東京地方裁判所 その1

本件懲戒解雇の背景と本質

  1. Tに対する本件懲戒解雇処分は、Tが時間外労働賃金の適正な支給を要求したことを契機に、コニカから不当な差別的扱いを受け、降級されるという不利益処分がなされことに端を発するものである。
  2. Tは、コニカに対し、上記差別的扱い及び改善されない時間外労働賃金の不支給問題に関し、継続的に改善要求を持続していた。本来、かかる諸問題については、コニカ労組(当時Tは組合員)が労働組合の役割を果たし、問題を積極的に採り上げて、コニカに改善要求をすべきである。しかし、企業内労働組合であるコニカ労組は、労使協調を優先するあまり、一向に解決をはかる努力さえしないまま、経過していたという状況であった。
  3. そのため、Tは、コニカ労組には、問題解決の意思がないものと判断し、一般労働組合であるユニオンに加入し、同労組とともにTの労働条件の改善を要求する労働運動を継続していた。Tとコニカとがこのような労働争議中において、コニカは、Tに対し、懲戒解雇処分を行ったのである。
  4. すなわち、本件懲戒解雇は、Tの正当な労働条件改善を求める争議行為に対し、これを嫌悪するコニカがTを排除しようとして、コニカ労組の容認のもとに懲戒解雇処分に仮託して行ったものである。
  5. 本件の本質は、まさしくここにある。それ故、本来懲戒事由の構成要件にさえ該当しない理由や懲戒事由として相当性を明らかに欠く事柄をことさらにあげつらい、懲戒事由としているのである。

  6. 以下に上記一連の経過を時系列的に要約する。
    経過の要約

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