『 伝説 ― (3) ― 』
これは 遠いとおい昔の そして 遠いとおい外国 (とつくに)
でのお話です。
いつの頃のことか・・・って?
どこの国のことか・・・って?
さあ ・・・・
― 貴方のお好みのままに・・・
******************* 国境の森にて
ぐああ〜〜〜〜〜〜 ほっほっほ ・・・・
突然 城の方角から甲高い・わざとらしい〜〜〜 笑い声が響いてきた。
「 ・・・ なに あの耳障りな声 」
アルテミス姫は 形のよい眉を思いっ切り寄せている。
「 アルテミス様 おそらく あれが魔女タマアラの声ですわ 」
「 まあ それではあの城がタマアラの本拠地 ? 」
「 はい。 そしてあの城の中に捕らわれている方が
いらっしゃるはずです。 」
「 そう・・・ 許せないわね! 」
馬上で二人の姫君は 城攻めの作戦を立て始めた。
がらがら ごろごろ〜〜〜〜
馬車が一台 二人の後ろからホコリを上げてやってきた。
「 あるてみすさまあ〜〜〜〜 ふらんそわーずさまあ〜〜〜 」
ぼわぼわした声が 一緒に飛んできた。
「 あ ・・・ カール殿下 ・・・ 」
「 あらあ 追い付いていらしたのね 馬車では細い路を通れないから・・・
公道で遠回りしていましたものね 」
「 よくご存知ですね アルテミス様 」
「 ふふふ ・・・ 戦乱が起きた時に備えて 国内の地理は
詳しく学んでおかないとなりません。
この国は 近い将来わたくしの祖国になるのですから 」
「 さすが〜〜 お義姉さま 」
あ あるてみすさまあ〜〜 ふらんそわあずさまあ〜〜〜
ごっとん。 馬車が姫君達の前でゆっくり留まり 扉が開いた。
「 ・・・ やっと・・・ おいつきました〜〜〜〜 」
ぽっちゃりした笑顔が 現れた。
「 ああら ・・・ カール殿下 」
「 カール殿下 」
二人の姫君は 馬上から会釈を送った。
「 ここが ― 国境の森 ですかあ〜
・・・ なんか暗い雲がでてきてますよ? 帰りましょうよう 」
カール殿下は 馬車の中でさえ及び腰である。
「 殿下。 あの城が魔女タマアラの本拠なのです。
これから あそこへ攻めてゆきます! 」
「 え ・・・ 攻めるって ― そんな乱暴な ・・・
ね ケンカはよくなですう〜 やめて帰りましょうよう 」
「 ケンカではありません。 邪な魔女の仕業をこのままには
しておけません 」
「 え〜〜〜 」
「 カール殿下。 この辺りをようくご覧になって 」
「 ほへ? 」
「 ここは国境の森で ― もともと沢山の木々が枝をつらね
周囲には野原が広がり 農民たちが畑を作っていたのですって。
でも タマアラが森を枯れ木の森にしてしまった ・・・
奥にあるあの城をのっとるために ね。
それまで森に棲んでいた動物や鳥たちは家を失ってしまい
光を失って 植物は枯れてしまったのです。 」
「 あ〜〜〜 ワルイやつですねえ 」
「 ですから。 あの城へゆき ワルイ魔女・タマアラを 」
「 ・・・ あのお〜〜 姫さま 」
「 なんですか 」
「 ワルイ魔女でも ・・・ やっつけるのは ・・・
ねえ ボクも一緒にいって説明します 」
「 説明?? 」
「 はい。 生き物には暗闇だけじゃだめ って。
光がないと 生きてゆけないんだよって 」
「 ・・・ タマアラが聞き入れますかしら 」
「 やってみないとわからないですよう〜
ボク 話合いは得意だから。 一緒に行きましょう 」
「 いいですけど ・・・ 馬車で? 」
「 ・・・ すいません〜〜 ボク 馬には・・・ 」
「 仕方ないわね ・・・ じゃあなるべく広い道を探しましょ 」
「 すいません ・・・ 」
カツカツカツ ガラガラガラ ・・・・
