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上海留学記
〜回想篇T〜
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執筆者
;荒川愛花
;2002年9月〜2003年9月
;上海大学留学
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地下鉄の風景T “先下后上!!”
〜それでも駅員は叫び続ける〜
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上海の地下鉄はドイツの会社と合併で作られたらしい。人々の疲弊と煙草のヤニが染み付いた古い東京の地下鉄とは比べ物にならないくらい新しくてキレイだと思いました(次々と地底に延びてゆく、新しい東京の地下鉄に関しては別ですが)。
マナーに関しては一言ある方も多いでしょうが、少なくとも上海の大きな駅では、毎日駅員さんがマイク片手に怒鳴りまくっています。「先下后上!!」 濡れた綿棒の綿のような喋り方をする日本の駅員さんとは全く種族が違います。だから乗客は少なくとも電車の扉が開くまではブロイラーのように大人しく整列しています。 こんな光景は地下鉄の駅くらいでしか見られません。しかし、まぁ何と言ってもやはり中国。扉が開くや否や、お馴染みの‘席取り合戦’が開始される訳です。「先下」なんて標語の存在価値なんか、道路に吐き捨てられる痰以下ですな。
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地下鉄の風景U “ペット持ち込み禁止”
〜食料なら許されるのか…??〜
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上海の地下鉄にもやはりそれなりの規則のようなモノがあります。「優先座席」もあります(機能不全に関しては日本といい勝負です)。車内での物品販売も禁じられています(新聞の売り子さんの姿を見ない日はありませんが)。ペットの持ち込みも原則的には禁止されています。
ある平日の午後のこと。比較的空いた地下鉄の車内で、珍しく座席を確保できた私はぼんやりと広告を眺めていました。停滞した思考、無防備な意識、締まりのない口許。そして、何気なく傾けた視線の先に
…ばっちり目が合った。彼ら特有の、真円のつぶらな瞳。『コ、コケ?』
席に座っていた私の目線はいつもより少々低めでした。だから斜め前方に立っているおばちゃんが手に提げている買い物カゴから頚だけ出したニワトリさんと、結構いい角度でご対面できちゃったんです。
地下鉄に二羽のニワトリ…。油断していた分、衝撃も大きかった。軽く小首を傾げるニワトリにつられて、私の脳も軽く傾いた。改札口をくぐって、この車内に乗り込んできた二羽のニワトリ。
「お客さん、車内へのペットの持ち込みは禁止されているんですよ。」
「ペットじゃないわよ。だから関係ないでしょ!」
そんなやりとりがあったのか、なかったのか。目の前には二羽のニワトリ…。中国では決して珍しくない生きたニワトリさん。しかし、地下鉄の車内で見るとは思わなかった…。
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地下鉄の風景V 満員電車なんか嫌いだ。
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松山での気楽な学生生活では満員電車とは無縁でいられます。快適な地方都市生活!松山万歳!
しかし、上海での生活は同じ学生でもそんな気楽にはいきませんでした。「上海市」に遊びに行くと地下鉄の利用は不可避。まさか歩いて帰る訳にもいきませんしね。ぶつぶつ。
その日も私は「上海市」に来ていました。目的は某外資系デパートの地下食料品売り場。美味しいパンとか(フランスパン1本25元。ぼったくりだと思いつつも今日もまた買っちゃった。だって美味しいんだもん♪)、美味しいチーズとか(カマンベールチーズ1個35元。不条理だと思いつつ…以下同文。)、美味しい…(きりがないので自主規制)等々。とにかく、私の食い意地を満たすべく様々な食品が買い込まれました。嗚呼、至福のひととき〜。食べる楽しみがなきゃ、生きてる意味なんてないわよね!私はそんな高級食品(平時は1個0.7元の野菜まんが主食です)と幸福を袋に詰めて、夕方の満員電車に乗り込みました。
身動き一つできない満員電車。命より大事なパンやチーズがつぶされないよう、しっかり抱え込むのが精一杯。でもどんなに密着度が高くても冬だからまだ我慢もできます。これが真夏だったら…考えるだけで発狂しそう。そんなことを考えながら何とかこの満員電車を乗り切ろうとしていた、その時!
目の前の若いカップルが、あろうことか私の鼻先30センチのところで接吻を交わし始めました!始めはついばむように、そして徐々に…。ううううう。
あまりの混雑に顔を背けることもできない私の目前で、描写するのも不愉快な光景が繰り広げられます。目を閉じても、世にも不快な音が追いかけてきて、私の繊細な魂を踏みにじり続けます。いっそのこと、一思いにこの世から私を消して欲しい…。半分くらい本気で神様に祈る、イタイケで哀れな子羊・荒川愛花、23歳。
夏の満員電車よりはるかに不快指数の高い現実がそこにはありました。思い出すだけで…!ううううう。ベタベタする若者は見慣れましたが、顔の真ん前でとは!「キスする権利」と「キスする場面を見たくない権利」とどちらがより重んじられるべきなのでしょう…。しかし、少なくともその時の私の基本的人権は限りなく非人道的に蹂躙されていたような気がします。
…満員電車なんか、大嫌いだ!!
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