『  願い  ― (2) ―  』

 

 

 

 

 

 

    「  あれは なあに?  ワタシ、 あれがほしいわ !  」

 

                          ―   末の妹は駄々をこねたのよ。

 

 

 

  カタン。   フランソワーズは静かに立ち上がった。

 

「  あ・・・ ! 」

ヘレンが慌ててベッド・サイドから立とうとしたが それを目顔で制した。

「  え ・・・ あの でも ・・・ 」

「 ・・・ しぃ ・・・ 」

口の前に指で×を示してから ベッドを指した。

「 あ ・・・ は はい ・・・ 」

「 ・・・・ 」

フランソワーズは 軽くうなずくと足音を忍ばせてその部屋を出た。

ベッドの中では  ―  ヘレンと同じ顔をした娘が眠っている。

 

  ―  カタ ・・・ 

 

「 あ フラン ! 」

ドアを開けてリビングに戻ってくると ジョーがすぐに振り向いた。

「 だから 〜  ああ マドモアゼル ・・・  」

「 フラン〜〜 あのコ 大丈夫かよ? 」

「 アイヤ〜〜 お疲れサンやったな〜〜 

オトコたちは 今し方までかなり激しく言い合っていたと思われたが 

彼女に対しては一様に < 普通の > 顔を見せた。

「 あのヒト・・・ どうだい。 」

「 ジョー・・・ ええ 大丈夫。 ただ ちょっと疲れている見たいだから・・

 今晩はゆっくり休んでもらうわ。 」

「 そうか ・・・ 看てあげてくれるかい。」

「 勿論よ。 でも ヘレンさんの方がいいと思うわ。  だって ・・・ 」

「 あ ああ そうだね ・・・ 」

ジョーは ドギマギと視線を逸らせた。

 

 

 

 

   <  フランソワーズの独白 >

 

とんでもないことが次々に起こったわ。 この日までに ね。

 

  ― あの夜 

 

ベッドの中には ベッド サイドで看病しているのと  同じ顔  昏昏と眠っているの。

眠っているのは当然で そんなに心配はいらないっていうのは皆わかっていたわ。

勿論 わたし自身が一番よく知っていた・・・

 

  だって わたしが。  わたしが この手で彼女を撃ったのですもの。

 

パラライザ−で  だけど ね。 

同じ顔って ね。 アンドロイドとかサイボーグじゃあないの。

あのヘレンには そっくりな姉妹がいたのよ!

その彼女に向かって わたし。 躊躇うことなくトリガーを引いたわ。

 

 

こうなるまでには そりゃあいろいろ・・ 本当にいろいろなことがあったの。

この国に着いて少しは落ち着いた生活が出来るかな・・・って思ってたけど

とんでもなかったのよ。 ミッションはもう始まっていたってことなんだけど ね。

 

この家に来てから ― そりゃ懐かしい土地だったし、久しぶりの仲間達との生活も

嫌じゃなかったわ。  

 

  でも。  でも ね・・・!

 

ジョーったら ・・・。  いえ あの子の方が追いかけていたのかもしれないわ。

彼は やっぱりジョーは 009 で ミッションを片時も忘れてはいなかった・・・

だけど それでもね。  彼だってあんな可愛いコに慕われて満更じゃあなかったでしょ。

ええ あの子 ― ヘレンは悪いコじゃあないわよ、それはすぐにわかった・・・

率直で素直なコよ、アルベルトは随分疑っていたけど・・・ ちゃんと100%生身の

人間だったわ。  ・・・ わたし、すぐに < 見た > もの。

 

「 フランソワーズさん、お手伝いしますわ。 」

「 あの〜〜 この調味料 どうやって使うのですか? 」

「 あ お買いものですね、 荷物持ちにご一種します! 」

・・・って 明るくてイイコで ・・・大方皆好感を持っていたの。

ヘレンも 誰にたいしても同じ風に気持ちよく接していたっけ・・・

 

  あ  これ ・・・ こういうコ ・・・ こういう態度・・・

  彼の好み なのよねえ ・・・

 

日本語では  え〜と・・・   健気 ( けなげ ) っていうのでしょう?

