鍛冶作業記録
新火床製作
2002年10月〜11月
今回は新火床製作の記録です。
11月23日(土)、2ヶ月越しの火床製作の最終段階、組み立て作業を行いました。曇天で時折小雨がぱらつく中での作業になりました。
新しい火床 早く鍛冶作業がしたい
!!
F字型送風管を装着した状態
火床部分の材料
耐火レンガ SK−32・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11個
耐火モルタル 3袋分・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6kg
心棒用鉄棒(径8mm・長8cm)・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8本
鉄管(内径25mm・長10cm)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2本
2mm厚ステンレス板使用外枠
(工場に制作依頼)
F字送風管は、羽口部分のジョイントは鉄管ですが、それ以外は塩ビ管です。火床の内部から27cm離れますから、塩ビ管部分には熱は伝わらない物と考えています。
F字だと、何もせずに送風してみると奥の方に多めに送風されます。そこで、手前の分岐部分に小さな出っ張りを付けて、2つの管の送風量をそろえるように工夫してあります。
前回までの鍛冶作業で羽口が下にあり、上向きになっている七輪火床では、炭や熔解物によって口が塞がれて、温度にムラが起こることを確認しましたので、10月から新しい火床を設計し、材料を買い集めて、火床の外枠の製作を依頼していました。20日に外枠が完成したので、今日製作することになりました。
最初は火床を広い物にして、どんなことにも対応できる火床を作ろうと、耐火レンガ15個で設計しました。しかし、レンガを購入する段階で、10個手にしたたけけで、その重さに閉口し、設計を変更せざるを得ませんでした。
火床の広さを欲張らず、熊公の作っているペティナイフや今後作りたい剣鉈のサイズから、レンガ11個で組むように変更し、2mm厚のステンレス板で外枠を作っていただくことにしました。
火床の内寸は345×125×165mm
(縦・横・深さ)
となりました。最大で30cm位の物が作り出せる予定です。
作っていただいたステンレスの枠 さすがプロの作品 枠に入るレンガを組み上げた状態
・
耐火レンガ1個の重さは4kg。15個ではレンガだけで60kg、11個でも44kgになります。そう簡単に持ち運びする事が出来ない代物になってしまいました。
仮組をした状態 小さな鉄棒はレンガ倒壊防止用の心棒
1段目を本組みした状態
・
まず、枠の底に数mm耐火モルタルを塗り、底部分になるレンガと両側壁のレンガを載せ、圧着して、レンガの隙間に耐火モルタルを充填します。続いて倒壊防止用の鉄棒を差し込み、レンガ面に耐火モルタルを塗り、奥壁と手前部分のレンガ、側壁2段目を載せて圧着します。奥壁部分には、側壁2段目を確実に固定するため、水平にも心棒を入れましたので、3個のレンガを同時に積まないとなりませんからちょっと大変でした。
これが終わって、レンガの隙間に耐火モルタルを充填して、底部分がU字になるように側壁立ち上がり部分に耐火モルタルを塗りました。
モルタルは少し柔らかめにして作業した方がよいようです。ただし、ステンレスの枠は吸水性がありませんから、あまりベチョベチョな状態はまずそうです。作業終了段階で浮かび上がっている水気はティッシュで吸水させ、出来るだけ乾燥を早めるようにしました。水を含ませたレンガから水分が浸みだしてくるようです。水を含んだレンガは実に重い物です。腰を痛めたりしないように充分に注意して作業をしないとなりません。
羽口となる鉄管は約5度下向きにして固定しました。特に何かのデータがあるわけではないのですが、今回羽口部分の下面は底面より3cmほど上に作ってあります。そうなると、火床の底部分に酸素が供給されにくくなるのではないかと考え、若干下向きに固定することにしました。こうすることで羽口内に異物も入り込み難くなるのではと考えています。
組み上げ終了時、レンガ44kg+耐火モルタル6kg+モルタル用の水600g+レンガに浸み組ませた水?g+鉄管・心棒分の重さ+ステンレス枠7kgで、60kgははるかに越えていたと思います。
まずはドライヤーであらかた乾かして、その後ガスバーナーであぶって水気をガンガンとばし、モルタルの固化を図りました。
この火床製作を陰で見守っていてくださったのが鍛冶屋の友第1号のハッピーライトさんです。
ちょっと余談ですが、ハッピーライトさん「これから鍛冶屋関係で使う名前は『幸光』にします。」と仰っていましたので、これからは
幸光
(所蔵されている刀剣の銘が『幸光』と言うことです。◇幸せな光=ハッピーライト◇ 成る程です
ね・・・)
さんです。
この幸光さん、本当に多方面にご趣味を持っていらして、過去に焼き物窯を作られたことがあると言うこと。熊公の使う耐火レンガ SK−32が1個で4kgあることを話しましたら、焼き物窯に使ったC−1耐火レンガは、SK−32と同じ寸法で、重量は1.6kgであることを教えてくださいました。早速、インターネットでC−1レンガを調べてみましたが、残念ながら耐火度は不明でした。SK−32は、1300度まで耐えます。
そうやっている内に幸光さんから残っていたC−1レンガが届けられました。熊公は大感激、涙涙です
!!
