『  伝説  ― (7) ―  』

 

 

 

これは 遠いとおい昔の そして 遠いとおい外国 (とつくに)

でのお話です。

 

      いつの頃のことか・・・って? 

      どこの国のことか・・・って?  

 

      さあ ・・・・

    

      ― 貴方のお好みのままに・・・

 

 

 

 

********   北方紀行

 

 

   うお〜〜・・・・・ ん   う〜〜〜

 

突然 低く重い呻きが 大地の底から湧き出てきた。

 ― いや 湧き出るみたいに聞こえてきたのだ。

 

フランソワーズ姫は ぴくり、と身体を震わせた。

「 !?  な なんの音?? 」

「 風が 岩場を抜け大気を震わせているのかもしれません。 」

「 ・・・  この地域に岩場があるの? 」

「 確証はありませんが ― この音はとても生物の鳴き声とか

 ではないと ・・・ 」

「 そうね  なにか不気味だわ 」

「 気をつけてゆきましょう。 」

「 ここを抜けないと北へは行けないわ ― でも この土地が心配よ。

 ここは 独逸帝国の大切な穀倉地帯ですもの。 」

「 ・・・ この硬さでは穀物はおろか どんな植物も繁茂できませんよ 」

「 大変だわ ・・・ これは多分 黒い悪魔が裏にいるわね 

「 そうですね。 用心してゆっくり行きましょう 

「 ええ、 この硬さでは 馬さん達の蹄が心配よ。 

 よしよし・・ 大丈夫? 」

フランソワーズ姫は愛馬の首をそっと撫でた。

「 お前も大丈夫かい?  ― うん ぼくは降りて歩こう。

 ああ 姫様はどうぞ騎乗でいらしてください。 

ジョーは身軽に地面に降り立ったが ・・・ 顔を顰めた。

「 ! う わ ・・・ 」

「 どうしたの? 」

「 この地面 ・・・ 硬い なんてもんじゃないです!

 今 飛び降りた時 ず〜〜んと足元の固さがアタマに突き抜けました。

 あ 姫様はそのままで! 」

「 わたし 平気だわ 」

「 いえ ・・・ こんな地面 長くは歩けません。

 こら クビクロ! お前もそこにじっとしてろって。」

ジョーは 自分の鞍の後ろの方にいる相棒に声をかけた。

 

   わ わん!  ・・・ くう〜〜ん・・・

 

「 ジョー様 ほら これ。 靴の上から嵌めてみて? 

 少しは着地の刺激が弱くなるはずよ 

姫君は 馬に掛けた荷から大きなカバーみたいなモノを取りだした。

「 ・・・ これ なんですか 

「 雪の上と歩く時に使うの。  北の地域にゆくから・・って

 お父様がもってゆけておっしゃって 」

「 あ ありがとうございます・・・  こう  かなあ・・

 あ  ホントだ 少し楽になるかな 

「 よかったわあ〜 さあ ゆっくり行きましょう 

「 はい。  ブラウニー 行こう 

ジョーは愛馬の栗毛の手綱をひき ゆっくりと歩き出した。

足には 所謂カンジキっぽいものを履いている。

 

異様に硬い地域は かなりの規模で広がっていた。

二騎は なるべくまだ土壌が残っている端を通り進んで行った。

 

     うお〜〜〜〜ん ・・・ ううう〜〜〜〜

 

あの不気味な声? 音は ずっと続いている。

地面の変化は 徐々に広大な畑作地域にも広がり始めていた。

 

「 ・・・ 畑が 枯れているわ ・・・ 」

「 この硬い地面では ・・・ あ 農夫さんがいますよ。

 ちょっと聞いてみましょう 」

「 わたしも 」

「 姫様。 なにか異様な雰囲気です。 どうぞここでご待機ください。

 クビクロ。 姫様を頼む 

「 うわん! 」

「 すぐに飛び出せるようにしているから。 クビクロも!

 なにかあったら合図送ってね!  」

「 ― 了解。 そこの 木立の影にいてください 」

「 了解。 」

 

 

「 ・・・ あのぉ〜〜〜〜 もうし〜〜? 

