東京地方裁判所 その7

懲戒解雇事由の不存在

上司に対する反抗等

  1. コニカは、@ユニオンのビラ配り翌日の面談、A株主総会翌日の面談、の際におけるTの言動につき、これを懲戒事由の1つにしている。
  2. しかし、@は、Tの正当な労働争議におけるビラ配りに対し、コニカが不当な干渉をして、止めさせようとした件においてである。コニカは、職務上の指揮命令が及ばない労働運動に関し、不当な干渉を行ったのであるから、これに対し、Tが多少強い言動をもって抗議し、抵抗することは、当然に是認されることである。日常業務の中で同様の言動が上司に対し、用いられたものとは状況が全く異なる。
  3. また、Aは、Tが業務を離れて株主として株主総会に出席し、発言したことにまで干渉した件においてである。コニカは、Tが職場外において、株主として行った行為にまで労働関係における規整を及ぼそうとするものであるから、不当であることは指摘するまでもない。Tがこれに対し、多少強い言動をもって抗議し、抵抗することは、当然な行為であるといえる。これも日常業務の中における言動ではなく、理不尽な干渉に対し、用いられた言動である。
  4. また、上記@及びAにおける現場の状況は、いずれもW部長及びN課長二人がTに面談を求め、二人でT一人に対し、話しをし、特にW部長は、興奮した様子で話しをしていたのである。そのため、Tがこれに対抗し、多少強い調子の言動を用いるに至ったというに過ぎない。
  5. しかし、これは、双方の意見が対立し、口論状態になったというだけで、暴行などはない。なお、コニカが主張するホワイトボードを叩いた云々については、状況を歪曲誇張するものである。Tは、否定しており(T調書)、そのような事実もない。
  6. したがって、Tが上記理不尽な干渉に対し、多少強い言動で反論したことをもって、就業規則第96条7号「他人に対し暴行・脅迫をしたとき」に該当するということはできない。また、上記行為により、職場の秩序を乱そうとしたり、乱された事実も存在しないから、就業規則第97条5号「職務上の命令・指示に反抗して職場の秩序を乱しまたは乱そうとしたとき」に該当しない。

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