東京地方裁判所 その6

懲戒解雇事由の不存在

PS版事業に関する100億円の件

  1. コニカは、ユニオンのビラ(乙1・別紙8)にあるPS版事業部の譲渡により、年間約100億円の売上減の記載を採り上げて、これによりTが事業上の重大な機密を漏洩したとして、懲戒解雇事由の1つにしている。
  2. しかし、コニカの主張は、正式に公表していない事実は、全て重要機密に当たるかのように主張するものであるから、主張自体失当である。
  3. 上記約100億円という数字は、コニカの主張や証拠によっても、これが重要機密として、管理されていた事実は全く認められないから、機密としての要件を欠くものである。つまり、約100億円というような数字は、概数であるうえ、関連担当部署の部員であれば、公知の事実であったものである。
  4. Tは、上記のような約100億円という数字について、関連担当部署の部員から風聞として聞き及んでいたものであるから、当然マスコミは、取材により、知り得ていた類の事実である。それ故、Tにおいても、既に公表済みであると思っていたような事柄であった。
  5. 上記ビラが配られた翌日のTに対する面談において、W部長らは、Tにビラ配りを止めるように求めたが、ここでは、約100億円の件は、全く採り上げられたこともなかった(T調書)。
  6. 株主総会翌日の面談では、前日の株主総会出席の件を直ちに問題にしているのであるから、これと比較しても、本件約100億円の件は、当時、全く問題にもされなかった事柄であることが解る。
  7. このように、当時、コニカにおいても、これが重要な機密の漏洩などと考えていた事実は全く認められない。これは、後になって、懲戒事由の1つに付け加えられたものである。
  8. したがって、100億円の件は、本来機密にも該当せず、当然Tには、これが機密に当たるとの認識もなかった事柄であるから、Tの行為は、就業規則第97条6号「事業場の重大な機密をもらし、またはもらそうとしたとき」に該当する余地はない。

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