ジョーは 手綱をフランソワーズに預けると小路を通り

さくさく 畑の中に入っていった。

畑では 農夫が一人、背を屈めて耕そうと苦心していた。

「 ・・・ ああ??  」

「 こんにちは〜〜〜  あのぉ 北の国へ旅してるんですけどぉ

 ここいら辺の地面 ・・・ すっげ〜〜 硬くなってません? 」

「 ・・・ 気付いたかい 兄ちゃん 」

「 ええ 馬がね 可哀想なんで 」

「 だよなあ・・・  気を付けな お前さんも 

「 え?? 」

「 ・・・ これは 呪いだ。 あの 黒い悪魔の さ ・・・ 」

農夫は 急に声をひそめひそひそ話になった。

「 黒い悪魔 ですか 」

うんうん・・・と農夫は頷く。

「 兄ちゃん  王都から来たのかい 

「 ええ ・・・ 」

「 そんじゃ 知ってるだろう?  あっちでもウワサになってるはずだよ 」

「 ウワサ・・って なんです? 」

「 だ〜からあ 黒い悪魔の呪い だよ・・・ 」

「 のろい???  そんなもん ないと思うけどなあ

 でも ここいらにも 黒い悪魔がワルサしてるんですか?? 」

「 そうさ あんた。  ここはず〜〜〜っと豊かな畑だったのに・・

 アイツが飛んできて 冷たい息を吹きかけて ・・・

 なんもかんも台無しだよぉ 」

「 そりゃ大変ですね!  すぐに王宮に連絡しなくては!

 皇帝陛下が討伐隊を手配してくれますよ 」

「 ・・・ 無理さ  」

農夫は さらに囁くみたいに呟く。

「 無理? そんなこと ないです!

 お若い皇帝陛下はとても勇敢で慈悲深い方ですから 

「 ― 兄ちゃん。 アンタ なんも知らんのか ・・・ 」

「 え?? 」

「 呪いがかかってるんだ  −  皇帝一家には なあ 」

「 !?  呪い?? 」

「 んだ。  ・・・ 皇帝陛下の あの腕・・・ 

 アンタ 見たこと、あるかい 」

「 腕?? 皇帝陛下の ですか 

「 ・・・・ 」

深くうなずくと 農夫はぼそ・・・っと言った。

「 恐ろしい鐵 ( くろがね ) なんだと。

 黒い悪魔の呪いで そんな腕になっちまったんだ ・・・

 だんだん身体が鐵に変わってゆき  今に全身が  」

「 ・・・・ 」

「 おまけになあ〜 あのお妃が。

 見たこと あるかい?  こう・・・ 頬から首にかけて

 おっそろしい傷痕で  引き攣れているんだと。

 せっかくの美貌が台ナシだよう〜〜〜

 ・・・ それも黒い悪魔に逆らったから 呪いが 」

 

    「 それは デマです。   間違いです 」

 

ジョーは 憤然としてそして毅然と言い切った。

「 ― はへ?? 」

「 皇帝陛下のおん腕は 確かに一部分鋼ですけど・・・

それはあの妃殿下を 黒い悪魔から護るために闘ったから です! 

そして 妃殿下の傷は 勇敢にもアイツと闘われた証ですよ! 」

 

    ほう??  そこまで 知っているのかあ〜〜〜

 

突如 農夫の声が変わり 彼は ぬう〜〜〜っと身をおこした。

「 ! 」

「 ― お前はぁ〜〜〜 皇帝の手のモノだな 

 ここで捻り潰してくれるわあ〜〜〜〜 」

 

     ザザザザ。 ズザザザザ 〜〜〜〜〜

 

ひゅるひゅるとヤツの腕脚が伸びる。 

農夫の姿はどこにもなく、全身まだら模様で蓬髪が渦巻いたモノが

ジョーを睨みつけている。

 ― もはやニンゲンではない。

それは蜘蛛にも似た容貌の怪物だった。

 

「 がははは〜〜〜〜  小僧〜〜〜 

 ここがお前の墓場となるのだぁ〜〜〜〜  がはははは 」

蜘蛛男は ぴょ〜〜んと跳び上がった。

「 黒い悪魔の手先か!  こい ぼくが相手になってやる! 」

ジョーは 剣を引き抜き油断なく構えた。

 

  シュ −−−−   ダダダダダ −−−−

 

蜘蛛男と騎士は 凝り固まった大地の上を縦横に走り回る。

お互いにスキを狙い攻撃するのだが ― 決め手とならない。

 

    シュタッ −−−   ジョーの振り下ろした剣は空を切る

 

    ザザザッ ドーン  蜘蛛男の投げる鉛弾が 空き地に散る

 

「 ・・・ ヤツはぼくと同じ速度で走れるのか! 」

「 小僧〜〜  ちょこまか逃げまわりおって〜〜〜 」

 