二人の姫君は 馬車を従え 黒い森の中を進んでいった。
ぐわああ〜〜〜〜〜〜〜
お〜〜〜ほっほっほ ・・・・
我が森に入ってくるのは だあれぇ〜〜〜〜
突然 晴れた空が暗くなり おどろおどろしい声が響いてきた。
「 ! 雲が??? 」
「 いいえ ちがうわ。 これは ・・・ タマアラが
目くらましの暗闇を引き寄せたのよ 」
「 これは 魔術による闇 なのですね 」
「 そう ・・・ タマアラは邪な闇を使えるから 」
「 それならば ― フランソワーズ様 そして カール殿下。
わたくしが 新しい光を呼びましょう 」
「 ・・・え?? 」
アルテミスは にっこりとほほ笑むと 被っていた狩猟用の帽子を
脱いだ。 そして 結い髪に手を当てると さ・・・っと光る長いピンを
抜き取った。
はらり ― 豊かな黒髪が その肩に その背に流れおちる。
「 − ここに。 おいでなさいませ 」
アルテミスは 天上に呼びかける。
「 アルテミス様・・・? あ あら?? 」
空に向けた白い頬は 黒髪に縁どられますます輝いてみえる。
「 どうぞ わたくしのもとに おいでください 」
サア −−−−−−−−
突然 爽やかな風が吹き始め 穏やかな、しかし 毅然とした光が一筋
天から 降りてきた。
「 あら 光・・・? ・・・ 陽の光とは ちがうみたい ・・・ 」
「 フランソワーズ様。 ご覧になって 」
「 はい? 」
フランソワ―ズはアルテミスの差し上げられた腕の先に視線を向けた。
太陽とはちょっとちがう 白い光が見えた。
? あ、 ああ ・・・ あれは
・・・ もしかして お月様 ・・・?
「 わたくしの名 ご存知ですよね 」
「 はい ・・・ あ! アルテミスって ・・・ 」
「 そうです。 アルテミスは 月の女神。
わたくしは その御名を頂いたのです。
そして もしもの時にはこうして ― 応援していただけます。 」
「 素晴らしいわ・・・
あ 弟君のアポロン様は 太陽の指輪をお持ちで
姉君のアルテミス様は 月の女神がお味方なんですね
西班牙王国は しっかりと護られているのですね 」
「 ええ ・・・ あ でもね 月の女神は
フランソワ―ズ様 あなたの御国のヒトになります 」
「 ああ そでです! ふふふ〜〜 仏蘭西王国は盤石です 」
「 そう祈っております。
さあ フランソワーズ様 邪な闇は吹き飛ばしました。
タマアラの邪な城へ ! 」
「 はい。
アルテミス様。 ここからは わたし一人で参らなければなりません。
どうぞ この みっしょん の成功を祈っていてください 」
「 フランソワーズ様! おひとりでは〜〜
「 大丈夫ですわ。 魔女とは一騎打ちをしなければ
捕らわれている方を助けられません 」
がらがら ガラ 〜〜
やかましい音とともに馬車が追いついてきた。
「 あら カール殿下・・・ よくこの細い路をこられたわねえ 」
「 ほんとう・・・あらまあ 馬車のあちこちが壊れているわ 」
「 − 無理矢理 樹々の間を通ってきたのね〜〜 」
ふらんそわあず さまあ〜〜〜〜
「 明るくなったから もう怖くないです〜〜
さあ あのお城に行って たまあら さん を説得しましょう 」
「 ・・・ 本気ですか? 」
「 本気です! ボク 闘いは好きくないんです。
ここからはボクの馬車が先にゆきますよぉ〜 」
「 あらあ ・・・ なんだかやたら張り切っているわね
どうしたのかしら。 さっきまで離れた後ろで震えていたヒトが 」
「 ん? なんかおっしゃいましたか ふらんそわあず様? 」
「 あ ・・・いえ べつになにも。 」
「 ? それじゃ ボクが先導しますから〜〜〜
どうぞ気を付けて着いてきてくださいね〜〜 」
は?