ジョーってばそういう雰囲気のコにねえ ・・・ 惹かれちゃうの。

イヤな予感はね、もう出会った時からしたのよ。

ええ もうその時から 彼があのコを気に入ってるってすぐにわかっていた。

そりゃ アイシテル とか そういう感情じゃないかもしれないわ。

でもね カワイくて素直なコに慕われて 彼だって男だもの、イヤなわけないでしょ。

≪ 009がヘレンを庇うは同情ダヨ ≫

001がズバっと言ったわ。

 

  ― でも ね。   知ってるでしょ?

 

同情 って すぐに 愛情 になるの。

 

初めは 同情だって次第に愛情に変わったり、なにかのキッカケで くらん、と感じ方が

変化するの。  オンナノコなら皆 本能的に知っているのよ。

オトコのコって その・・・ 単純でしょう?

まあ そこが可愛いってこともあるけど。 鈍感っていうのかしら?

目の前の事象を 全てそのまま信じてしまうのね。

 

ヘレンはごく自然にあの家でのわたし達 サイボーグとの生活に馴染んでいったわ。

キッチンで一緒にゴハンつくったり、近所のショッピング・モールに買い物にいったり

・・・ それは それで楽しかったわ。

ヘレンって 本当にごく普通の可愛い女の子で ・・・ ロンドンに住んでいたっていうから

いろいろ話も合ったし。

メンバーの中ではずっと女の子一人で つまんないな〜って思ってたから

他愛もないおしゃべりをするのは 楽しくないはず、ないでしょ。

 ― でも  でも ね。 ソレとこれとは別よ。  

 

   それで ―  あのことが起こったの。

 

「 月がとっても青いから ちょっとドライブに ・・・ 」  って。

ジョーは照れくさそうに言った ・・・・

 

    な  んですって ・・・??

 

その日、 ジョーは午後から出かけて 夜になっても戻らなかったの。

ずっと心配していたわ。

だって ― つい先日、 彼は大怪我を負っていたから。

ギルモア博士が 眉を顰めるほどの負傷よ、 それも アタマ に。

皆で探っているミッションの関係で 彼は社長の私邸をさぐりに行ったのね。

それで ・・・ メンバー皆が本気になって心配し始めたころ やっと帰ってきたの。

酷い怪我をして ほとんど部屋に倒れ込むようだったわ。

頭部に負傷して 箱根から必死で車を運転してかえってきたんだって。

いくら最強のサイボーグでも アタマは急所。 特に 生身の脳があるだもの。

全員が顔色を変えたわよ。 わたし ・・・ 凍り付いてしまったわ。

 

「 これは ・・・ 酷い。  人工頭蓋骨でなければ 即死だぞ、009。 」

「 ・・・ 博士 ・・・ 」

「 博士!  応急キットをもってきました。 

わたし、 地下の研究室へ飛んでいったわよ。

「 誰かが応急手当してくれたようじゃな。 うむ これで大分出血が止まったのだ。

 どこへ行ってこんなことになったのかね 」

「 ・・・ ヘレン。  君 どうしてあそこにいたんだ? 」

「 は ?? 」

全員が 刺すみたいな視線でヘレンを振り返ったわ。

 

   「  え?? 私  ずっとこのお家にいましたわ 

 

