『 伝説 ― (2) ― 』
これは 遠いとおい昔の そして 遠いとおい外国 (とつくに)
でのお話です。
いつの頃のことか・・・って?
どこの国のことか・・・って?
さあ ・・・・
― 貴方のお好みのままに・・・
******** 引き続き 仏蘭西王国にて
「 突然に参りまして 大変失礼いたしました。 」
仏蘭西国王と 王太子、第一王女に向かい アルテミス姫は腰を折り
優雅に挨拶をした。
豊かな黒髪をきっちりと結いあげ 碧の輝石の髪飾りが大変よく似合っている。
「 おお アルテミス姫。 ようおいでになった ・・・
御母上のシモーヌ女王陛下や 御父上のドルフィン殿下には御変わりないですかな 」
ギルモア王は 相好を崩しアルテミス姫を迎えた。
アルテミス姫 ― とは 西班牙王国の第一王女にして
生まれながらに 仏蘭西王国王太子の婚約者でも ある。
足元まで届くといわれている緑の黒髪、そして 深い緑の瞳は
常に 前を見つめている。
欧州一の美貌の持ち主との定評もある。
現在 西班牙王国を統べるのは シモーヌ女王、夫君のドルフィン殿下に
支えられしっかりと広い国土を治めている。
アルテミス姫の弟王子が王太子殿下だ。
「 はい 国王陛下。 ありがとうございます。
父母は共に健勝で 陛下にくれぐれも宜しくとのことですわ。 」
「 それはよかった。 姫君もお元気そうじゃな 」
「 はい! そして陛下。 わたくし ・・・ 押し掛け女房 ですの。
許婚のジャン様がいつまでたっても わたくしを御召し下さいませんので 」
「 姫君 ・・・ それは 自分が悪いのです。 」
王太子は あわてて許婚の姫の側に寄り、手を取りキスをした。
「 遠路 よくいらっしゃいました。
私の事情で ご連絡もできずに申し訳ありません。 」
「 ええ ええ お忙しいのはようくわかっておりますの。
黒い魔物の件 ・・・ 母女王から聞きました。
ですから わたくし ― 騎馬で馳せ参じましたわ。 」
アルテミス姫は 濃い緑の瞳をきらきらさせている。
「 わあ〜〜〜〜 すてき! アルテミス様〜〜〜 」
「 フランソワーズ。 はしたないぞ 」
手を打ち 飛び跳ねる妹姫をジャンは軽く窘めた。
「 ジャン殿下。 わたくしは殿下のお役にはたてませんか 」
「 アルテミス姫。 とんでもない。
貴女をいつまでもお待たせするのは本当に申し訳なく ・・・
このご縁は ― 」
「 殿下。 わたくしが。 わたくしで宜しければ
殿下をお支えいたします! どうぞ召使いとでも思ってお側に
置いてください! 」
「 姫。 大西班牙王国の姫君がなんという ・・・ 」
「 わたくし。 心からジャン殿下をお慕いしておりますの!
ですから ・・・ お側にいられるだけでも幸せですわ 」
アルテミス姫の翠の瞳は ますます強く そして 温かく煌めく。
「 アルテミス姫君 ・・・ 」
「 アルテミス様! いえ お義姉さま。
ジャン兄様を よろしくお願いいたします。
― お父様。 わたしは 安心して黒い魔物との闘いに出発できます! 」
「 フランソワーズ ・・・・ 」
「 ファンション・・・ 」
元気な女性陣に気押されて 父王も兄も当惑気味だ。
「 まあ フランソワーズさま。 討伐に行かれるの? 」
「 はい。 まず国境の黒の森で 最初の冒険 ―
困った魔女・タマアラをやっつけに行きます。
森を凍結して周囲を困らせている とか 」
「 魔女タマアラ? あらあ ・・・ あの魔女、まだワルサを
しているの? 小さい頃 悪い魔女は退治されました って
聞いていましたけど 」
「 そ〜〜なんですよ〜〜〜 コソコソ悪事を働いているらしくて。
今度こそ許しません、 ええ すぐに成敗してまいります。 」
「 あの森には どなたか 幽閉されているウワサもありますね 」
「 ええ。 その方の解放も含め ― まずは冒険の小手調べです。 」
「 素敵! フランソワーズ様 ステキ〜〜〜 」
「 うふふ ありがとうございます、アルテミス様 」
どんどん ・・・ 扉がぼんやりノックされて
なんだか ぼやぼやした声が聞こえた。
「 ・・・ ふらんそわあず様あ〜〜〜 」
「 ?? あら どなたかしら。 侍従はどうしているの?
