窓・覗いてみましょ
枝垂桜が美しい
写真は川内恒子さんよりおかりしました
                   
 日本の『きもの』ほど様々な模様を美しく現した衣装はありません。豊かな 四季の地に暮らす私たち日本人は、植物・動物・自然現象などを日本人の美意識によって模様化され磨き伝えられてきました。この様々な文様は『きもの』や『帯』などに美しく表現されています。
 植物文様
植物文様では、生命力あふれる木や可憐な花を愛で四季の美を表現しています。
 動物文様
動物文様では他国に比べると鳥・動物・昆虫の文様はあまり多いとは言えません。動物文様を代表するのは、やはり鶴・亀・鴛鴦(おしどり)・千鳥・孔雀・燕(つばめ)・馬・兎・鯉・猿・貝などです。昆虫では蝶・トンボなど、主にその動物などにまつわる形の美しさ・めでたさにあるとおもいます
 風景文様
風景文様では留袖や訪問着などに見られる山水画や富士山・遠山・茶屋辻、五重塔・金閣寺などの寺院、大名行列などありますが、それらはまるで『きもの』の中に一幅の絵を見るような光景が展開されています。
 その他の文様
その他の文様では 自然現象である霞・雪・雲・稲妻・水・氷・波など現されています。また、これらを幾何構成した文様や、楽器・扇子・鏡・鈴・手毬など器物文様。文字や、般若心経などの経文まで文様にしたものまであります。
 私たちが何気なく着ている『きもの』や『帯』にも様々な『いわれ』があり、これらの文様は家族の幸福と繁栄を願う祈りが込められています。
     きものと文様      
植物文様 動物文様 風景文様 その他の文様
植物文様
桐文   桐文        

桐は菊とともに皇室の紋とされてきました。桐は3枚の葉と3房の花をつけて表現します。家紋のほか、代表的な吉祥文様として祝儀のきものや帯に使われています。
薔薇文   薔薇文

薔薇は西洋では愛と美の象徴です。日本ではあまり使われてきませんでしたが、最近は様々に図案化し、振袖・訪問着・付下げに使われています。
青楓文   青楓文

楓といえば紅葉ですが、青楓は青葉の季節を表現する文様です。
爽やかな彩りで描かれた青楓は初夏の季節の文様ですが、秋にも使うことができます。
唐草文   唐草文

正倉院文様の一つである忍冬唐草文をモダンにアレンジした唐草文。
唐草は蔓草(つるくさ)のすいかずらに似た蔓が絡み合って曲線を描く文様で、古代エジプトに生まれ、奈良時代に中国を経て日本に伝えられ、吉祥文様として礼装のきものや帯に好んで使われます。
花唐草文   花唐草文

中国から伝わった唐草文様で形は様々です。花は特定のものではなく、例えば牡丹の花のあるものは牡丹唐草、菊の花があるものは菊唐草、蒲萄の実のあるものは葡萄唐草といいます。花や実を生命力豊かな蔓が取り巻き、吉祥の意味を感じさせられます。
正倉院文様の一つ。
桔梗文   桔梗文

桔梗は秋の七草の一つです、歌に詠まれたり、絵画の題材として愛好されてきました。桔梗紫ともいわれるほど、色が美しいため、夏の訪問着・小紋、帯や家紋にも使われています。
四季花文   四季花文

四季折々の花を組み合わせ文様化したもの、季節を問わず着られる。桜・牡丹・藤・菊など、華やかさは振袖などに好んで使われる。
四季草花文   四季草花文

露芝文に四季の草花をあしらっています。季節を問わず着られる。小紋・能装束・帯など、あらゆる種類のきものや帯に使われる文様です
華文   華文(かもん)

華を象徴化して丸い形に文様化したものです。何となく花のような華麗な文様全般をいいます。古くから文様として使われ、現代も重厚な文様として礼装用帯などに使われています。
四季草花文   四季草花文

