃届くように制作してくれることになりました。待ち遠しいです。

 少し話をした後、白紙・青紙・SK−5の鋼と地金をお土産としていただき、東京への帰途につきました。630km、8時間の行程です。でも、本当によい修行になりました。

 別れ際、
「熊さん、これは鍛冶屋のほんの一部ですよ!! まだまだあるんだから。」
と言われました。確かに、鍛冶作業のイロハ・・・のイの字の最初の「ノ」の部分も書けていない状態かもしれません。でも、沢山のことを学びました。
 仕事の時間を割いて熊公に手ほどきしてくださったこと、本当に感謝です。有り難うございました!!

 次回の作業では今回の勉強を生かした作業をしたいと思っています。まずは温度管理、アウトドアー鍛冶はその辺大雑把ですから、改めなければ・・・。今回の作業は殆ど全部暗がりの中での作業でした・・・。まずは暗がりを作るための工夫をします。いらない暗幕があったら、それを用いて作業しようと思っています。これで自己流の鍛冶作業とおさらばです。

 最後にもう一度、これまでの記述は、あくまで熊公の解釈による記述であって、N製作所にはいっさい責任はありません。ご不審な点やご質問は熊公の方にお寄せ下さい。
(2003.08.30.)





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