     シュ −−−−   ダダダダ −−−−

 

付近は埃の混じった風が渦巻き 枯れかかった畑作物がからからと飛ばされてゆく。

全体に灰色の煙幕がかかった風になり 視界は極端に悪い。

 

遠目にはもくもくと砂煙が渦巻いているだけだ。

「 ・・・ だめだわ  このままでは疲れた方が負けてしまう・・・

 怪物相手では ジョーが圧倒的に不利 ・・・  

フランソワーズは 大木の影でじりじりし始めた。

「 わたしも − 」  一歩 踏み出した時 ・・・

  

      わんっ!    クビクロが吠え じっと見上げてきた。

 

「 え なあに 」

 

      わんっ    う〜〜〜 う〜〜〜〜  くうん・・・

 

茶色犬は身体を振り背嚢を落とす。 さらにそれを前足で引っ掻いている。

「 ・・・使えっていうの? 」

「 わん!! 」

「 ― わかったわ。  ・・・ ありがとう! 」

フランソワーズは小さな背嚢を開け −  手早く細工をした。

 

  そして ―  愛用の弓矢を構え 砂埃の渦に向かって正面に立った。

 

      ジョー ・・・   あなたは   そこね!

 

キリキリ −−−  弓は引き絞られ満月に近くなり ひょうと矢は放たれた。

 

 

        ヒュンッ ・・・・   ボッ!!!

 

 

「 ・・・ ぎゃああああああ〜〜〜〜〜〜 」

 

突如  蜘蛛男が ゆっくりと倒れた。

 

     − 飛んできた炎の塊に射貫かれたのだ −  

 

 

「 ・・・ はあ  はあ   は あ ・・・

 

ジョーは からくも体勢を保っていたが 荒い息を止められない。

「 ― ジョー様!  怪我は ! 」

フランソワーズ姫が 駆け寄ってきて彼を支えてくれた。

「 ひ 姫様 ・・・  あれは 姫様が・・・? 」

「 クビクロが あの火を使えって。

 ええ 矢の先に < 常火の元 > を仕込んで  射たわ 」

「 姫様!  よく ・・・わかりましたね 

 ぼくとアイツは埃の中でかなりの速度で走っていたのに ・・・ 」

「 ・・・ わたし  ジョーが走る音を知っているわ。

 クビクロも唸って教えてくれました。

 − だから 聞き慣れていない方に矢を射たのよ 

「 そうでしたか ・・ しかしすごいなあ〜 一発必中だ ・・・ 」

「 ・・・ やだ わたしったら・・・ 

 今になって 手が 震えて・・・止まらない 」

「 ありがとう ・・・ 姫君 」

ジョーは その白いしなやかな手を両手で包み我が胸に当てた。

「 ・・・ 温かい ・・・ ぼくの最高の味方だ 」

「 ジョー様 」

「 ジョー でいいです 姫様 」

「 姫様 は やめて。 わたし達 ・・・ 仲間 でしょう?

 フランソワーズ って呼んで 」

「 え・・・ 」

「 ここにはわたしとジョーと 勇敢なクビクロ君しかいません。 

 仲間だけよ 」

「 ― きみは ・・・ いいのですか 」

「 当たり前だわ わたし達、<伝説のコンビ> でしょう?

 二人で一組よ!  遠慮していては可笑しいわ 

 

    ふ フランソワーズ ・・・   ジョーはこそっと言い

 

「 ありがとう ありがとう ありがとう〜〜〜 」

やっと気づいて ジョーは握っていた手を慌てて離した。

「 あ ・・・ご ごめん ・・・ 」

「 そんな  謝ったりしないで 」

「 くう〜〜〜ん 」

「 あ ごめん ごめん クビクロ〜〜 お前もありがとうね 

 本当にお前は賢いなあ 

どぎまぎしつつ 照れ隠しに彼は愛犬のアタマをさかんに撫でてやった。

「 わん〜♪   ! わ ワンッ ! 

クビクロは得意気に尻尾を振っていたが すぐにまた前方に駆けだした。

「 あ? クビクロ〜〜 どうした??   −  おわ! 」

ジョーは慌て追ったが ぎくり、と立ち止まっている。

「 ? どうしたの ジョー 」

「 こ  これは ・・・ 」

 

    バキバキバキバキ ・・・・  ズゴゴゴゴゴ 〜〜〜〜

 

蜘蛛男が倒れたトコロから 硬い地面には細かいひび割れが広がってゆく。

そしてひび割れたトコロから陥没し始めた。

ジョーは ぎりぎりの縁で立ち止まったのだ。

やがて 蜘蛛男は地面に呑み込まれていった・・・

 

「 やはり 黒い悪魔の・・・? 