まるで稲妻のように模様化された中に、篭目、四季草花、茶屋辻などがあしらわれてとてもモダンな趣があります。
吹き寄せ文   吹き寄せ文

様々な木の葉が吹き寄せられています。松葉・銀杏・楓・桐など散らした文様。松や銀杏は薬用としても用いられ、厄払いとしても身につける帯などに使われています。
『吹き寄せ』という風情のある言葉は親しまれ、料理や菓子の名にもあります。
松笠文    笠松文

常緑樹の松は長生きの象徴でもあり、どちらも吉祥の意味を持つ松の松笠と、竹の古くから用いられてきた笹を配し文様化したもの。1つ2つと重ねて重厚さを現しています。。振袖・訪問着・帯などによく使われます。
きものと文様へ
動物文様
鴛鴦文   鴛鴦文(えんおうもん)
鴛鴦(おしどり)は美しい姿と一対で行動することから、夫婦和合の象徴として詩や絵画の題材とされてきました。華やかでめでたい図柄は、結婚式の色直しや留袖、銀婚式などのきものや帯に最適です。
鶴文   鶴文

波涛文に飛鶴。飛鶴文(ひかくもん)ともいいます。鶴は古くから神鳥とされ『鶴は千年、亀は万年』長生きの象徴とされ、白い羽と美しく飛ぶさま、高貴で誇り高く見える立ち姿は格別で吉祥文様として古くから使われてきました
桐に向鳳凰丸文    桐に向鳳凰丸紋

鳳凰は中国では想像上のめでたい鳥ですが、鳥の王と位置づけされ、その雄を鳳、雌を凰と称し名君によって天下が太平になると姿を現すと伝えられています。その鳥を向い合せて丸紋にし、桐花をその四方におき、立湧式の中に配した格調ある裂で狂言衣装に使用されています。帯にも使用されています。
獅噛文   獅噛文(しがみもん)

獅子のような怪獣が、歯を食いしばっているように見える文様。古代中国では魔よけとして使われました。正倉院裂(ぎれ)の1つ。現在はこの文様は帯などに使われています。
熨斗文   熨斗文(のしもん)

数本を束ねてある熨斗文は束ね熨斗文ともいいます。祝い事には魚介類で最も貴重な鮑の肉を薄く剥いで引き伸ばし、紙の間に挟んで祝儀の進物や引き出物に添えたのが始まりと聞きます。吉祥文様として婚礼・結納・振袖など最もふさわしい文様です。
狩猟文   狩猟文

獅子や鹿、羊、猪などを馬上の騎手が弓で射る場面を文様化したものです。西アジアを起源とする文様で、獅子狩文は王権を象徴しています。
帯地などに使われています。
蝶文   蝶文

きもので虫類は少ないが、蝶は形も色も美しい。舞う姿が美しく模様化されてきました。振袖から小紋、帯、浴衣、家紋や能装束まで広く使われています
きものと文様へ
風景文様
遠山文   遠山文

遠くに見える重なり合った山々を模様化したものです。古くから絵画の題材として表現されてきました。染織品では険しい山より丸みのあるなだらかな半円形のものが多く、山裾をぼかしています。
波濤に松文   松文

常緑樹の松は普遍性が尊ばれ、千年の樹齢を保つといわれ長生きの象徴として、吉祥の木とされています。能舞台に見られる雄大な老松のように格調高くきものや帯に良く用いられます。季節を選ばずに用いられ重宝です
松文    松文
きものと文様

その他の文様
扇面文   扇面文

末広文とも言います。末が広がることから吉兆の意味があります。平安貴族が使った装身具や祝事の染織品にふさわしい格調があり、扇面に草花や、楽器など様々な文様を入れます。
鏡裏文    鏡裏文

《裏鏡文》ともいいます。鏡は古く中国から伝わり神秘的な力を持つとされています。正倉院には裏を金、銀、螺鈿で飾った華麗な鏡が残されています。
こうした古い鏡が文様化され帯やきものに使われています。

地紙文   地紙文

扇に貼る紙のことです。扇には骨がありますが、紙だけに美しい草花など描いたもの。古くは能衣装・小袖や、めでたい文様として広く使われてきました。
七宝文   七宝文

なじみ深い七宝文様は、同じ円を4分の1づつ重ねていく文様で、輪繋ぎの1種です。工芸品などにも多用されています。
ちなみに仏教で七宝は金・銀・めのう・真珠・水晶・珊瑚(さんご)・瑠璃(るり=青色の宝石)
流水文   流水文