それは本当なの。 この夜はね ず〜〜っと二人で晩御飯を作っていたのよ。

だから わたし、ちゃんとフォローしたわ。

「 ええ 本当よ。 わたし、一緒だったもの。 

「 うそだっ! 」

「 ・・・ え?? 」

「 あ  いや  ごめん ・・・ でも 確かに君とそっくりな女性が ・・・

 ヘレン、君には姉さんとか妹がいるかい?  」

「 いいえ ・・・ わたしは一人娘ですわ。 」

「 そ んなわけは! 」

「 こら ジョー。 じっとしておれ。 いくらお前でもこの怪我では・・・

 しばらく安静にしていなさい。 脳波検査もしたいし な。

 しかし ・・・ この応急手当がなかったら危なかったぞ。 どこかで手当てをして

 もらったのかね?  」

「 は あ ・・・ 」

ジョーは納得なんかしていなかったわ。

「 さあ ジョー 今夜は休みましょう?  ね? 」

わたし 彼を半分かかえるみたいにして ― さすがに重かったけど ― 寝室に

連れていったの。

「 ・・・ ほら これで大丈夫?  あ 枕の位置、換えましょうか? 」

ベッドに彼を寝かせて あれこれ世話をして・・・ うふふ ちょっと楽しかったなあ。

「 いや ・・・ 大丈夫だ、ありがとう、フラン 」

「 なんでも言ってね?  あら。 晩御飯、食べてないでしょう??

 持ってくるわね。 」

「 ああ  いいよ、今晩はもういらない。 

「 でも ・・・・ 」

「 気にしないでくれよ。 本当に大丈夫だから。 

「 そう? あ それじゃね、お茶をもってきておくわ。  ちょっと待ってて・・・ 」

「 お茶よりも ・・・ 」

キッチンにお茶を取りにゆこうとしたわたしを ジョーは呼び止めたの。

「 ? なあに?  あ 毛布をもう一枚、出しておきましょうか? 」

「 いや ・・・ 」

「 ?  」

じっとこちらを見つめているのよ、ジョーったら・・・ もともと口数の多いヒトじゃないけど ・・・ 

気になってベッドサイドに飛んでいったわ。

「 どうしたの?  傷が痛む・・?? 」

「 ・・・ いや・・・ ありがとう フランソワーズ ・・・ 」

「 え ?  いやだわ そんな 」

「 ・・・・ 」

大きな手が こそ・・・っとわたしの手を包んだの。 握るってよりももっとソフトで・・・ 

なんかこう、そう〜〜っと壊れ易いモノをくるむみたいに ね。

「 ・・・ 細いんだね、相変わらず キレイだ・・・ 」

「 え ・・・ そんなことないわ? もうガサガサだし 」

「 いや  この手が・・・ 懐かしいよ 」

「 ジョー ・・・ 」

  す ・・・ 。   え? と思っている間にそのまま引き寄せられて ―

わたし達 ごく自然に ・・・ 唇を重ねたの。 ちゃんと本格的にキスしたわ。

 

    ジョー ・・・ アイシテル ・・・

 

    ・・・ フランソワーズ ・・・

 

「 ・・・ ご ごめん ・・・ 」

「 なぜ? ・・・ お休みなさい ジョ― ・・・ 」

「 ウン  お休み フランソワーズ 」

今度は軽くお休みのキスをして わたし、ベッド・サイドから立ち上がった。

 

「 あ ・・・ フラン? 」

「 ・・・ なあに。 」

一瞬ね ―  誘ってきたのかな って思ってしまったわ。

 

「 ― 本当に ヘレンはきみと一緒にいたんだね? 」

「 ちゃんと一緒にいました。 お休みなさい。 」

わたし ・・・ ひどく素っ気なく答えて きっちり寝室のドアを閉めたわよ。

 

   ―  もう〜〜〜 !!!!  なんでこんな時にあのコのこと、言うの!!

 

いいムードだったのに〜〜〜  ・・・ ええ あのコが悪いんじゃないけど ね。

ふん。  もう本当に今回のミッションは !

