暖かくなってきました。いよいよ2003年の鍛冶作業スタートです。3日間の休暇を取って、須賀川に行って来ました。
さて、前回新火床を使った作業をして、火床の口の部分に炭が落ちるのを防ぐ立ち上がりが必要と言うことが分かりましたから、まずはこれを作ることにしました。最初はレンガ・耐火モルタルとも考えましたが、重くなることが考えられますから、鉄をL字に曲げて、これに2本の鉄棒を用いて固定することにしました。3日間の作業で炭がこぼれて困ることは全くなくなり、新火床は実に使い易い物になりました。
また、鍛接材を灼熱の鉄に蒔くためのスプーンも愛嬌で作ってみました。更に、口金を作るための鶴首も作ってみました。
炭こぼれ防止のL字の鉄 鍛接材用スプーン
S45Cの丸棒で作った鶴首 戸車の真鍮で作った口金 工程順左から右へ
まず、初日の最初の作業は道具造りでした。
職場の教室のドアの戸車がよく破損します。その戸車の車輪は真鍮の輪で(口金の写真の左側の物)出来ています。これを見ていて口金造りに丁度良いと考えました。適当な直径まで、円錐形の棒で押し広げていこうと考えましたがこの作業では真鍮が割れてしまいました。それではと加熱してやってみましたが、真鍮は熱が掛かるともっともろくなるようでダメ、そこで鶴首によって叩き広げてみたところ、写真のように口金の形状を作ることが出来ました。鉄の板材を使って輪を鍛接してみようと試みましたがこれは技術不足、上手く行きませんでした。今後の課題です。
前回の作業後3ヶ月間、色々勉強をしました。読んだ本は
・鋼のおはなし |
大和久 重雄 |
日本規格協会 |
・硬さのおはなし |
岩崎 昌三・寺澤 正男 |
日本規格協会 |
・人間と鉄 |
原 善四郎 |
新日本親書 |
・鉄の歴史と化学 |
田口 勇 |
裳華房 |
・鉄のはなし |
雀部 晶 |
さ・え・ら書房 (小学生向き) |
・和式ナイフの世界 |
織本 篤資 |
並木書房 |
・ナイフの愉しみ |
織本 篤資 |
並木書房 |
・包丁と砥石 |
|
柴田書店 |
探してみれば鉄関係の本は結構ある物ですね・・・・。この他にも幸光さんが送って下さったビデオの学習。岡安鋼材の社長さんからの直接のアドバイス。また、1月に立ち上げた「鍛冶作業掲示板」からのアドバイス等々、沢山の新知識を持って行きました。
更に、ディスクグラインダーを新しく1つ増やし、固定鏨(躄鏨−差別用語ですね−)・ディスクグラインダーに装着する簡易サンダーも揃えましたから作業能率は抜群に上がりました。
今回の作業は小柄型のナイフ1本と両刃の剣鉈風ナイフ1本、片刃の剣鉈風ナイフ1本の計3本を作りました。鍛接不足の箇所の全くない、現段階では100点満点の作品が出来ました。ハンドル部の制作はこれからですが、剣鉈風ナイフには真鍮の口金を着けた鹿角のハンドル材を使う予定です。早く作品のページに紹介したい物です。
鍛接の要領は岡安鋼材の社長さんから次のようにアドバイスを頂きました。
刃物作りの中でも大切なのは鍛接と焼きいれと言えるでしょう。
鍛接方法は鋼をあらかじめグラインダーなどで1枚皮をむいてやることが必要です、
地鉄も皮(酸化皮膜)を剥いておくことが必要です、両方をいきなり赤めるのではな
く地鉄を先に赤めて黄色近くの色まで温度を上げて炉から取り出し、鉄ローをスプー
ンの半分くらい、鍛接する量にもよりますが、振り掛けると水飴状になります、そこ
にあらかじめ赤めた(炉の脇においてある)鋼を載せて再び炉に入れオレンジ色位に
なったら鋼の端のほうからたたいていくと、うまく鍛接ができます、けっして真ん中
からたたいてはだめです。 |
このアドバイス、太文字にした箇所は『目から鱗』の言葉です。今回はしっかりと実行してみました。そのおかげで、鍛接不足が起こることもなく、しっかりとした物を作ることが出来ました。
以下、両刃のナイフの制作を工程順に写真で紹介しようと思います。
@酸化皮膜を取り除いた素材 軟鉄はU字に曲げておきます A鍛接材をたっぷり使って鍛接開始ほぼ着いた状態 ・・
鍛接材を盛った状態は写真を取り損ねました。(^^;)
B素材を約倍の長さまで延ばした状態 C固定鏨で切っ先部を切断 ・
この状態で刃になる側は奥の方です。