他国の文様には自然を取り入れたものものがありますが、中でも水は、日本ほど優美に模様化せれているものはありません。水は水文・流水文・観世水文などがあります。固有の形をもたない水ゆえに、曲がりくねって流れる水はどのようにも表現されます。
籠目文    籠目文

竹で編んだ籠の網目を模様化したもの。模様の一部に籠目を使ったものや、小紋染、帯の地紋などに見られます。
籠目に花    籠目文
片輪車文と波文    片輪車文と波文

御所車の水に半分隠れた片輪車(かたわぐるま)と、逆巻く高い波は男波、または片男波ともいい、波にも低い波は女波など波にもいい、いろいろな表情があります。
波と飛鶴、千鳥、舟、魚、錨、寒菊などと組み合わせ風景模様として使われたりします。
浴衣から礼装用の留袖まで、帯にも広く使われています。
博多献上   献上

博多帯の伝統文様です。黒田藩が江戸幕府に献上したことで、この名称がついた。現在は男子・女子の帯として愛用されています。
蜀江文   蜀江文(しょっこうもん)

中国から伝来した文様。その特徴は八角と四角がつながったようになり、その中に色々な文様が入ります。帯地によく使われます。
麻の葉文   麻の葉文

正六角の文様。形が大麻に似ているのでこの名称がついた。麻は種子が多く丈夫で成長が早いことから、子孫繁栄などを意味します。子供の産衣にも使われてれます。
本文    本文

紗綾形文に菊と蘭があしらわれている合わせ文です。本格的とか本式という意味を持つ。本文綸子(りんず)ともいいます。徳川家の定めた柄を本文と呼んだからともいわれています。
長襦袢地の地紋、喪服用の帯に使われています。
手毬文   手毬文

手毬はぜんまいの綿やおが屑を芯にして綿糸を巻きつけたものです。
江戸後期には五彩の絹糸で巻き、御殿茉莉として流行りました。色彩の華やかさから子供者のきものなど、愛用されています。
鼓文    鼓文

楽器文の一つ。王朝の雅に通じる和楽器の小鼓に桐、菊などを配し優雅な雰囲気の模様です。
きものや帯などによく使われます。
紗綾形文   紗綾形文(さやがた)

卍の字を崩して組み合わせ模様化したもの。端正で品格のある模様で昔から武家に好まれました。きもの地、コート裏地、白生地の地紋など広く使われ、また喪服の帯にも良く使われています。
雪輪文に手毬    雪輪文

雪輪に鞠、桜を配した愛らしい文様。
雪輪は雪の結晶に見られる六角形の輪郭を円形に描いた線模様。雪輪の中に模様を入れたりします。平安時代からあり、能装束にも見られます。振袖、留袖、帯など幅広く用いられる。
百壽文    百壽文

寿(壽)の文字を模様化していますが、寿文ともいいます。書体は様々あります。寿は長命を表す文字として多様されてきました。祝儀用に用いられ祝布団
、袱紗(ふくさ)留袖、帯にもよく用いられる吉祥文様です。
雲文(うんもん)    雲文(うんもん)

千変万化する雲の形は様々に利用されています。各種工芸品から染織品に見られます。きもの地では地紋、また他の文様と組み合わされ振袖、留袖、小紋柄、帯にと広く使われています。
毘沙門亀甲文    毘沙門亀甲文

亀甲を山形に三つ組み合わせたもの。毘沙門天(びしゃもんてん)の甲冑(かっちゅう)の文様にちなむ名で地紋や帯柄によく使われています。七福神の一神として信仰されています。
鮫小紋     鮫小紋

細かいドットの鮫(さめ)皮状の模様で極鮫といいます。
島津家の定小紋(さだめこもん=江戸時代、大名が裃につけた小紋のこと)でした。格の高い小紋三役の一つで人気があり、お茶席や各種行事用のきもの地、略喪の法事きもの地に使われて、とても応用範囲が広い文様です。
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