仕立て屋のつぶやき
よくある話から 気をつけたい話 仕立て屋からのアドバイス 仕立て屋からのお願い
 よくあるお話から
 成人用きもの地で、2才用子供(女児)『きもの』を仕立てる時の話から〜
 和服は洋服に比べると、リホームの範囲も広く経済性も高いのですが、時にはどうかと思われるご注文もあります。それは初孫さん(2歳)の『きもの』をつくりたいとのことです。
 初孫さんですから、おばぁ〜さまの張り込みと孫の健やかな成長を願う気持が偲ばれますが、その反物は何十万円もするような子供用にしては立派過ぎるものでした。
 店員さんは『成人になっても着られるように、本裁ちで三っ身寸法でお願いします』とのことです。(お店にとってお客様は神様です。高額の反物を買っていただくことはあり難いことです。)
 勿論、仕立屋はお客様にアドバイスする立場ではありませんから、お客様のご希望を叶えるようにお仕立をすることになります。表地も裏地の胴裏も最大限の打揚げをすると胴裏などは肩ほど引き返すことになります。八掛地も相当に縫いこんで仕立上がりました。
 仕立上がってからも子供さんの身長や裄丈に合わせて腰揚げ、肩揚げ、袖揚げをしなければなりません。2才の誕生日を過ぎたばかりのお孫さんには、それでも大き過ぎますから、揚げの裏に更に揚げをしなければなりません。揚げの位置により年令による揚げのバランス、かわいらしさなども表現しなければなりませんので、とっても難儀致しました。
 揚げをして出来上がったお孫さんの『きもの』は、まるでお人形か、お猿さんに着せる『きもの』のような、小さな小さなきものが出来上りました。
 『長襦袢』地も大人用、無双袖で振りはぼかし付きです。
 おばぁ〜さまや親御さんにとって、お孫さんのかわいらしい『きもの』姿に目を細められたこととお察しします。でもこのお孫さんは、子供用にしては重量のあり過ぎる『きもの』を着て苦しかったことと思います。
 きっと、何度も着用するうちに『きもの嫌い』になられたのではないかととても気にかかりました。
※ 年齢に合った『きもの』を作りましょう
 (子供さんは成長の過程で、せっかくおばぁ様が作ってくださった着物も成長の過程で、何度も着るうちに、しみ汚れなど付きますので、成人するまで綺麗なまま保つのは無理と思われます。)
 
女児・四つ身きもの(肩、腰揚げをしている) 女児・四つ身きもの(肩、腰揚げをしていない)
通常の『四つ身裁ちきもの』(肩、腰上げをしている)
『四つ身裁ちきもの』(肩、腰揚げをしていない)
  上の写真は、よくある話からの『きもの』には関係ございません
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 気をつけたい話
〜着用後のお手入れ〜
 『きもの』を着用後にすぐにタンスにしまう方がいらしゃいます。再びきものを出した時にシワがしつこく付き、アイロンをかけてもなかなか元には戻りません。また汗を抜かずにしまうとシミの原因にもなります。着用後は、どうぞ1日程ハンガーなどに吊るして汗を飛ばした後に、軽くアイロンで(この時あて布をして)シワ伸ばしをしてから『たとう紙』に入れてタンスにしまいましょう。
〜防虫剤は1種類に〜
防虫剤を使用する場は、くれぐれも1種類にして下さい。2種類以上使用すると『きもの』の変色を招きます。他の衣類についても同様です。
〜『きもの』のしまい場所〜
『きもの』は湿気を嫌います。大切なきものが湿気を吸わないように『たとう紙』に入れ、タンスの上段にしまいましょう。
〜しみ汚れの処理は専門家に〜
出先で『きもの』に汚れをつけた時は大抵の方はあわて、水などを浸み込ませた布で『きもの』に付着した汚れを取ろうとして汚れの上を叩いたり擦ったりしますが、その際に『きもの』の生地の糸目が撚れたり致します。このように糸目が撚れたりしますと、後で染抜き屋さんに『きものの染抜き』をお願いしても、元どりに戻らないことがあります。
 汚れの上から軽く叩くことは良いのですが、決して擦ることが無いようにしましょう。『しみ』『汚れ』はクリーニング屋さんより、呉服屋さんと取引している染抜き屋さんにお任せしましょう。
※これは、よく聞く失敗談です。また、付着した汚れは何だったかメモしておき『染み抜き屋』さんに伝えましょう。