わたしが見てきますね 」
フランソワーズ姫は さっと立ち上がった。
「 姫 気をつけなさい。 」
「 ふふふ お父様ったら・・・ お城の中じゃありませんか?
― どなたですか ? 」
姫君が さ・・・っとドアを開けると ―
贅沢な身なりのワカモノが おずおずと立っていた。
「 あ あのう〜〜〜 」
「 ああ この方・・・ 途中で馬車が立往生していて
困っていらしたので ご一緒にお連れしましたの。
しばらく休みたい とおっしゃるので馬車の中に・・・
もうお元気になられました? 」
アルテミス姫が 優しく取り成した。
「 はい〜〜 すたみな・どりんく も飲みましたので。 」
「 あなたは あら カール様 ・・・ 」
フランソワーズ姫は ちょっと鼻白み拍子抜けをした表情を浮かべた。
「 ふらんそわーず姫ぇ〜〜〜 ごきげんよう〜〜 」
豪華な衣装が少しきっつきつな、丸まっちい胴体の青年は
にこにこ・・・ 彼女の側に飛んできた。
・・・ いたって無防備な、よく言えば邪気のない、はっきり言えば
ぼわぼわした笑みをいっぱいに浮かべている。
「 ・・・ うわ・・・ 」
姫は反射的に 後退りしてしまった。
ことん。 王が立ち上がって彼に手を差し伸べる。
「 おお カール殿下。 お越しになっているとはついぞ
知らんで 失礼しましたなあ。 お父上、エッカーマン王は
お元気かな 」
「 陛下〜〜〜〜〜 」
ギルモア王の言葉に カール殿下は大喜び、深く礼を返した。
「 ありがとうございます。 はい 父は元気で・・・
日々研究に励んでいます 」
「 それは結構。 地中海のあの島はいまに地上の楽園になるのかな 」
「 はい! 父の夢であります〜〜〜 」
「 陛下。 地上の楽園 って 何ですの? 」
アルテミス姫が 不思議そうな顔をしている。
「 姫。 それは ですなあ ― 」
ギルモア王は手短に説明を始めた。
・・・ それによると・・・
カール・エッカーマン氏の父上は 地中海の独立した島を統べるエッカーマン王。
その島は大昔からエッカーマン一族のもので 周囲の諸国からは
完全に独立し 揉め事を起こすことはなかった。
なぜか というとエッカーマン王は一種の 発明狂。
四六時中 研究室に籠りあれこれ研究していれば ご機嫌ちゃん。
領土拡張だの 他国征服だの にはとんと興味を示さない。
そして この王がのめり込み熱中しているのが
一つの島の中で全てを賄える世界を作る ということなのだ。
この試みはかなり成功しているので 島民たちにも好評である。
王は 外の世界 には全く興味がないので 他国と揉め事を
起こすこともないのである。
「 まあ そうなんですか。 エッカーマン陛下は御満足でしょうね 」
「 そうねえ ・・・ でも ね ・・・ これはナイショですけど・・・ 」
「 え? ・・・・ まあ〜〜〜 」
フランソワーズはアルテミスに こそ・・っと 耳打ちをした。
あの ね。
カール殿下ってね。
頭脳明晰だけど 運動能力でからっきし で
馬にも乗れないのよ!
まああああああ・・・ 本当??
そういう殿方も いらっしゃるのねえ・・・
ちょっと信じられないけど
ね?