「 あの火に完全に焼かれたら 決して復活はできません。

 それは 悪魔でもできないのです。 」

「 あの火は ・・・ コズミ先帝が御造りになった? 」

「 そうです。 コズミのおじさまが 愛する者を護るために 

 愛する者の危機に 使うように、って ・・・ 」

「 すご い ・・・ 」

「 クビクロは本当に忠実で賢いワンちゃんね。

 彼が これを使えって教えてくれたのよ。 」

「 そうですか!  ・・・ やあ 相棒。

 ありがとうな ・・・ よくやったなあ〜〜 

 

    くうん〜〜 ♪♪

 

むちゃむちゃ撫でてもらいジャーキーのオヤツも貰い クビクロは

大喜びだ。

 

「 ふふふ ・・・ 相棒 なのね 」

「 そうです。 ずっと・・ 一緒です。 」

「 ―  わたし は ・・・? 」

「 え  あ    ひ  姫様は 」

「 フランソワーズ  よ 」

「 あ ・・・ え〜〜〜 ふ ふらんそわーず  は

 大切な    な 仲間です!  同士です! 」

「 相棒 にはまだなれないのねえ ・・・ 」

「 え そ それは〜〜 」

ジョーはもう 真っ赤になってどぎまぎしている。

「 ふふふ ごめんなさい。 はい 仲間で同士です! 

 少し休憩してゆきましょう  ジョーは疲れているはずよ?

「 すいません ・・・・ 

 あれ ・・・? あの怪物の死骸も消えたのに ・・・

 ここの地面 まだカチカチですねえ  」

ジョーは コンコン・・・と足踏みをする。

「 そうねえ  ・・・ ああ あの雲がお日様を

 邪魔してるからかもしれないわ 」

「 ふうん ・・・ 空の雲まで支配しているのか・・・? 」

「 ! そうだわ ・・・ この指輪でお日様に光を援けて

 いただきましょう!  ね?  

フランソワーズは 首から下げていた金の鎖をたぐり 見事な指輪を

掌に乗せた。

「 それ・・・ ぼくがいた城の森を救ってくださった

 光の指輪 ですね! 」

「 ええ 次の西班牙国王となられる方から拝借したの。

 この指輪で太陽の光を呼び寄せましょう 」

「 この地を 豊かな農耕の地 に戻さないといけないですよね 

「 はい。  ―  光と熱と優しさの太陽よ ・・・ 」

 

フランソワーズは 指輪を頭上高く大空に向かって差し上げた。

 

    どうぞ この指輪を目当てに この地域に ― 光のチカラを!

 

「 ・・・!  雲が! 」

ジョーたちの頭上に重くのしかかっていた厚い雲が ゆるりと動き始めた。

「 見て! 間から青空が見えてきたわ! 」

「 ホントだ〜〜 すごい すごい〜〜〜 」

「 お日様 〜〜〜〜  お願いしまああす〜〜〜 」

 

    パア −−−−−−−   

 

明るい光が挿してくるにつれて 辺りの空気もほんわり温かくなってきた。

「 ・・・ うわあ〜 お日様のチカラってすごいわねえ 」

「 はい! 植物たちも喜びますよね  ・・・ あれ? 」

ジョーは 足元の大地に目を向けたが 首を捻った。

 

    コンコン カツン ・・・  大地はまだ硬い音がする。

 

「 う〜〜ん まだ溶けないのかあ 」

「 そうねえ 急には無理なのかしら 」

「 ― どうかなあ ・・・ でも早く潤びないと・・・ 」

太陽の光だけでは なかなか大地は潤ってはこないのだ。

空気の冷たさは 完全には消えてはいない。

「 時間がかかるのかしら  でも 今が一番いい季節のはずよね 

 もう一度 指輪にお願いして ・・ 」

「 姫 ・・・ いえ フランソワーズ ・・・

 ちょっと待っていてください  

「 ?? なにか よい考えがあるの? 」

「 はい 

ジョーは深くうなずくと 腰に帯びてきた剣を手に取った。

 

「 今 使うべき時 か ― 」

「 ― え? 」

「 ・・・ 風の精よ   大地の精よ  目覚めておくれ  」

 

    ひゅんひゅんひゅん〜〜     ガッ !!