〜薄物きものは(夏の絽・紗)の足元にも気をつけて〜
夏街を歩いてたまに見かけることですが、美しく涼しげな紗や絽の『きもの』を着ていらやるので、つい上から下まで(足元まで)みると、足首がむき出しになっていて見苦しく感じてしまいます。『美しいきもの姿』であるためにも長襦袢の裾線ときものの裾線も合わせるように気を使いましょう。
 夏物の透ける『きもの』の着付けが難しいとお考えの方は、後ろ身頃の腰から裾までに居敷当てを付けることをお勧めします。また、長襦袢の袖も『きもの』に合わせ(袖丈・袖巾)ましょう。
※長襦袢の裾は『きもの』の裾より1寸(4cm)以内に止めましょう。※長襦袢丈は自分の (身長×0.83) が目安でしょう。
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  仕立て屋からのアドバイス
〜 着丈、腰巾、胸囲寸法について
 『きもの』のお仕立をお店にご注文されるときには、身長・腰巾・胸囲などは正確にお伝え下さい。特に身長は加齢により、自分でも気が付かないうちに何センチか背が低くなっております。
 特に長コートの着丈寸法は引きずることが無いように注意が必要です。
※特にコートの着丈・腰巾・胸囲などは、店員さんに直接計っていただくことをお勧めいたします。
 〜裄丈(肩幅と袖巾をプラスした寸法のこと)について〜
長襦袢・きもの(長着)、羽織、コートの肩幅は同じ寸法に揃えましょう。
特に、昔お母様に作っていただいた『きもの』『長襦袢』と最近買った『きもの』や『長襦袢』寸法がバラバラですと、最近買った『きもの』にお母様から買っていただいた『長襦袢』を組み合わせて着ようとしたときに利用できません。特に『長襦袢』の肩幅が『きもの』の肩幅寸法がせまい場合は、『きものの袖の振り』から長襦袢がはみ出し綺麗なきもの姿になりません。
※また、長襦袢の袖丈もきもの合うように揃えておきましょう。
〜ご自分の『きもの寸法表』は呉服屋さんから貰っておきましょう〜
 仕立てるたびに不揃いの『きもの寸法』にならないように、『きもの長着寸法表』は必ず貰っておきましょう。
長襦袢・長着(きもの)・羽織・コートの仕立寸法を長着寸法に合うように仕立てておきましょう。
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  仕立て屋からのお願い
〜お客様が柄の指定をしたい場合は、はっきりお伝え下さい〜
 小紋柄、特に縞柄、反物の片側が濃淡がはっきりした追いかけ柄、大柄な模様などは、仕立て方によっては大変イメージが変わってきます。ご自分のイメージに合った『きもの作り』をするためにも柄の指定をすることも大切なことです
〜 仕立直しをする時には、必ず洗い張りをしてから仕立てに出しましょう〜
 仕立物の寸法直しをお受けした時のことですが、呉服店の店員さんのお話によりますと、『この着物はあまり着ていないので洗張はせずに、身幅の幅出しと身丈を少し短くして欲しい』とのことです。
 お店には寸法直し(身幅直し・身丈直し・コートなどの着丈直し)の時などはお客様に、必ず洗張をするようにお勧めして下さいと伝えているのですが、お客様にしてみれば洗張代金も結構な出費になるものですから洗張を省くわけです。呉服店の店員さんも洗張以外の『きもの』や『コート』など買ってもらう手前、強く洗張するように言えないのです。
 いざ寸法直しの段になって裾を解いてみると、裾に砂が入り込んでいて長年着用していたことが良くわかります。直しの時にアイロンを当てるのですが、お客様の汗の臭いで何とも言えないスッパイような臭いが私の周りに立ち込めるのです。少々アレルギーぎみの私の目はかゆく鼻水は出てくるわ、咳き込むわで、眼科や薬局の薬を買うことになります。
 どうぞ、寸法直しなどは洗張などをしてからお出しください。お手入れが良いきものは変色、しみ、虫食いなどもなく孫子の代まで着用ができますよ。
※ お手入れが良い着物は孫子の代まで着用できますよ※呉服屋さんには、仕立て屋の健康にも気を使っていただければ有難いのですが。
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