・・・ ま いっか。
せっかく張り切っているだから
せいぜい頑張ってくださいね〜
ブランシュ? ゆっくり行きましょうね
ああ そうだわ オヤツ あげましょ♪
フランソワーズは 愛馬の首をそっと撫でてから
身を馬身に添わせ 馬の鼻づらに砂糖の塊を届けた。
「 ブヒ ・・・ ♪ 」
愛馬は 大喜びでぱくり、とその甘いカタマリを舐めとった。
ガラガラガラ カッ カッ カツ ・・・
馬車と騎乗の姫君は 警戒しつつタマアラが巣食う城へ近づいてゆく。
「 ! あ カール殿下 城の前に誰か・・・人影が見えますわ 」
「 え〜〜〜 ちょっとまって。 遠眼鏡、もってきたんだ〜〜
・・ あ これこれ。 ど〜れ・・・ 」
馬車を止め カールは筒状のものを目に当てている。
「 見えます? あの人影は 」
「 う〜〜ん ・・・ なんかなあ〜〜〜 紫色の布を被ったヒトが
ぼ〜〜〜っと立ってる かなあ 」
「 え?? 紫の布 ・・・? 」
「 うん・・・ アタマから被ってるから 顔 みえないですねえ
もうちょっち近くまで行ってみましょう! 」
「 ・・・ ご用心あそばせ。 タマアラの城の見張りとか
兵士ではありませんか 」
「 う〜〜ん ・・・? そ〜いうカンジともちょっち違って
近づかないとなにもわかりませんよ 」
「 ・・・ いいけど ・・・ 」
フランソワーズ姫は 背負っている弓矢の在処を確認してから
ゆっくりと馬を進めていった。
「 あ こっち 見てる ! 」
「 え? 気をつけて・・・ 攻撃してくるかもしれません! 」
「 お〜〜〜〜〜い !!! そこのひとぉ〜〜〜〜 」
こともあろうか カール殿下は馬車の窓から半身を乗り出すと
大声で 前方に向かって叫び出したのだ!
「 !?? ちょ ちょっと ・・・ カール ・・・? 」
「 ねえ!! そう そこのひと! 君です、君!
その紫の布を被っている そこのひと!!!
ねえ 御者君? このまま行ってくれるかなあ〜〜 」
ガラガラガラ −−− 馬車はどんどん行ってしまう。
「 ちょ・・・と カール殿下〜〜〜 」
呆れつつも フランソワーズはブランシュを急がせた。
「 ここ 道が悪いわねえ ごめんね ブランシュ ・・・
歩きにくいけど あの馬車を追ってね 」
するり、と鬣を優しく撫でれば 愛馬は元気に脚を速めてくれた。
フランソワーズは 今は明るい光の下に見える城を目指す。
カツ カツ カツ ・・・・
「 ああ 城門が見えてきたわ! あら?
カールの馬車が止まってる・・・? え ・・・ あれって 」
馬上から目を凝らせつつ 近づいてゆく。
「 カール殿下! ・・・ え その方って 」
声が届くところまで来たが ― フランソワーズは愛馬を止めた。
「 あ フランソワーズ姫ぇ〜〜〜〜
ねえ ボクたち トモダチになったんですよ〜〜〜 」
カールが なんだかヒモが解けたみたいな笑顔満開なのだ。
そして − 彼の傍らには 紫の被布をアタマからかぶったヒトが
立っている。
「 ― わたしは フランソワーズ・ド・フランス。
この仏蘭西王国の第一王女です。 失礼ですがアナタは 」
「 ・・・ あたくし。 タマアラ です 」
するり。 その人物は紫の布を取った。
下には 蒼白い顔の女性が立っていた。 沈んだ表情だ。
足元までも届く髪は 薄い紫色でなにか儚い印象を与えている。
「 ! 魔女・タマアラ ・・・! 」
フランソワーズは反射的に弓矢を構え、馬を止めた。
「 あ ふらんそわあずさま〜〜〜 弓を収めてくださいよう
このヒト・・・ そんなに悪いヒトじゃないですよ 」
「 カール殿下! 誑かされてはだめです 」
「 そんなこと ないですよ〜〜 今 話してたんですけどね
この方、普通のご婦人ですよ 」
「 普通の ですって??
カール殿下。 彼女は 魔女です。 たくさんの悪さをして
周囲を困らせているのですよ?
ほら・・・ 先ほどもお話しましたけど
― この森を 枯れ木の森にしてしまったのです! 」
「 ・・・ そんな ・・・ 信じられません〜〜 」
「 では 聞きます。 魔女・タマアラ。
この城に幽閉している御方は 元気なのですか 」
「 え ・・・ ゆ 幽閉・・・? 」
「 そうです。 大地の色の髪と瞳を持った青年を 幽閉している、と。
これは欧州では どの国でも知られています 」
「 え そうなんですか??? タマアラさん?
ボクにその理由を教えてください 」
カール殿下は めちゃくちゃに積極的である。
・・・ へえ?