 

    やっぱり 来なければよかった ・・・ かも。

 

わたし 大きくため息をつくしかなかったわ。   

 

そうそう・・・ピュンマはね、身体は回復したけど、心の方はかえってズタボロみたいだった・・・

皆 できるだけさりげなく彼に接していたし、アルベルトとかはずばっと

核心を突くようなこと、言ってたみたいだけど。 彼の本当の気持ちは誰にもわからないわよ。

 ― 結局は博士には 笑顔を向けていたけど ・・・ そうそう簡単に割り切れる問題じゃないと思うわ。  

つまり 008 は心理的に大いにマイナスだったのよ。

005が言ったけど、今回は本当に皆 なにか負の部分を抱えていたってわけ。

ええ 勿論わたし自身も ね。

 

 

 

 

009が負傷して戻って以来、家の中の雰囲気はまた微妙なものになっていた。

「 買い出しに行ってきます。  なにかリクエスト ある? 」

フランソワーズが リビングに顔をだして皆に聞いた。

「 あ それじゃクルマ だすよ〜  国道の方のショッピング・モールに行こうよ。 」

「 ありがとう ジョー。 嬉しいわ  」

ジョーは気軽に応じ 広げていた雑誌を閉じた。

「 あ ・・・ でも大丈夫? 

彼女はにっこり笑顔を見せてから ア・・っという顔をした。

「 傷 ・・・ 平気? 」

「 え? ああ もう大丈夫さ。 博士がね〜 もう少しって・・・ これ、外して

 くれないんだ〜〜 」

ジョーは少し照れくさそうに笑って アタマの包帯をつんつん突いた。

「 あの 無理しないで ・・・ 」

「 だ〜〜いじょうぶだって。  あ それじゃあね、リハビリだと思ってくれよ。 」

「 まあ ・・・ それなら いいけど・・・ 」

「 ホッホ〜〜〜 ワテも行こか〜〜 」

「 おい ジャマするなよ〜〜 」

グレートが眼鏡をずらして ちらっと相方をにらんだ。

「 あら そんなことないわ、グレート。 大人〜〜 お願いします〜

 食材選びはやっぱり専門家に任せま〜す  ねえ ジョー? 」

「 ウン、 大人〜 ヨロシク〜〜  ぼく 用意してくるね〜 」

ジョーは賑やかなことが好きなので ご機嫌でガレージに降りていった。

「 ・・・ あ あの ・・・ 私もご一緒します、 荷物持ちできますから。 」

キッチンの隅から ヘレンがこそっと声をかけてきた。

「 あら ― 

「 ええで〜〜 ほな 皆で行こな〜〜  ほな ほな〜〜 行くで〜〜 」

大人が即座に応えて 外出組を率いて出ていった。

「 ・・・ ふ〜〜ん ・・・ まあ ・・・ 仲良きことは美しき哉 か 」

グレートはメガネを直しつつ つぶやいていた。

「 なんだよ〜〜〜 ? 」

「 いや なに。 独り言さ。 」

赤毛のアメリカンが口を挟んだが 英国紳士は取り合わない。

「 ちぇ〜〜 なんで〜〜 」

「 お前さんには理解不能ってことだ。 」

「 なんだとぉ〜〜 」

ちょいと絡んでみたけれど 銀髪独逸人は肩を竦めただけで出て行った。

「 ちょいと見回りしてくるぞ。 」

「 頼む。 海岸の方は005が行ってくれた。 どれ 001のミルクの用意をするか 」

「 !  んだよ〜〜〜 オレは 〜〜〜  ちぇ〜〜〜 」

がらん としたリビングで赤毛ののっぽはどさっとソファにひっくりかえった。

 

 ―  ごく当たり前に時が過ぎた。 

 

夕方より前に買い出し部隊は帰宅して キッチンで賑わい、テイー・タイムには

久々、全員が平穏な顔を揃えた。   が。

 