 

ジョーは 剣を引き抜き 空を切り裂き ―  大地に突きたてた。

 

  ゆらり。  一瞬 周囲の空気が歪み大地が揺れた。

 

「 !? な なに・・・? 」

「 ― ふふ ・・・ぼくの願いは届いたみたいですよ 

「 え え?? 願い?  ―  あ あら? 」

 

     よう〜〜     むうう ・・・

 

二人の前に  ひょろりとのっぽの赤毛 と 褐色の肌の大男 の姿が

現れ  ―   たちまち消えてしまった。

 

「 !! 

フランソワーズは 目を皿のようにしたまま、凍り付いている。

「 あ  やあ〜〜 風くん  大地さん 

ジョーは 柔らかい笑顔で 親しい友を迎える様子である。

「 ・・・ あ   あのヒト達・・?? 」

「 え? ああ 彼らはね 風を司る精霊 と 大地の精霊 なんですよ 」

「 風  と 大地 ですって?? 」

「 はい。 ぼく ・・・ ずっと友達なんです。

 あの城で暮らしている頃から 」

「 トモダチ??? 」

「 そうです、一緒にいろんなトコ 行ったなあ〜〜

 遊びトモダチ かなあ 」

「 え  ええ??? 」

 

      凍える大地を 溶かしてくれて ありがとう!

 

足元の地面の中から 温か味のある声が響いてきた。

ぱああ〜っと明るい笑みをうかべ ジョーは足元に語りかける。

 

「 この姫様に御礼してね〜〜〜

 ねえ これで また豊かな実り、期待できるよね? 」

 

      むう ・・・ 約束するぞ

 

「 なあ?  茶色髪のジョー  」

 

  ひゅるん〜〜  一陣の風が二人の前に吹き寄せてきて・・・

 

「 これ やる。 」

風は なにか切り取ったみたいな透明の衣を差し出した。

「 へ!  これ。 とっとけ〜

 オレ様みたくによ〜〜 さ〜〜〜っと動ける衣さ、やるよ 」

 

   ひら ひらひらひら ・・・・

 

一片の風が ジョーの腕の中に舞いこんできた。

「 これ 着れば風にのれるぜぇ〜〜   星の彼方までゆけるかもなあ〜 」

「 ・・・ え ・・・ これを ぼくに? 

「 へっへっへ・・・ ありがとな〜〜〜

 チビの頃によ お前とよぉ いろんなトコ 行けて 楽しかったっぜえ〜〜 

 

    ひゅるん ・・・  風が吹き抜けて行った。

 

「 あ ・・・ う うん ・・・ 楽しかった よ・・・・

 ぼくも ぼくも  楽しかったんだ ・・・  風君 〜〜〜 」

ぽとぽとぽと ・・・ 温かい涙が ジョーの足元に水玉模様を描いた。

 

「 ジョー ・・・ だれか いたわ あなたの側に。

 ねえ ・・・ のっぽで赤い髪のヒトが見えたんだけど ? 」

フランソワーズが そっと側に来てくれた。

「 ― え。  彼が  見えたんですか!? 」

「 薄い影みたいだったけど ― ジョーのお友達? 」

「 う   うん ・・・ そうなんだ。 

 ぼくが少年の頃 よく一緒に遊んだよ  

 あちこち ・・・ 二人で 飛んでいって遊んだ 

「 そう ・・・ 素敵なヒトね。  なんという方? 」

「 あ ・・・ うん。  風のジェット かな。 」

 

   ジョーは 顔いっぱいの微笑を空に向けていた。

 

「 俺もいつもお前と一緒だ。 」

足元から ゆったりとした声が湧きあがってきた。

「 え???  な なんか地面から 聞こえるんだけど??? 」

フランソワーズが恐々 大地を見つめている。

「 あ ・・・ あ〜〜〜 ふふふ そうなんです。

 お〜〜い 大地の精さ〜ん  姫君がびっくりしているよ ? 」

 

    もわ〜〜〜  ほんの一瞬 大地から褐色の湯気が立ち上った。

 

「 あ  あ    ああ???  うそ・・・ 」

びっくり仰天している姫君の前に 褐色の肌の巨人が いた。

「 ― 姫 ・・・ 」

「 ・・・ あ あの フランソワーズ・ド・フランスです ・・ 」

「 驚いたでしょ でもね 彼は心優しい精霊ですよ。」

ジョーが そっと側に寄り添ってきた。

 