このヒト、 学問以外に関心をもつこと
あるんだ???
フランソワーズはカールの意外な面を見た気がした。
「 タマアラ。 その御方を解放しなさい!
そして この森も 太陽と月に解放するのです 」
「 タマアラさん! 本当にそんなこと・・・したのですか?
ねえ ボクに本当のこと、言ってください! 」
「 ・・・・ 」
魔女タマアラは 薄紫の被布を弄りまわしもじもじしていた が。
ぼそ・・・っと 口を開いた。
「 ・・・ だって ・・・ 」
「 ?? 」
だって・・・ ジョーは ちっともあたくしのこと、
構ってくれなんですもの 〜〜〜
「 は あああ??? 」
フランソワ―ズは 手にしていた弓を思わず落としそうになった。
「 ?? ジョーって 誰です? 」
「 カール殿下。 この城に幽閉されている青年のことです。
タマアラは その青年をこの城に閉じ込めているのです。 」
「 え ・・・ 彼はどこのヒトなんです? 」
「 わかりません。 伝説の勇者 なのですが ・・・
彼が動けないと ― 黒い魔物を退治することができません。 」
「 そうなんですか〜〜〜 ボク ちっともしらなかった・・・ 」
「 ・・・ 欧州の王家では皆 知っていますけど ・・・ 」
「 ボク 島の研究所で研究に没頭してて 世間のウワサって疎くて ・・・
あ でもね タマアラ。 なんでそんなことを?
その・・・ < ジョー > というヒトと仲良くできないんですか? 」
うわあ ・・・・
そういうこと、直接 聞く???
カール殿下って ―
なんていうか ・・・・
超天然 だわ 〜〜
わたし的には
・・・ やっぱ ご遠慮だなあ〜
フランソワーズは思わず 後退りしていた。
ちょっとこれは ―
わたし 傍観者に徹しまあす・・
そんな彼女の思いなど知るはずもなく。
カール殿下は 魔女・タマアラに突撃?である。
「 あの なんか意地悪、されたとか ですか 」
「 ― いじわる ・・・ってんなですの? 」
「 あ・・・ しりませんか〜
えっと その方とは え〜〜と 共通の趣味 とかないんですか 」
「 きょうつうのしゅみ ・・・ってなんですの? 」
「 ・・・ 高貴な方は下世話な感情とか しらないのかあ〜
あの ですね。 その、ジョーさんは 貴女になにか・・・
そのう失礼なコトを言ったりしたのですか? 」
「 ・・・ あのう 〜〜 」
「 はい? 」
「 あのう ・・・ 彼ってば 」
「 はい? 」
「 彼 ・・・ ジョーってば・・・
あたくしのこと 放っておくんですもの〜〜〜〜 」
「 ほうっておく?? 」
「 そうよ!!!
ねえ こんな美しい魔女のあたくしに 全然関心をしめさないの! 」
「 へ?? 」
「 イチバンのお気に入りのドレスで誘っても
刺激的なドレスで夜の散歩に誘っても ―
あ ぼく いいです って 」
「 いいです・・・って ?? 」
「 あのね! あたくしを構ってくれないのよ。
話をしても へえ ふうん そうなんだ〜 で 終わり。
あたくし ・・・ そのう〜〜 彼とべたべたしたいんですのに 」
タマアラは 次第に涙声になってきた。
「 え あの・・・ な 泣かないでくださいよう〜〜
タマアラさん ステキですよ〜〜〜 タマアラさんは魔女って
本当ですか? 」
「 ・・・え ・・・ ? ええ・・・ まあ 一応魔女ですわ 」
「 うわああ〜〜 すっげ〜〜〜
ねえねえ ボクにいろいろ・・・・魔女の魔法 見せてくださいよう〜〜
ボク 科学的に解明できないコトって ものすご〜〜〜〜く興味があるんですぅ」
「 ま。 ・・・ あら 貴方。 よおく見ると ・・・
なかなかイケメンさんね♪♪ ふくよかな方って好きよ♪ 」
「 え え〜〜〜 うわ うわ〜〜〜 嬉しいなあ〜〜〜
ねえねえ お話しましょうよう〜 」
「 ええ いいですわ! 城へどうぞ 」
「 やったあ〜〜〜 ねえ フランソワーズ様〜〜〜
一緒にお城にお邪魔しましょう。
あ お探しの方も いらっしゃるようですよ 」
カールは やっと思い出した、という風に
付近をきょろきょろしてから フランソワーズに声をかけた。
「 あ あら。 カール殿下。 わたしのこと、思い出していただけました? 」
「 はい お待たせしました。 さあ 行きましょう。
ああ・・・ そんなオッカナイ物はしまってくださいね 」