とっぷりと暮れた頃 ・・・

「 博士? よろしいですか? 」

「 うん ・・・・?  ああ かまわんよ〜〜 」

博士の私室へ遠慮がちなノックと共に フランソワーズが顔を覗かせた。

「 あの・・・ ジョー、知りません? 」

「 お? いやあ ・・・?  さっきお茶の席にはおったなあ 」

「 ええ ・・・ でも居ないんです。 もうじき晩御飯なのに ・・・ 」

「 ふん? ちょいと気晴らしにでも出たのじゃないかね? 散歩とか 」

「 ・・・ 車、ないんですの。 それに ヘレンもいないし ・・・ 」

「 さ さあ 〜〜  ワシは気がつかんかったのう 」

「 そうですか ・・・ 怪我してるのに・・・ 」

「 ああ アイツの怪我はもう大丈夫じゃよ。  明日にでも最終検診するがなあ 」

「 ・・・ そう ですか  失礼しました 」

フランソワーズは静かにドアを閉めていった。

「 ・・・ ? 

博士は ちょっと首をひねったがそのまままたモニター画面に視線を戻した。

結局 009もヘレンも夕食の時間には戻らなかった。

誰も 何も言わず、ますます微妙〜〜な空気が漂い始め ・・・ TVだけが大きな音を

立てていた。

 

 そして。 月が中天にのぼる頃。 彼は戻ってきた ―  ヘレンと一緒に。

 

「 え あ〜〜〜 ちょいとドライブに ・・・ 月があんまり青いから 」

「 ・・・ え ・・・ええ 」

とって付けたみたいなジョーの言い訳とヘレンの沈んだ顔色に 誰もが気が付いた。

誰もが 彼の言葉を信じなかった。

フランソワーズだけが ドアを閉めて出ていってしまった。

 

  家の中の空気は ますます微妙・・・ いや 重苦しいものになっていった。

メンバー達は そんな空気を破るがごとくそれぞれに行動を起こし始めた。

 

 

 

   <  フランソワーズの独白 >

 

 

「 待って。 わたしも行くわ! 」

ジョーが車を出す寸前に、わたし駆け寄ったわ。

だって ・・・ なんとかしなくちゃ!って、わたし、居てもたってもいられなかったのよ。

 

その前日、 ジョーは黙ってでかけて夜遅く戻ってきた。

仲間たちが本気で心配しだすころに やっと よ。

それまでに連絡もしないで ・・・ しかも あのコ、ヘレンと一緒。

「 どこに行ってたんだ? 」

アルベルトの問いに 彼は  ―  

 

 わたし、聞きたくなかったわ  ジョーの下手ないいわけ なんて。 

009がこんな時に 女の子とほいほいドライブに行くようなヒトじゃ ないって皆知ってるわ、

勿論 わたしもね。

なにか明確な目的があって あのコを連れ出したんでしょ。

だけどなんだってあんな誤魔化し方 するわけ? 

 

  ― わたしは それに腹を立てたのよ。

 

皆はわたしが嫉妬した と思ったようだけどね。

まあね そりゃあ・・・ ジェラシー 0%とは言わないけど。

そんな些細なことで 全体の士気を低下させるような態度はとらないわよ。

それにね、わたし、皆よりもず〜〜〜っとずっと深く 島村ジョーっていう男性を知っているのよ?

ジョーもね わたしが機嫌を悪くした本当の理由はわかったみたい。

まあ あの場ではああいう風にしておいた方がいいでしょ。  ヘレンに対しても ね。

 そう ・・・ ジョーもわたしも 100%彼女を信じていたわけじゃあないのよ。

ええ 勿論、彼女自身に悪気があるとかスパイ行為をしているとか疑ってはいないわ。

でも でもね。 わたし達・・・ BGと戦ってきてヤツらのやり方はよ〜〜くわかっていた。 

だから どんな時だって100%信頼できるのは仲間たちだけ、なの。

 

ヘレン自身はわたし達に心を寄せていても ・・・ 裏では誰かが糸を引いてるってこともあるでしょ。 

― これは現実になってしまったんだけど・・・

まあ あの当時は全てを彼女にはさらけ出さないっていうことだったのよ。

 皆もね、 わかっているの。  わたし達には見えない絆がしっかりあるの。

 