「 大地の精さん。  この地を祝福してくれますか 

  

     もわもわ〜〜〜ん   巨人の腕が動き 大地が潤ってゆく。

 

「 ・・・ むう   この地はまた豊かになる。

 これからはこの地の全ての精霊は お前達の味方だ 」

「 ありがとう! 」

「 ここの土を少し持って行け。  どこの地に落ちても

 そこは 祝福された豊かな大地になる。 」

「 まあ・・・そうなの?  ありがとうございます! 」

フランソワーズは 地に屈みこむと 白い手で土を掬いあげた。

 

      豊かな大地よ ―

      どうぞ しっかりとこの国に根付いてください

 

      そして 国中が豊かになりますように ・・・!

 

「 ・・・ 安心して ゆけ ・・・ 勇敢な二人よ 」

大地からの声は それきり ― 聞こえなくなった。

 

「 ― ねえ 彼もジョーのお友達? 」

「 あ  はい ・・・ 母が紹介してくれました ・・・

 ぼくは 風と大地が 樹々と動物たちが トモダチだったんです 」

「 素敵な少年時代ね ! 」

「 ―  ありがとう  フランソワ―ズ ・・・ 」

 

淡い笑みを交わし合い 二人ともほわ〜〜んとココロが

温まってきていた。

 

「 ねえ ジョー。  さっき ・・・ 嬉しかったわ 

「 ??  剣のことですか? 」

「 ううん ・・・ 蜘蛛男との闘いのとき。

 アイツが ヒルダ妃さまについて、酷いことを言ったでしょう? 」

「 はい。 許せないです! 」

「 そうよね  ジョーは真正面から あの傷痕は勇気の証 って

 言ってくれたでしょ 

「 だってそうでしょう?  あの黒い悪魔とサシで格闘する なんて

 すごいですよ〜〜〜〜 」

「 そう ・・・ ジョーは ヒルダ妃様の あの傷痕 ・・・

 なんとも思わない? 」

「 そりゃ ・・・ 治療は大変だったろうなあ〜 お辛かっただろうなあ

 って思うけど   なんかちょっとうらやましいです 」

「 羨ましい??  

「 はい。 皇帝陛下は あの傷痕をとても愛でていらっしゃる。 」

「 ・・・ ええ  ええ ・・・ 」

「 あのお二人は 本当に心から愛しあっているんです  いいなあ 

「 ―  ありがとう ・・・・

 傷痕が 羨ましいって言ってくれたのは − ジョーが初めてよ 」

「 そうですか?  だって素敵なカップルですよねえ 」

「 ・・・ 」

フランソワーズは 立ち上がると黙って上着をとり

チュニックのボタンを外し −

「 ひ 姫様!  な なにを・・・ 」

「 見て。 

「  へ・・・? 」

「 見て。 わたしの背中。   この傷痕を

 黒い悪魔が 引き裂いていった痕を。  」

「 え ・・・・  う ・・・・ 」

 

白いしなやかな背中には ひどい引き攣れのある傷痕が

数本 ・・・ 縦に走っている。

それは初雪を踏みにじったがごとく 無残なものだった。

 

ジョーは 一瞬息を呑んだが すぐに姫の背中にそっと掌を当てた。

「 ぼくは − 誇らしいです。

 でも 寒そうですよ〜〜〜  ほら背中がくしゃみしちゃいます 

ジョーはごく自然に彼女の肩に シャツ・ブラウスをかけ

白い半裸の姿を 隠した。

 

「 ! ・・・ あ  ・・・ ありがとう  ジョー ・・・ 」

姫も 涙を目尻に挟みつつ 絹のシャツ・ブラウスを羽織った。

「 このことを知っているのは家族だけなの。

 お父様 亡くなったお母様 そして 兄さまだけ・・・ 

 でも −  誇らしい と言ってくれたのは 

  ・・・ ジョー だけです 」

「 姫・・・ いえ フランソワーズ ・・・ 

 きみは ぼくの誇り です。 」

「 ジョー ・・・ ありがとう ! 」

「 ・・・ 」

ジョーは す・・・っと手を差し出した。

フランソワーズは 自らの手を預けた。

    

      さあ。   行きましょう  !

    

      行こう !  一緒に。

 

 

       北方の大地は 目の前だ

 

Last updated : 11.23.2021.        back      /     index    /    next

 

 

**********  途中ですが

相変らず つまらない展開で恐縮です  <m(__)m>

・・・ 止めたほうがいいかも ・・・ ( ;;)