「 ・・・ わかったわ。 」
フランソワーズは 静かに弓を収めた。
「 魔女・タマアラ。 わたし、囚われの方にお目に掛かりたいのですが 」
「 姫君。 ええ どうぞ〜〜
あたくし、 このカール殿下とお話がありますから〜〜〜〜♪
え? ああ その方は城の奥の間で眠っていらっしゃるわ 」
タマアラは カール殿下に釘付けで もうなにを言っても オッケー という
感じだ。
「 ね 眠って?? なにか 魔法をかけたのね! 」
「 え〜〜〜 そうね ちっともあたくしを構ってくれないから
眠り草を嗅いでいただいたの。
あ でもね 大丈夫。 乙女のキスで目覚めるから。
姫君〜〜〜 頑張ってくださいね〜〜
」
「 ・・・え ・・・ 魔女は 抵抗しないの?? 」
「 あらあ あたくし、カール殿下とお話していたいんですの。
あとは 姫君にお任せしますわ。
ねえ カール殿下〜〜 あちらのサンルームに参りません?
甘いお菓子とお茶で 御もてなししますわ〜〜 」
「 わあ 嬉しいなあ〜〜〜 ボク スウィーツ 大好き♪
あ ふらんそわあず様〜〜 よかったら あとから ジョーさん と
一緒に 混じってくださいねえ 」
「 うふふ♪ さあ ご一緒に♪ 」
「 えへ♪ 」
魔女・タマアラは カール殿下と腕を組みくっつき合って
仲良く ・・・ 城の中に入って行ってしまった。
!???
ちょっとぉ〜〜〜〜〜〜
な なんなのよお〜〜〜〜
フランソワーズは しばし呆然とこのバ○ップルを見送っていた が。
「 そ そうよ!! ジョー様を助けなくちゃ!!
奥の間 って言ってたわね! 」
ワンワン クウ〜〜〜ン
・・・ いつのまにか 彼女の足元に茶色毛の犬が座っていた。
「 あ あら?? あなた どこからきたの? わんさん・・・ 」
クウ〜〜〜ン キュウ〜〜〜
ワンコは 彼女の手にアタマを擦りつけると 先に立って歩きはじめた。
「 え?? ついて来いって・・・?
え ええ 今 行くわ。 えっと ・・・・ブランシュ?
ねえ ここで待っていてくれる?
手綱は結ばずにおくから なにかあったら逃げてね 」
ブヒヒヒ 〜〜〜〜〜 カツカツ!
とんでもない! と姫君の愛馬は怒って蹄で石畳を蹴る。
「 ああら 怒らないで・・・ わたしは大丈夫だから。
安心して待っていて。 ほら 中庭の草はなかなか美味しそうよ 」
ワン! 茶色犬が 降り返って姫君を呼ぶ。
「 はい 今ゆくわ あ 待ってちょうだい 〜〜 」
姫君は 犬を追って城の奥へと駆けこんでいった。
・・・ ああ きみ でしたか。
ぱっと目を開いた青年は ぱあ〜〜〜〜っと笑顔になった。
柔和な瞳は まさしく温かな大地の色で
その豊かな髪は 春風がそよそよと流れてゆく豊かな土壌色だった。
「 え ・・・ あ あのう〜〜〜〜 」
知らない男性にキスをした気恥ずかしさに 姫君は頬を染め上げている。
「 わ わたしのこと ・・・・ 御存知でしたの? 」
「 はい。 ぼくはずっと眠りの精の虜になっていましたが
夢の中で 拝見していました ― フランソワーズ姫。
そして 貴女がぼくを起こしてくださる方だと わかっていました。 」
「 え ・・・ え〜〜〜 そ そうなんですか・・・
わたし アナタと キス ・・・ きゃ〜〜〜 」
乙女は頬を染めて そっぽを向いてしまった。
「 ありがとう、最高に優しい目覚まし でした ・・・
フランソワーズ姫。 ぼくは ジョー・シマムラ といいます。 」
「 ジョーさま ・・・
フランソワーズ・ ド ・ フランス です。 」
フランソワーズ姫は 狩猟服だけれど姫君として正式の挨拶をした。
「 ああ お日様の光みたいなキレイな髪ですね ・・・
空の色の瞳だ ・・・ なんと勇敢で素敵な方なんだ! 」
「 ま まあ ・・・ 」
ワンワンワン〜〜〜 クウ〜〜〜ン
ずっと姫君を先導し この部屋では大人しく控えていたワン君が
鳴きながら ジョーにじゃれついた。
「 あ クビクロ! やあ 元気でよかった ・・・ 」
くう〜〜〜〜ん・・・♪ ワン君はもうでれでれに甘えている。
「 まあ ・・・ ジョー様の犬さんですの? 」
「 そうです。 ずっと一緒で・・・ ぼくが眠ってしまってからも
ここを護ってくれています。 なあ そうだろ、クビクロ? 」
「 わん! 」
「 クビクロ・・・ そういうお名前なのね?