それでね、 家の雰囲気は表面上、どんとん ぎくしゃくしてきて ―  ばらばらに動き始めて 

 わたし、もうたまらなくてジョーとジェロニモの組に割り込んだの。

それで ・・・ あのビルの前で    あのコ    ヘレンと同じ顔 現れたのよ。   

話の途中で いきなり彼女を  撃ったわ。

 

 「 な! なにをするんだ 003?? 」

 

さすがにジョーは驚いたけど、すぐにわたしの真意を理解してくれた。

それしか方法がなかったのよ、彼女がわたし達と会っているのは  敵にバレバレだったから

 ― まさか標的になるわけには行かないでしょう?

 

「 ふう ・・・ しかし手荒なことを・・  

いつでもオンナのコに優しい・ジョーは ぶつぶつ言ってた。

  

   わたしだって! オンナノコ なんですけどね???

 

 

怪我をしていた張大人とグレートを救出し < 戦利品 > も持って帰ってきたの。

ちょっと派手に動きすぎたな って思ったけど ・・・

ジョーも皆も勿論 覚悟してた。   近々 ヤツらが攻めてくるって ね。

とりあえず、眠っている女の子を客用寝室に寝かせたわ。

彼女はじきに意識を回復したの。

 

「 ・・・ ビーナ といいます。 私はヘレンの妹です。 」

 

ベッドの中でベッド・サイドにいる < 姉 > をみながら 彼女は言ったわ。

「 え??  だってヘレンは一人娘だって ・・・ 」

「 そうですわ! 私はウィッシュボーン家の一人娘です。

 この方 ・・・ 私にそっくりですけど ・・・ 私には妹なんて 」

「 あの ごめんなさい、ちょっと黙っていてくださる?

 私が説明するまで。 」

興奮しているヘレンに ビーナと名乗った娘はぴしっと言ったのよ。

「 まあ!  あなた、他人になにを 」

「 ヘレンお姉さん。 この方に急いで説明しないと ・・・ ヤツらが来る前に 

「 な なんですって?? 」

「 ごめんなさい、ヘレン。 本当にちょっと待ってくれる? 」

ますますいきり立つヘレンを わたし、そっと制した。

「 フ フランソワーズさん ?? 」

「 本当に急いでいるの。 今夜にもヤツらが来るわ。 

 あなた ・・・ 話してくださる? 」

「 はい ― 」

 

   その時のこと ― 今でも忘れられない。

 

< 妹 > の話を聞いて動転し、おろおろしているヘレンを置いて わたし、部屋を出たわ。

ビーナは話終わると 疲労困憊したらしく、また眠りに落ちたわ。

「 ・・・ フランソワーズさん ・・・ 」

ヘレンが 心配と不安でいっぱいで涙ぐんでいたの。

「 大丈夫よ。 ゆっくり・・・ 眠らせてあげて 」

「 ・・・ は はい ・・・ 

「 側にいてあげて   ね ? 」

「 ・・・ はい ・・・ 」

そっと目礼してくれたヘレン ― やっぱりイイコなのよね。

 

   皆に ・・・ なんて言えばいいの?

 

わたし、そうっとため息を吐いた。

勿論 全部率直に報告するけれど ― ジョーの気持ちを考えるとやはり気は重かったわ。

 

   でも ね。 そんなこと、本当に小さなことだった ・・・

   待ち受けていた運命は ― 過酷なんてもんじゃなかったわ

 

 

 

 

「 よし。  出発だ。 」

ジョーは 淡々と宣言し、レバーを引いた。

 

   ドドドド  −−−−−  !!!

 

ドルフィン号は ぽっかり空いた噴火口の中へ突入して行った。

 

 

Last updated : 09,01,2015.               back    /    index   /   next

 

 

 

**********   途中ですが

短くてすみません〜〜〜〜〜 (:_;)

寝落ち の日々で あんまり書けませんでした・・・

で もって続きます〜〜〜  <m(__)m>