幸光さん本当に有り難うございました
!!
C−1レンガは実に軽い物で、これが1300度以上に耐えられれば重量は半分以下になります。ただ、非常に柔らかいレンガです。
今回使用の耐火レンガSK−32
C−1角の削れ方で柔らかさが分かると思います。
C−1レンガの耐熱度が分かりませんから、新火床の試運転をして、火床の乾燥を図ると共に、羽口の位置や熱の回り方をチェックしがてら、C−1レンガを加熱してどういう状況になるかを調べることにします。
鍛接に必要な温度は1200度程度と考えています。と言うことは部分的にはおそらく1400度を超えることもあると思っています。そういうことから、最低1300度には耐えられるようにしたいと思っているわけです。耐火モルタルは1200度までで、レンガの耐火度を上げてもこのモルタル部分にひずみが出てくるのではないかと考えています。
鉄の溶解温度は1535度。そこまで出すことは無いと思いますが、出来ればモルタルもレンガもそれに耐えられる物にしていきたいと考えています。
火床の外枠をステンレス板で作りましたから、レンガを交換すればいつでも新しい火床になります。次回はC−1レンガかな?
レンガ11個の値段はSK−32が1個180円ですから、11個で1980円、消費税や耐火モルタル代・鉄管代を入れても4000円あれば新しい火床が作れます。これは画期的だと思います。
火床を冒涜することになるかも知れませんが、新火床は、大好きな「やきとり」を1度に20〜25本くらい焼けそうです。鍛冶作業以外にこういった使い方も可能かも知れません。鍛冶作業後は「やきとり」焼いて1杯・・・・。たまりません
!!
このページを読まれ、火床の枠を作って同じように作業をされたい方は、『東埼製作所』の社長さんに相談されてみてください。
熊公は当初、2mmのステンレス板を購入してリベット打ちして枠を作ろうかと考えましたが、これにはかなりの労力と道具が必要であることが分かりました。銅板などでは枠としては心もとないですし、鉄板では錆が出ます。そこで、いつもお世話になっている社長さんに相談したら、「作ってやるよ
!!
」と、製作していただく事になりました。
仕上がりはさすがにプロの作品。取っ手も4ヶ所に付けてくださり、本当に助かりました。これは末代物です。
あとで話を聞きましたら、結構大変な作業だったようです。感謝です。
ここの工場には金属加工の機械が何でもあるという感じ、鋼の板もスッパリ切っちゃう裁断機やステンレス板を真っ直ぐに折り曲げる機械など、見ていて飽きない場所です。
この会社は業界では「パーツフィーダー」と呼ばれる機械を作っています。省力機械の製作工場です。機械の部品を上下・左右・裏表を識別して、一定方向に並べて送り出す機械を作っています。使う工場の部品一つ一つが違うわけで、全くのハンドメードの機械です。匠の技を見るような作業です。設計図は頭の中にあるそうで、この部品はこうやれば上下・左右・裏表が識別できると、発想してそれを作り出すのです。一見裏表があるの?と思うような物でも、それを識別させて送り出す物を作るのは本当に匠の技です。熊公はこういう何もないところから物を作り出す作業を見るのが好きです。
試運転を見せていただいたことがありますが、適当に入れた部品が、最終的に一定方向に並んで出てくるのは面白かったです。人の入れない原子力関係の作業場などでも使われているそうです。燃料棒の中にウランを一定方向に並べ挿入したりする物にこの会社の製品が使われていると聞きました。
この会社のホームページ URLを掲載しておきます。
http://www.tohsai.co.jp/
です。
この社長さんは実に良い方ですから、きっと相談にのってくださると思います。
火床製作の記録が、最後は『東埼製作所』のCMになっちゃいましたが、熊公にはこの社長さんが居なければ鍛冶作業が出来ません。これくらいコマーシャル入れないと・・・・・・。
ちなみに、この方は熊公の「蕎麦打ち」の師匠です。熊公はいつも『師匠』と呼ばせていただいています。
熊公と同じような火床で鍛冶作業をされている方、意見の交換が出来たら嬉しいです。メールお待ちしています。
11月21日(木)は11月の第3木曜日、ポージョレヌーボの解禁日・・・・。今日はこの日に購入したボージョレヌーボを開けて乾杯しました。美味いこと限りなし
!!
(2002.11.23.)
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