クビクロ〜〜 わたしとも仲良くしてね 」
「 うわん♪ 」
クビクロは 差し出された姫君の手を ぺろぺろ・・・舐めた。
「 クビクロ? これからは フランソワーズ姫も護っておくれ 」
「 わん♪ くう〜〜ん・・・ 」
「 ああ 温かいのね クビクロ ・・・ 」
姫君は クビクロの茶色毛をわさわさ〜〜 撫でた。
わ わん わんわん♪
彼は千切れんばかりに尾を振っている。
これから クビクロは二人の冒険のお供をすることとなる。
「 さあ ジョー様。 ここを出ましょう 」
「 そうですね。 しかし あの魔女が 」
「 ああ それは ですね? ちょっと意外な展開に
なってきましたの 」
「 え??? 貴女が そのう・・・魔女をやっつけた? 」
「 いいえ。 えっと・・・ 確か サンルームって言ってましたから。
行ってみましょう 」
「 ― ??? ああ ぼくが先に行きましょう 」
ジョーと共に フランソワーズ姫は豪華な城の中を進んでいった。
あら 明るい部屋 ・・・・
それに温かいわね
あらあら ・・・ ステキなお部屋だわ
そこは ガラス張りの広い部屋で陽光に満ちていた。
薔薇やらアネモネやら向日葵やら ・・・ 所せましと花が満ちあふれ
その中で 一組にバ○ップルが それはそれは仲良く寄り添っていた。
「 ・・・ あれが 魔女タマアラ? あの男性は?」
「 ええ 仲良しでしょう? カール・エッカーマン殿下です 」
「 え。 そのう・・・ その方と? 」
「 はい。 お互いにお気に召したようですよ?
殿下〜〜〜 お邪魔いたしますね〜〜〜 」
フランソワーズは 笑いつつ声をかけた。
― そして。
カール殿下は 二人の前で魔女タマアラに求婚した。
タマアラは 頬を染めてしっかりと頷いた。
「 おめでとう! お二方 」
「 あの・・・フランソワーズ姫様 ・・・ そのう・・・ ごめん 」
「 あら いいえぇ 全然〜〜 よかったですね
ステキな方と巡りあわれて 」
「 はい(^^♪ 」
彼はもう シアワセの笑み全開である。
フランソワーズは 魔女タマアラに向き合った。
「 ほら この方は しっかり構ってくださるし、アナタにぴったりの人物よ。
魔女タマアラ。 この森の中でカール殿下と静かに生きてゆくと誓うなら
この城を封印して ― わたし達は去ります。 」
「 ― 誓います。 ・・・ まあ なんて素敵なおぼっちゃま(^^♪
あたくしのこと、とても大切にしてくださいますし〜〜〜
さあ〜〜〜 あたくしとご一緒に黒い森で暮らしましょうね 」
「 ねえタマアラさん。 いっそ ボクの、ウチの島に来ませんか。
お日様いっぱいの明るい島です。 そこで仲良く暮らしましょう 」
「 え ・・・ い いいの? 」
「 勿論! 島の中でいろんな魔法を見せてくれる? 」
「 ええ ええ ! 」
「 君の その蒼白い頬も健康的な肌色になりますよ 」
「 そうだとうれしいですわ〜 」
「 じゃ 決まり! ボクの父上も喜んでくれますよ 」
「 お国のためによい妃になれるよう 努力いたしますわ 」
「 ありがとう〜〜〜 」
― このカップルの行く末が決まったようだ。
「 では この城は ― 封印しましょうか 」
「 フランソワーズ姫。 すこし待ってください。 」
「 ジョー様?? 」
「 この城の塔に まだ幽閉されているヒトが ・・・ 」
「 えええ ?? 」
「 こちらです。 来てくださいますか 」
「 はい もちろん。 」
「 では ― クビクロ おいで。 」
わわわ〜〜〜ん〜〜〜! 二人と一匹は東の塔へと駆けて行った。
「 どなたが その塔に幽閉されているのですか 」
「 森の妖精・ヘレン。 この地域では よい魔女 と呼ばれています。 」
「 良い魔女?? まあ 魔女にもいろいろあるのねえ 」
「 妖精・ヘレンは この地にもうず・・・・っといる妖精です。
この地、 国境 を護ってきたのです。 」
「 まあ そうなんですか で ・・・ 今は塔の中 ですか?