ですから ・・・ わたしはご遠慮 だわ〜
ふふふ 私もよ、フランソワーズさま
「 ふらんそわーず姫ぇ〜〜〜 ききましたよ
その旅に ぼ ボクもご一緒しますぅ〜〜〜 」
「 カール殿下。 でも 騎馬で行きますのよ 」
「 ・・・ い いきますゥ〜〜 ・・・ 馬車で ・・・ 」
「 馬にお乗りになれませんの? 」
「 ・・・ 生憎 ・・・ ボクには馬車がありますから〜〜
召使いも馬も ボクのものですから 」
「 カール殿下。 わたしは物見遊山に行くのではありません。
黒い魔物を討伐するための長い長い旅にでるのです 」
「 ― 途中まで なら ・・・ 」
「 どうぞ ご自由になさいませ
さあ お父様。 わたしは出発の準備をいたします。
アルテミス様〜〜〜 お兄様をよろしくお願いします。
黒い魔物は このフランソワーズにお任せください。 」
では・・・ と 姫君は皆に軽く会釈をした。
「 侍従さん? こちらのお客様には 客用寝室をご案内してね 」
もじもじしているカールに やたら丁寧に会釈をすると
彼女は とっとと 国王の居室から退出していった。
「 ・・・ 本当に あの姫は ・・・ 」
ギルモア国王は かなりフクザツな 深い深いため息を吐いた。
しかし。 すぐに国王は今度は嬉しい吐息に塗れることとなる。
― 数時間後
コツコツ ・・・ 王の居室が静かにノックされた。
「 ? 姫かい? 構わぬよ 入っておいで 」
父は娘のノックを ちゃんと聞き分ける。
「 はい ありがとうございます。 ― 国王陛下 」
こつっ ・・・ サワサワサワ
フランソワーズ姫が 珍しく きちんとドレス姿で裳裾を引いて
入ってきた。
「 おお ・・・ そうじゃよ その姿は本当に美しい・・・ 」
老国王は 相好を崩している。
「 お父様。 お願いがあります。
そのために 正装をしてまいりました。
どうぞわたしのお願いを聞き届けてください。 」
「 願いとな。 そなたが・・・ はて なにかな 」
「 はい。 わたしが黒い魔物退治に出発する前に
お兄様の― いえ 仏蘭西王国の王太子殿下の ご婚礼を。
アルテミス姫様とのご婚礼をお願いします。 」
「 姫? 」
「 だって ・・・ アルテミス様がお気の毒ですわ
お父様は アルテミス様は兄上のお相手に不足だと思われているのですか 」
「 フランソワーズ なにを言うか。
アルテミス姫は西班牙王国の第一王女・・・
わが仏蘭西王国の王太子の妃として 最適な方だぞ。 」
「 では ― その御方がわざわざ 我が国をご訪問くださっているのです。
どうぞ 兄上とのご婚礼を ! 」
「 フランソワーズ。
ワシはもう疾うに二人の婚姻を認めて いや 奨励しておる。
ただ ― ジャンが ・・・ 」
「 お兄様が?? あんな素敵な姫君のどこがお気に召さないのかしら! 」
ちょっと気取っていた < フランソワーズ姫 > は
たちまちいつもの やんちゃなフランソワーズ に戻っていた。
「 姫よ。 兄の気持ちを思いやっておくれ。
自身の怪我で 許婚の姫をずっと待たせるのは心苦しい と
思っておるのじゃよ ・・・
脚の不自由なものの伴侶にはなりたくない と思われているだろう と 」
「 え ・・・ アルテミス様は そんな御方じゃありませんわ! 」
「 わかっておる わかっておるよ。
しかしな ジャンも辛いのだよ ・・・
」
「 お父様! それでは わたしがお兄様に談判してまいります。
わたしのお義姉様になる方は アルテミス様だけです。 」
姫君は さっと立ち上がると ドレスの裾をたくし上げ ・・・
「 少々急ぎますので 失礼〜〜〜 」
すんなりした脚を出し カカトの高い靴を脱ぎ棄て ―
兄の居室へと 駆けていってしまった。
「 ! 姫! ・・・ う〜〜〜〜〜〜
あのジャジャ馬め〜〜〜〜〜 」
老王はアタマを押さえ呻いた が ― その目とそしてそっと隠した口元は
にんまり と笑っていた。
ふふふ ・・・ さすがワシの娘じゃ!