D切っ先部の成形 E中子部分の成形 ・
内湾させてあるのは刃部の成形で外湾する事を考えています。
F火造りを終えた状態 Gグラインダーで整形 ・
H焼き刃土を塗った状態 I焼き入れ温度を磁石によって知る ・
変態点を過ぎると磁石に着かなくなる
J焼き入れ両刃の物は焼きぞりはほとんど出ません K焼き戻しあぶるように200度位まで再加熱 ・
L焼き入れ後粗研ぎした状態 M参考までに片刃の物は焼き入れをすると ・
このように鋼側が延びるように反ります。
と、こんな作業でした。素材は厚さ3mm、幅6.5cmの軟鉄をUの字に曲げた物、鋼はSKS−V、厚さ3mm、幅3cm、長さは共に12cmです。出来上がったナイフは中子のお尻から切っ先まで25.5cm・刃幅3cm・刃厚3mmです。
固定鏨は切断するときに実に重宝しました。一人で作業するときに切断ほど大変な物はありませんでしたが、これがあれば簡単に切断できます。
簡易サンダーはこれまた優れものです。今までディスクグラインダーで刃の部分など削りましたが、これだと傷が付きやすいので、面的に削ることが出来るサンダーを考えていましたが、安い物で30000円もします。これは手が出ませんでしたが、2500円でディスクグラインダーがサンダーに変わる物を発見。60番・80番・120番の3種類の荒さがあってベルトのランニングコストもまずまずと言ったところです。60番の物をよく使うことになります。1本のナイフにベルト1本と言うところです。見る見る平面を作り出せるのは作業効率をアップさせてくれます。
鍛接材用スプーンは不要になったスプーンを用いればよいことですが、スプーンの部分は、幅2cmで長さ3cm程の隅丸方形にしました。素材の上に鍛接材を蒔くときに幅を持たせて蒔けます。何より自分で道具を作る楽しさがありますね・・・。これは鶴首も同様です。
片刃の剣鉈風ナイフ 小柄型ナイフ
片刃の剣鉈風ナイフは、幅2.5cm厚さ9mmの軟鉄12cmに幅2.5cm厚さ3mm長さ10cmのSKS−Vを合わせました。軟鉄の厚さがありすぎてちょっとアンバランスですが全長27cm、刃幅2.8cm刃厚2.5mmの物が出来ました。
小柄型ナイフは厚さ3mm、幅2.5cm、長さ8cmの軟鉄に、同寸のSKS−Vを着けました。全長23cm、刃幅1.9cm、刃厚1.2mmの物に仕上がりました。
鍛接の要領は岡安鋼材の社長さんのアドバイスのおかげでバッチリ修得できたと思っています。
それから、今回は使用しませんでしたが、藁灰を作りました。これは掲示板での「しかさん」からのアドバイスを受けて作った物です。ホームセンターで「敷き藁」という物を見つけました。12リットル入ったものを5つ購入して焼いて灰にしました。出来た灰の量は5.5リットルです。まだまだ足りそうにありません。次回更に60リットル分を灰にしようと思っています。焼き鈍しと言う作業をしてから焼き入れをすることにチャレンジしてみます。これをすることでドリルで穴を開けるのが少しは楽になるものと期待しています。
そうそう、片刃の剣鉈風ナイフを作るとき、地金を2cmほど長くしたのは中子部分に軟鉄が出るようにしたためです。こうすれば穴を開ける作業は楽ですね。実際、中子部分に5cmの軟鉄部分が出来ました。ただし、鋼との接合部分にどうしても筋が出てしまいます。仕方ないことですがこれが本来の形のはずですね・・・・?
幸光さんが送って下さったビデオの中に、ジャパンインパクト「刃物 箔」という物があります。この中で新潟の岩崎 重義さんの言葉で、「西洋の刃物は鋼10gで1本作るとすれば、日本では10本作れる・・・」と言う下りがあります。合わせ刃物の良いところはこれなんですから、今後はこの辺の作業をしっかりやろうと思っています。現在は鋼と地金の割合は1:1みたいな物ですから、出来るだけ地金を多く、鋼を少な目にして作品を作ってみようと思っています。その為には鋼をある程度加工してから作業をしないといけませんね・・・・。また鍛冶屋さんのビデオを見てしっかり覚えなければ・・・・。
2003年の鍛冶作業がスタート。今年はどんなナイフを作れるでしょうか。次の鍛冶作業が楽しみで仕方ありません。今回の鍛冶作業は大満足の作業結果を得られました!!
(2003.03.28.)
|