魔女・タマアラが邪魔にしたのね?
ねえ このまま踏み込んで その方をお助けしましょう! 」
「 ありがとう 姫君。 こちらです 」
「 ・・・ わあ ・・・すごい塔ですのね 」
「 はい。 もうタマアラはいませんから ― 簡単です。 」
ジョーは 蔦やら忍冬がはびこる塔を上ると 古い扉を叩いた。
「 − 魔女・タマアラは去りました。
ここを開けます どうぞ出ていらしてください。
― ぼくの おかあさん ! 」
ジョー ・・・ 無事だったのね
優しい声が聞こえ 部屋の真ん中には ふわふわした白い影が あった。
「 !??? 」
側にいたフランソワーズは それこそ仰け反るほどに驚いた。
「 そ それって ・・・ ジョーさん。 貴方は ・・・
妖精のムスコ なのですか?? 」
「 フランソワーズ姫。 彼女はこの地を司る古えからの魔女なのです。
ぼくを育ててくれました 」
「 え ・・・ そ そうなの・・・? 」
「 はい。 妖精・ヘレン。 さあ もう自由です。
どうぞ 再びこの地の森を護り統べてください。 」
ありがとう ありがとう ・・・
ジョー ・・・
いつでも 会いにきてね
いつも いつも 愛していますよ
いつも いつも 見守っています
ひゅるん〜〜〜〜
一陣の風と共に白い影は 塔の窓から飛び去っていった。
「 ・・・ お かあさ ん ・・・ 」
ジョーは 微笑みつつ淋しそうに見送っていた。
「 ジョー様 ・・・ 」
温かい手が 彼の手にそっと重ねられた。
「 ― ステキなお母様ですね。 」
「 フランソワーズ姫 ・・・ はい ・・・ はい・・・
ああ 母が いえ 妖精・ヘレンが自由になれば
もう 安心です・・・ 」
「 ええ ええ ・・・ 」
二人はそっと手を繋いで 東の塔を後にした。
タマアラが去った後 枯れ木のおどろおどろしい森は 緑あふれる森となり
周辺は肥沃な土壌が広がった。
妖精・ヘレンは しっかりとこの地を護っているのだ。
「 ジョー様 さあ 参りましょう。 」
「 ぼくは ― 行くところがありません。 」
「 お願いがございますの。
ひとまず わたしの父に会ってくださいませんか 」
「 ・・・ はい
」
ジョーは 塔の厩にいた栗毛の馬に乗り
フランソワーズのブランシュと 轡を並べ森を抜けて行った。
「 フランソワーズ様ぁ〜〜〜〜〜 」
森の外では アルテミス姫が待機していた。
そして彼女の栗毛の馬の側には ― 見覚えのある旗をもった従僕がいた。
「 あ ら・・・ あれは ― 我が仏蘭西王家の旗・・・? 」
「 お〜〜い フラン〜〜〜 迎えにきたぞう〜〜 」
! ジャン兄さま〜〜〜〜〜〜 !!
まあ 馬でいらしたの???
ジャン王太子自らが 騎馬で婚約者の脇に佇んでいたのだ。
Last updated : 10.26.2021.
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********** 途中ですが
やれやれ やっと ジョー君 登場〜〜〜〜 (^_-)-☆
はい クビクロもちゃ〜〜〜んと 仲間入り です♪
いやはや・・・ どうなることやら・・・ (*_*;