さあ ジャン。
しっかりと腹を括るのだな。
ははは ワシはよい息子と娘を持ったものよ
― ところが。
事態は 思わぬ方向に転がり始めてしまった。
「 フランソワーズ様? 」
「 アルテミス様のお声 ・・・ どちらにいらっしゃいます? 」
兄に談判を、と勇んで宮殿の廊下を駆けていると
名を呼ばれ フランソワーズは足を止めた。
来賓室の扉が 少し開いている。
「 ・・・ なにか御用でしょうか 」
「 あの ね。 わたくしから提案がありますの。 」
「 ?? 」
「 国境の黒の森へ 悪い魔女を退治にいらっしゃるのでしょ? 」
「 はい。 そして 捕らわれている方を解放 ・・・ 」
「 ええ ええ ですから。 わたくしもご一緒させていただけません? 」
「 へ??? 」
「 ねえ 一緒にタマアラをやっつけに行きましょうよう〜〜
実はねえ わたくし 新しい弓を試してみたくて仕方がないの! 」
「 ステキ! ・・・ あ。 いけません、西班牙王国の王女様で
我が仏蘭西王国王太子の許婚の方に そんなこと ・・・ 」
「 ああらあ 貴女は どなたでしたっけ? フランソワーズ様?
仏蘭西王国の第一王女さま? 」
「 ・・・ あ それは ・・・
」
「 ね〜〜 二人なら 手早くあの困った魔女を捕えられますわ 」
「 でも ・・・ あ〜〜 兄はなんと・・・? 」
「 はい。 行って来い とのことです。
・・・ あの妹を頼みます って。 ああ 本当に素敵な方〜〜
ねえ わたくしって 物凄く幸運な娘だとお思いにならない?
あんな素敵な方が 許婚なんですもの♪ 」
「 あらあら ・・・ もうお惚気ですの?
でも 嬉しいわ! アルテミス様とご一緒 って! 」
「 わたくしも よ。 すぐに準備します、ご出発、少しだけ
お待ちになって ・・・ 」
「 勿論〜〜〜♪ あ ご愛馬もゆっくり休ませてあげてくださいね 」
「 ありがとう〜 さっき厩で ニンジンをあげてきたわ 」
「 ね 狩猟服、わたしのをお使いくださいな。
どうぞ わたしの部屋にいらして〜〜 アルテミス様 」
「 きゃ すてき〜〜 」
姫君二人は もう大盛り上がり〜〜〜
「 お父様。 いえ 国王陛下。
わたし、フランソワーズは アルテミス姫様をご一緒に
国境の黒の森へ 魔女タマアラを退治に行ってまいります 」
全く王子の服装をし、フランソワーズ姫はまっすぐに父王を見つめている。
隣には 狩猟服姿のアルテミス姫も翠の瞳を輝かせ、笑顔だ。
「 国王陛下。 わたくし達にお任せくださいませ 」
「 − まったく ・・・ そなた達は ! 」
ギルモア王は 苦虫を噛み潰したみたいな顔をしている が。
ほ ほう〜〜〜
これは たいそう勇敢な姫君だな。
うむ うむ ジャンの嫁として
そして 我が仏蘭西王国の王太子妃として
うってつけだ。
フランソワーズとも仲がよいし・・・
うむ よい嫁が来る、ということだ
内心 国王として そして 父親として にんまり していた。
「 父上。 ここはフランソワーズとアルテミス姫に任せましょう。
冒険といっても 我が国内ですし ・・・ 」
ジャンが 控えめに口をだした。
「 ジャン。 ・・・ しかし だな 」
「 父上。 妹は ただのお転婆ではありません。
弓や剣にも長け 馬術は一流です。
それに アルテミス姫は 欧州一 との評判のボウ・ガンの腕前 ・・・
それほどのご心配は 」
「 わかっておるよ あの二人が単なる跳ねっ返りではない とな。
しかしなあ〜 妙齢の姫が 二人も ・・・ 」
「 はい。 ですから国中の評判になりましょう。
民たちも喜んで見守ってくれるのではありませんか 」
「 ・・・ そうじゃなあ ・・・
ああ 淑やかで大人しいことが女性の最大の美徳 と
思っていたワシが 古い、ということか ・・・・
そなた達の母が存命であったらなんというか・・・ 」
「 そうですか? 亡き母上は弓矢も乗馬も巧み
お若い頃は よく揃って遠駆けにいらした と伺っていますが? 」
「 − ジャン。 そなた達は負けた。
わかった。 王室の厩舎一の駿馬を 用意するよう申し付けよ 」
「 御意。 私の分も 妹姫に活躍してもらいましょう 」
爽やかな笑顔で会釈をすると ジャンは軽い足取りで退出していった。
ああ あれの脚も かなり治ってきた、ということか。
・・・ ジュリア。
心配はいらぬよ。
ワシとそなたの子供たちは 共に勇敢だ
老王は そっと目頭を押さえるのだった。
ザワザワザワ ― 多くの木立が揺れている。
遠目にも暗くひんやりした雰囲気が不気味な森だ。
その手前で 駿馬が二頭、蹄を停めている。
「 ・・・ 日陰の森 ですのね 」
黒髪の姫君が じっと前方を見つめている。
「 はい。 もともとは国境に広がる豊かな森だったのですって・・・
そこにいつの間にやら 魔女タマアラが棲みついて 」
金髪の方も 表情を引き締める。
「 こんなに暗い森にしてしまった のね・・・
あ よく見れば ― これは枯れ木の森 ! 」
「 ほら あの雲が 」
金髪娘は 空に広がる黒っぽい雲を指した。
「 ずっと・・・空を覆っていて・・・
陽の光をさえぎっているから 樹々は可哀想ですよね 」
「 この森の奥に ― 幽閉されている方がいらっしゃるとか・・・
城があるのかしら ね 」
「 そうですって。 茨が全体を覆っているって 」
「 そう・・・? では この暗い枯れた世界を
明るく活き活きとした世界にすれば ― 魔女はチカラを失うわね 」
「 そうですね。 ― でもどうやって?
枯れた森でも 鳥たちや動物たちが暮らしていますもの。
乱暴なことはできません。 」
「 そうね。 あ でも明るくなれば ? 」
「 ええ。 枯れた枝を払いますか 」
「 それもいいけれど この広さでは ・・・
そうですわ。 コレを使いましょう 」
アルテミス姫は なにやら首に掛けていた金の鎖を手繰り
狩猟服の下から引っぱりだした。
キラリ。 鎖の先に指輪が揺れている。
「 ― 指輪 ですの? 美しい宝石ですね 」
「 ええ。 これ ・・・ 西班牙王国に代々つたわる指輪です。
国王や王太子が持つものですが 弟のアポロンが貸してくれましたの。 」
「 まあ アポロン様が? わああ〜〜 懐かしい〜〜
お元気ですか 」
幼い頃 フランソワーズ姫は兄王子と共に西班牙王国を訪問し
アルテミス姫と アポロン弟王子 と楽しく遊んだ記憶がある。
「 はい もうとても・・・
今回ね 彼がとてもわたくしと後押ししてくれましたの。
姉上、 許婚殿の側に行くべきですよ ってね 」
「 まあ ステキ! ・・・ わたし 小さい頃にご一緒した記憶しか
なくて・・・ 燃えるみたいな赤毛が印象的でした 」
「 あらあ 喜ぶわ〜〜〜 アイツ。 あ 失礼・・・
さあ この指輪を使うのは ― 今ね ! 」
アルテミス姫は 指輪をはめた手を高く宙に翳した。
陽の神よ・・・・!
この輝ける石に 集まりたまえ !
彼女のよく通る声が消えないうちに ― 光が四方から指輪に集まってきて
そのまま 地上にたっぷりと降り注いでゆく。
ぱああ〜〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜〜〜〜
小暗い森は 太陽の指輪 からの光をうけみるみるうちにその姿を変え始めた。
光に負けて 萎み散ってゆくものもある。 しかし ・・・
ほとんどの植物は 萎れ垂れていた葉を上げ 項垂れていた新芽は頭を擡げ
― 森全体が 大きく呼吸をし始めた。
「 ま あ・・・ すごい !! その指輪・・・ 」
「 ええ この輝石には太陽のチカラが集まるのです 」
「 あ ほら ・・・ 森が ・・・ あの枯れていた森が
変わってきたわ 」
「 そうね 陽の光で息を吹き返したようね 」
「 ね! 黒かった森が どんどん 緑になってきたわ
あら? ねえ 聞こえます? 」
ピ〜〜〜〜〜〜〜 ピチュピチュ クルルル〜〜〜
二人が馬上で耳を澄ませていると ― どこからかたくさんの鳥たちが集まってきた。
「 鳥たちが集まってきたのね。 明るい森で巣作りするのかしら。 」
「 そうですね あ 木の実を啄んでいるわ あ・・・? 」
クルルル 〜〜〜〜 バサバサバサ
大きな鷹が 姫の腕に降りてきた。
「 まあ ルイ? 」
「 あらあ 鷹のご友人がいらっしゃるのね 」
「 ええ ええ 仲良しなんです。 ルイ〜〜 来てくれたの? 」
クルル クルル〜〜〜
鷹のルイはフランソワーズに金の髪にアタマを擦りつけると
― つ・・・っと飛び立った。
ク 〜〜〜〜 ルルル ( いつでもお味方します )
彼は空中でゆっくりと何回も大きく円を描いて飛ぶ。
その周囲を 多くの鳥たちが飛び回る。
「 フランソワーズさま。 頼もしいお友達がたくさんいらっしゃるのね 」
「 はい! ああ 皆〜〜 ありがとう〜〜〜 」
フランソワーズは 鳥たちに大きく手を振った。
「 あのね。 これ ・・・ お持ちになって。 」
アルテミス姫は 先ほどの太陽の指輪を差し出した。
「 え でも これは ― 弟君さまからの 」
「 ええ ええ。 ですから 討伐からお戻りになるまで
お貸しいたします 」
「 よろしいのですか? 」
「 はい。 でもね < お貸しする > のですから
必ず! ご無事でお返しに戻っていらっしゃらなければなりませんよ? 」
「 あ ・・・ 」
「 そのことをお約束して これを ― どうぞ 」
シャリン。 フランソワーズの掌に金の鎖ごと指輪が渡された。
「 ・・・ アルテミス様!
はい。 必ず この指輪をお返しに参ります 必ず。 」
「 ふふふ お約束よ? 」
「 はい。」
「 ― ほら ご覧になって。
森の奥に 城が見えてきましたわ 」
「 ! 本当・・・ あれが 魔女タマアラの城・・・? 」
「 捕らわれている方が いらっしゃるのね 」
蘇った森の奥にずっと枯れ枝に隠れていた くすんだ城が目立ち始めた。
・・・ あの城に ・・・
大地の瞳をした青年が
捕らわれているのかしら・・・
トクン。 フランソワーズ姫の心がこそっと揺れた。
Last updated : 10.19.2021.
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*********** 途中ですが
話がどんどん 横に広がってきまして・・ (*_*;
えっと アルテミス姫 は 平ゼロのあの御方のイメージで♪
ジョー君 ・・・ まだ 登場しませんねえ ・・・ (*_*;
原作やらあらゆるシリーズから 名前を拝借しています <m(__)m>